2007年7月25日水曜日

―Sky―【SITS.Story.】 第睦話 ~人形~

この物語は全てフィクションです。(念のため)

Skyの世界のパラレルワールドであるもう一つの世界でのお話・・・。

―Sky―【SITS.Story.】 第睦話~人形~

翌日
「・・・ん?」
名美を起こさないように起きてきてふらふらしていると背後に気配を感じ振り返る。
「私の貴輝が帰ってきたー!」
「ただいま、あとおはよう母上。」
唐突に飛びついてきた母親を回避しつつ挨拶を返す。
「何で避けるの!?私の・・・私の貴輝が・・・!!反抗するなんてー!!!」
「はいはい。阿呆なことはいいから。」
昔からこうやって暴走する癖がある母親なのでてきとーにあしらっておくのが良いと学習済み。
「何か冷めてるわね・・・。」
冷ややかな(?)視線を送ってくる母。
「ま、いいわ。それよりこんなところで何やってるの?というか、昨日はよくもやってくれたわね!」
「いや、自業自得だろ。その短気なところ直せよ母上。でないといつか痛い目見るぞ?」
昔から言ってることなのだがちっとも直らない。
「だってだってー。亜魏斗(あぎと)があんまりにもむかっ腹が立つことするからさぁ。」
「昔っからだろ。もう諦めたら?」
昔からあの変態は『あぁ』なので拙者はとっくに諦めているが母上はいまだに諦めていないらしい。
「というか母上も変わらないなぁ・・・。外見も中身も。」
「どういう意味かな?」
とにっこり笑顔で聞いてくる母。
「まぁ、いいけど。さすがに神祖の吸血鬼だね。回復早いなぁ~。」
「そういえば、あなたはまだ『覚醒』してないみたいね。いい加減覚醒してもいいのになぁ・・・。」
吸血鬼も『覚醒』するらしい。
覚醒したらどうなるかは教えてくれないが・・・。
「覚醒の条件って人それぞれなんでしょ?拙者の場合は何なんだろうねぇ・・・。」
と一応興味もあるので聞いてみる。
「知らないわよ。私の場合は運命の人との遭遇だったけど。」
「運命の人って・・・亜魏斗でしょ?やな運命の人だなぁ・・・。」
母上は亜魏斗との出会いが覚醒の条件だったらしい。
出会ってから少しして覚醒したらしい。
「でも、覚醒の条件ってだいたい親と子と大差ないはずなんだけどなぁ・・・。・・・あ!もしかしてまだ運命の人と出会ってないとか!?駄目よ~出会いは積極的に求めていかないと。」
「そんなことやってる暇ないよ。母上が暴走してるって聞いて帰ってきたんだし。ってか、運命の人ってそんなさくっと分かるもんなの?」
「出会った瞬間にこう『どっかーん』って感じになるのよ。私の場合は一回爆発したわね。」
どっかーんって・・・どんな表現だよ。
「ってか、爆発した!?何が起こったのさそれ!?」
とあまりにも普通に言われたせいで一瞬遅れてつっこむ。
「であったのが戦場だし?ちょうど地雷踏んだかミサイル食らったか何かしたみたいなのよ。」
「ぇ・・・。それって運命の出会いとかカンケイナクナイデスカー?」
それでも運命の出会いだと言い張るのがこの親である。
「だってだって、いまは『らぶらぶ』なんだもん!」
「はいはい。」
この親はいつもこういっていちゃつく姿を見せたがるのが厄介だ。
まぁ、仲良きは美しきかなってことで納得しているのはいるんだが・・・。
「むぅ~・・・。反応が冷たいわねぇ・・・。」
「何時間もガテに揺られてた後に昨日のあの戦闘だろ?疲れてるのよ。拙者は。」
と、これは正直なところ。
実はガテで少し酔って(結構揺れる)その直後の戦闘だった。
まぁ、だからとっとと終わらしたかったし、あんな秘奥技術なんかさっさとぶっ放したわけだが・・・。
「もう!もっと体力つけないといけないよ!?私は体力全開だからね!?」
「朝っぱらからうるさいなぁー。低血圧なんで黙っててください。」
「うわーん。息子がいじめるー。」
と、すごい棒読みでどこかへと走り去る母親。
端から見るとすごく変だ。
ぐ~・・・。
「・・・飯にするか。」
と腹の虫も鳴いたので食堂へ向かう。

―銀狼の里 王宮 廊下―
食堂ってどこら辺だったかなぁ・・・とふらふら歩いていると、
「あら?貴輝様ですか?」
と自室の方角から声をかけられる。
「ん?お、コボルさん!久しぶり~。」
「お久しぶりです。いつお帰りに?」
「昨晩ね。そういえばコボルさんは昨晩何処にいたの?」
と、他愛も無い話をしているのは元拙者の養育係のコボル・タミンさん。
一応男性らしいが小柄で目もくりっと大きく・・・ようは女性のような見た目をしている。
そのせいで女性からは絶大な人気。
そして、我が糞親父になぜか女性と同じ扱いを受けていると言う絶妙になんとも哀れなお方。
もう諦観しているらしく今日も『女性者のメイド服』に身を包みいそいそと働いている。
「昨日は血姫様が破壊なされた塀と王宮の修復で北のほうの一角におりました。」
しかも、そんななりしてこの方はものすごい力持ちで、多分この里の中でも片手の指に入るだろう。
一番は一応あれ(親父)で、二番目が拙者か母上。まぁ、三番目もどっちかで、四番目か五番目あたりがこのコボルさんだ。
「はぁ・・・。まぁ、毎度毎度うちの母親がお世話になってるみたいで。」
「いえ、血姫さまはそうないのですが・・・。亜魏斗様には困らされています。」
と、疲れた顔でいう。
「あの馬鹿は何かやったらぶん殴っていいよ。ってか、ぶん殴ってやって。是非、全力で。」
「そんなことはできません。」
と、真面目な彼はこういうが別に本当に良いと心から納得できれば殴り飛ばしているだろう。
「どのみち私がやらなくても血姫様がなさっているので。私がやるまでも無いでしょう。」
とは本人の談。
昔からずっと言ってるが断固としてそういうことはやらない。それが彼という男である。
「そうか・・・。実に残念だ。・・・あ、そういえばさ、食堂って何処だっけ?」
「・・・お忘れになったんですか?もう少しいったところにある両開きの扉が食堂ですが。厨房は食堂の奥に見えます。廊下から入るなら食堂の扉は二つあるのでそのもう一つ奥の扉からお入りください。」
と少し呆れ気味に言ってくる。
彼はとにかく『頼まれたこと以上のことを』が信条らしく、こうして色々と聞いたこと以上のことを教えてくれたりやってくれたりする。
まぁ、それでちょっと問題になったこともあるにはあるが・・・。
「ん。ありがとう。それじゃ、お仕事がんばってね。」
と笑顔で送り出す。
「はい。それでは、失礼します。」
と、向こうは向こうでしっかりと頭をたれてお辞儀する。
なんか昔以上に堅物になってるなぁ・・・。
などと考えつつ食堂・・・もとい、厨房に向かう。

―銀狼の里 王宮 厨房―
厨房に入るとまず来るのが侮蔑の視線。
もう、これには慣れてしまっているので・・・といっても、昔に比べると大分意識してしまうが、まぁ、大丈夫だ。
「何の用でしょう?」
と、声に嫌悪の色が色濃く出ている問いかけを投げかけられる。
「いや、ちょっとのぞいてみたくてね。久しぶりだし。昔以上に油でこぺこぺしてるなぁ・・・。ちゃんと掃除してるの?」
と、普通に明るく返す。
ここにいるものたちは先ほどのコボルさんとは違った意味での堅物が多いので、適当にあしらっておくのが一番なのだ。
「いま、少し大変なので何処かに行っててくれませんかねぇ?私たちが仕事終わった後なら別に使ってくれても構いませんよ?」
と柄悪く言ってくる。
まぁ、これもいつもどおり。
ここは変わらないなぁ・・・。と思いながら
「いや、別にいまのところ使う用事無いからいいよ。ごめんね、邪魔して。」
と返答する。
そのまま一旦廊下に出る。

―銀狼の里 王宮 廊下―
「ふぅ・・・。あの調子じゃ拙者の分は作ってくれそうに無いな。居るの知らなかったとか言いやがるだろう。集落に出て食うかな。」
「あ~!いたー!」
と、最後まで言い切る前にすぐ近くで叫び声が。
「・・・名美か。耳元で叫ぶな、五月蝿い。」
「む!そういうのはどうかな?と思うんだけど!?」
朝っぱらから叫びまくるなと言っているのだが・・・。
言っても始まらないので何も言わない。
「何か用?」
「態度冷たいー。一緒にご飯食べようと思ったのにぃ。もう食べちゃったの?」
「いや、まだだよ。いまから集落に出て食べようかなって思ってる。といっても、拙者が居ると食べれる場所って限られて来るんだが・・・。」
?と首をかしげている。
むしろ逆だろうとでも言いたげだがこればっかりはしょうがない。
何しろ拙者はこの里にとって『汚物』であり『最大の汚点』なのだ。
皆から忌み嫌われるのは詮方ないことなのだ。
それを名美に言ったところで分からないだろうからそこは伏せておく。
「一緒に食べるのならついてきな。昔の友人がやってる店がつぶれてなければあるから、そこで食べる。」
「ご飯用意されるんじゃないの?」
「そんなことしてくれるような人たちじゃないよ。さ、行こう。」
といってさっさと歩いていく。
途中母上に外で食べてくる旨を伝えて王宮らしくない王宮を出た。

―銀狼の里 商店通り―
ここは王宮から銀狼の里の門までまっすぐに伸びた商店通り。
イメージとしては江戸とかの商店とか飲食店とか色々ある通りと似ている。
今で言うところの商店街だ。少し違うが・・・。
「さて、奴の店は・・・っと。確かあれだったよなぁ・・・。」
と、もやがかかった記憶を懸命に使って何とか知人の店へ。
「おじゃましまーす。」
と客なのにわざわざ挨拶をする。
「いらっしゃ・・・ん?貴輝?お前貴輝か?」
とすぐに分かってくれる。
「久しぶりー。元気だった?ってか、ご飯食べさせてもらえる?」
「いやー、久しぶりだなぁ。お前こそ元気だったか?俺はもう、ばりばり元気にやってるぞ!飯食うならテキトーに座って待っててくれ。注文取りに行くから。」
と、笑顔で言ってくれるのは従兄弟でもあり、我が友人でもある『伍火 鉄也(いつび てつや)』である。
奇妙な苗字だがこれは我が六星家(勘当されたからいまは六方と名乗っている)の親類が全て苗字に数字が入っている。というなんとも奇妙なしきたり・・・みたいなものがあるからだ。
事実『伍』火だし。六星家に近い親類ほど数字が大きい。
ちなみに七からさきは無い。
六までの六つの家だけだ。
なので、伍火家はかなり近しい家柄だ。
といっても、六星家もそんなにでかいわけではないので(王宮が言うほど大きくないし)、当然のように伍火家も小さい。
いや、小さいわけではないが、こうして飲食店を経営しているほどである。
むしろ財力だけで言ったら末端の一の家『一之瀬(いちのせ)家』のほうがよっぽどある。
お世辞も冗談も抜きで六星家以上に財力がある。
なのに六星家がこの里を治めているのには理由があるが・・・。
それはまぁ、面倒なのでいまは話さないで置こう。
「どれにするー?ていうか何がお勧め?」
と名美がお品書きを読みながら聞いてくる。
拙者は頼むものは決まっているのでお品書きさえ読んでいない。
「拙者は『いつものやつ』を頼む。お品書き読んでどんなものか分からなければあいつに聞くといい。」
「『いつものやつ』?何頼むのー?」
とお品書きから顔を上げて聞いてくる。
「秘密ー。ってか、多分お前食べれないぞあれ。」
「ぇ。何食べるの?私が食べれないもの?なんだろう・・・。」
と考え始める。
「早くせい。」
「や、お待たせ。注文はあれだろ?」
とお茶を飲んでいると鉄也が注文をとりに来る。
「おう。」
「で、こっちの彼女さんは?」
「ぶっ!?」
と飲んでいたお茶を吹く。
「うわ!汚いなぁ!」
と怒るのは一番被害を受けた名美。
「誰が誰の彼女だと!?」
名美を無視して叫ぶ。
店の中なので当然ボリュームは抑えてある。
「・・・違ったのか?いや、てっきり彼女だと思っててな。随分と仲よさそうだったし。・・・本当に違うのか?」
「ち!が!う!」
全力で否定する。
「彼女と間違えられちゃったー。」
と名美はくねくねしている。
「だまれ!?」
「うふふ。あ、私この『今日の朝ごはん』ってやつでー。」
「はい。かしこまりましたっと。それじゃ、少し待っててくれ。」
と行ってしまう。
「まったく!なんで、そんな風に間違えられるのかねぇ。」
「私に聞かないでよ。」
それもそうか、と呟いて料理が来るまで他愛も無い話に花を咲かしたりした。

―数分後―
「はい、おまたせー。『700gステーキ』でーす。外は少し焼けすぎてるけど別にいいだろ?」
「きたきた。大丈夫だ。その程度なら。」
と、『いつものやつ』がくる。
ここに来るとだいたいいつもこれを食べる。
なので今では『いつものやつ』で通じてしまう。
これも一応お品書きにあるが懸賞金付きの遊び半分のもののようなものだ。
ま、制限時間内に食えてしまうので勝負にならず、いまでは材料費とかだけ払うようにしている。最初は無料+少しの懸賞金だったが。
「いちおう時間計るぞ。お前のことだから大丈夫だと思うが。」
「いや、朝だし、久しぶりだから意外と無理かもよ?」
といいつつもうヤル気満々だったりする。
「はいはい。それじゃ、スタート!」
その合図と同時に肉を消費し始める。

―20分後―
「ふぅ。さすがに苦しかったか・・・。」
「はぁ、やっぱり食いきるか。お前、早すぎ。」
と愚痴を言いつつ鉄板を下げる。
「・・・。」
ぽかんと口を開けて見ているのは名美さん。
「・・・。おーい。帰っておいでー。」
「よく食べるねぇ。」
とさりげなくこちらの言うことを無視して言う。
「さすがにちょっと苦しいけどね。久しぶりだったし。」
「しかしお前も体に悪そうな食い方するよなぁ。」
といつのまにか戻ってきた鉄也が言う。
「胃薬くれ。」
「はいはい。言うと思って持ってきてるよ。」
と胃薬をくれる。
「ありがとー。」
それを五粒、水と一緒に飲み込む。
「早く食べろよー。といってもこの後どうしようか・・・。集落を見てまわるか。」
「久しぶりだからなぁ。本当に。お前居なくなって何年だ?ってか、お前かわらねぇなぁ。」
という鉄也はけっこう老けてきている。
「お前はなんかおじさんって感じになったな。老化始まったか?」
「みたいだわ。もうそろそろ終わりかぁ。」
獣人はたいていどこかで老化が一回止まってしばらくしてからまた始まって老衰死する。
拙者や華月は幻想の化け物の血が流れているから不老の体だが、普通はちゃんと老いて、死ぬ。
一般にはだいたい五千万年で死ぬが、この集落と隣の黒梟の里は少し別で、何か一億年から長い奴だと数億年生きる。
「もう、子供も居るんだぞ?」
「へぇ~。知らなかったな。何歳のガキだ?」
「もうすぐ1058だ。おーい、佐井華(さいか)ー。」
と己の子供の名前を呼ぶ。
「1058・・・数えてるのか。親ばかだなぁ・・・。」
「うるせい。おーい?」
「1058か・・・。まだまだがきだなぁ。」
と、感想言いつつ子供の登場を待つ。
「そんなに叫ばなくても聞こえてるよ!何?何か用?」
といって出てきたのは見た目二十歳前後の女性。
「・・・名前だけで男だと思った。」
「なんでだよ。『佐井華』だぞ。さ・い・か。」
「・・・誰?」
警戒されてる。
と思うがそれはまぁ、若いうちは仕方ないか。とも思う。
でも、もう1058だろ?でも、この集落から出ないとそうなるか。
などといろいろ考えていたら勝手に紹介されていたらしい。
「ふーん。ようは『変人』ってことね。」
「・・・ちょっと待て!どういう説明をした!?」
「いや、たまに話す古い友人だって言っただけだが?」
とにやにや笑いながら言う。
信じられん!
「本当か?」
「いや、嘘だ。実際は局所的にお前のことを説明した。」
「局所的に・・・。」
変なところばかり話したな。と思うが別にどうせ間違ってないので良いかとてきとーに区切る。
「こんにちは、一応こいつの友人の六方貴輝です。以後お見知りおきを。」
とか、少し丁寧に挨拶をする。
「ちなみにコッチは今居候している麗空名美さん。少し変わった女性デス。」
「お?俺はてっきりお前のこれかと・・・。」
といって小指を立てる。
「ぶ!?さっきも違うって言っただろ!?」
「一緒に飯食いに来てるしなぁ。仲もよさそうだし。それに何か雰囲気と言うか・・・なぁ?」
と、己の愛娘に振る伍火鉄也さん。
「知らなーい。そんなことよりもお父さん仕事してよ!あまりお客さん来る時間帯じゃないからってサボらないで!」
「娘に説教されてたら世話無いな。それじゃな。」
と微妙に落ち込み気味で仕事へ戻っていく。
「それにしても、どうしてああも間違えるのやら・・・。そんなにそういう風に見えるのかねぇ?」
と独りでぶつぶつと言って名美が食べ終わるのを待つ。
「あ、そんなことよりさ、この後どうするの?街を回るとかさっきは言ってたけど・・・。」
「んー・・・それなんだよねぇ。」
「何か見てすがすがしい気分になるものってないの?」
すがすがしいって・・・。
と思いつつ思考。
この村にそんな気のきいたものはなかったような・・・。
・・・あ。
「一箇所あるかもしれない。といっても、個人差があるだろうし、あまりお勧めはできない。拙者は好きなんだけどねぇ。」
「え?本当!?そこつれてってよ!」
と妙に嬉しそうな名美を引き連れて店を出る。
何故か鉄也が行ってらっしゃいなどとほざいていたが無視した。

―里はずれ 秘密の訓練所―

あぁ、ここも久しぶりだなぁ。
そんな感慨に耽りつつ到着した場所は森の中にある開けた広場のような場所。
そんなに広くは無い。ほぼ円形で半径は・・・10mってところか。・・・まぁ元々そこまで友人の居る方ではなかったのでこれくらいで事足りていた。
ただ、広くないと感じる原因の一つに色々と物が置いてあるのもあるだろう。
「ぉー。何か綺麗な場所だねぇ。まぁ、すがすがしいってのとはちょっと違うような気もするけどー。」
と微妙に文句を言いつつきょろきょろしている名美。
「何か色々と置いてあるものは何?変な人形みたいなのもあるんだけど・・・。」
「拙者の元・訓練相手だ。気術の練習がてらあいつを動かして訓練相手になってもらってた。今動くかどうかは分からんが・・・。一応あの糞親父に初めて貰ったものだ。一定量気力を注げばあとは勝手に自立行動するっていう代物なんだが・・・たまに暴走するんだよね。」
と昔色々とあったことを思い出しつつ解説する。
「ふーん・・・。面白そうー!動かしてみてー!」
と楽しげに言う名美。
「む・・・あんま安全な奴じゃないぞ?」
といいつつ実は自分自身久しぶりに動かしてみたいと思っている。
その木人形・・・名前は、確かバッサだったな。
製作者であり名付け親である親父曰く
『木を伐採して作ったからバッサだっ!』
などとほざいていた記憶がある。
まぁ、本人(?)が別に気にしていないようなのでいいんだが。
そんなことを考えつつてきとーに気力を注いでみる。
「あんまり注ぎすぎると暴走するんだよねぇ・・・。」
といいつつどの程度でいいのかうろ覚えなので少し危うい。
「こんなもんでどうだ?」
とテキトーなところで止めて様子を見る。
・・・・・・・・。
無反応。
「む、まだ駄目か。んじゃもう少し・・・。」
とその後結構な量を注いでみたが駄目だった。
「ぁー駄目になっちゃたんかなぁー・・・。残念。」
「むぅ。動いてるところ見てみたかったのにー。」
と名美も隣でむくれている。
「まぁ、しゃぁないって。帰ろうか。」
と、立ち去ろうとした時。
ギ・・・ギギギギ・・・・・。
「ん?」
振り返ると立ち上がろうとするバッサの姿が!
「お。動いたぞ。動きがぎこちないけど・・・。」
ギギギギギギギギ・・・。
と微妙に不吉な音を立てて立ち上がるバッサ。
そして嫌な予感。
「ぁー。もしかして、暴走気味?」
「シン、侵入、侵入者。ハハハハ、ハッケ、発見。」
などとほざきだした。
「あれぇ?こいつ喋らなかったはずだぞ?なんで喋ってん?」
とこちらも少し混乱。
そう、自立行動するとは言ったが、喋ることはできなかったのだ。
まず口が無い。声帯も・・・まぁスピーカーなどの物も搭載されていない。何よりも物を考えるためのいわゆる人工知能に会話という行為の情報が入っていない。
つまり戦闘を指導・指南するためだけのものだったのだ。
それが何故かこうして喋っている。
「シシシッシ侵入者は、た、直ちにここここから立ち去りなさ、なさい。」
「・・・どういう状況か説明を求める。」
と説明を求めてみた。
が、
「ふざ、ふざけんな。」
と人形の癖になにやら憎たらしいことをほざきだした。
「お前こそふざけんなぁ。・・・そうだ、お前、名前は?型番みたいなのでも構わん。」
「おま、お前に教えて、えてやる義理は、な、ない。」
聞けば腹立たしい言い方での拒否。
「・・・ぶった斬るぞ。貴様。」
「やれ、やれるものならあああああ」
やってみろ。と言わさないようにとりあえず殴ってみた。
ガスっ!
「痛ぇ!そうだ、あいつ木でできてるんだった・・・。」
バッサらしき奴はというと
「痛ぇ。いて、い、痛ぇ。」
と痛ぇを繰り返しながら地面をのた打ち回っている。
・・・なんというか、妙に動きとかが人間くさい。
「いや、お前人形だから痛いとか感じないだろ。」
「痛みはいつしか快感に。」
とバッサらしきやつは変態発言をし始めた。
しかもなんでそんな台詞だけ流暢なんだ・・・。
「侵入者にもその快感を教えてしんぜよおおおお!!!!」
とかほざき始めたのでそこら辺に落ちていた石ころを全力投球!
ボコっ!
と音を立てて頭がへこんだ・・・いや、割れた。
「うーわー。頭割れちゃったぁ。どーせいっちゅーねん。」
とこちらが困惑してると
「もっと!もっとブッテ!」
と相変わらず変態発言している木人形。
もうあれがバッサだ何て認めない。
「・・・死にさらせ!この変態があぁぁぁぁあ!」
といって落ちていた・・・もとい置いてある木刀を手に殴りかかった。

―10分後―

頭部の原型が留められないほど木刀で滅多打ちにされた人形はいまだにカクカクと動いていた。
「・・・バッサは一本取ると行動停止したのに。何なんだこれは。」
「私に聞かないでよー。」
と途中から参加していた名美が答える。
ばったんばったん!
と暴れまわる、いや、のた打ち回っている変態人形は頭部を完全破壊されたからか喋らなくなっていた。

「ぁああああ!俺のバッサ5号がっ!」

といいつつ、マントを翻しつつ現れたのはザ・変態マント!
ようはうちの親父だったりする。
「また貴様かぁあああああああああ!!!!!!」
とりあえず木刀で殴りかかる。
「貴輝!お前もとうとうそんな破壊衝動に目覚めてしまったのか!?」
と、当然のようにこちらの攻撃をひょいとかわしてそんなことを言ってくる。
「んなもんに目覚めてしまうよう仕向けてきたのはそこの変態人形だ!」
「ん?こいつ動いたの?まじで?」
とまるでコイツウゴキマセンヨーみたいなのりで返答する。
「あぁ、気力注ぎまくってたら動き始めたぞ。ってか、なんなんだこのバッサに似た変態人形!」
避けられたこともさることながら、この人形がバッサに似ていることに憤りを感じる拙者こと六方貴輝。
「さっき『バッサ5号』って言っただろう?ちなみに初代バッサはあっちに。」
といって指差したほうをみると何かコケとかにまみれた上に少し腐敗・・・もとい土に還りつつあるバッサらしき木人形の姿が。
「・・・土に還ってるー。まぁ、そりゃそうか。大分時間たってるもんなぁ。むしろ原型を留めているだけまだましなのか。」
「・・・どれ?あのコケまみれのやつ?」
といって微妙に警戒している。仕方が無いか。
「で、親父殿はなんでまたこんな変態人形を作ったのかじっくりとっくり聞かしてもらおうかな!?」
と問い詰めれば
「えー、だるいしー。」
などとほざきだす始末。もう、本当に回避されないならぼこぼこにしてやりたいね。
「まぁ、息子がそんなに父と語り合いたいというなら、お父さん語っちゃうよー!」
なんのかんのいいつつ話したいようだ。

―20分後―

「で、結局どういうことなんだと先ほどから聞いているのだが?」
この二十分間この糞野郎は延々と関係ない話ばかりし続けていた。
「まぁ、ただ単に興が乗ったから作ってみたんだよね。で、作ったはいいけど動かなかったからとりあえずここに捨てといたの。そんなに怒んないでよ~。」
「ここに物を捨てるなとずっと昔から言ってますよねぇ、父上?」
と、にっこり笑顔で訊ねる。
「うわー、息子が怒ってるー。」
「せめて棒読みじゃなかったら許そうかなとも思ったんだけどねぇ!?一辺死ね、この腐れ外道。」
その後は実の父親が再び再起不能になるまで叩きのめした。
「そういえば、何故この男はここに居るんだ・・・?王宮で寝てるはずなのに・・・。」
気付いたときはすでにぼろぼろになっていた。

―1時間後 王宮―

「で、貴輝。なんでこんなことになったのかな?」
と母上に問い詰められて正直にあったことを話してみた。
「・・・まぁ、それじゃぁしょうがないわねぇ・・・。」
といいつつ寝ている親父の頭を平手打ち。無論軽くではあるが
「で、こちらからも質問なんだが、なんでこの男は王宮を抜け出してんの?」
「あぁ、なんか気付いたら居なくなってたみたいなのよねぇ。別に一言声かけてから外出しても誰も止めないのに。」
と、昔からある脱走癖のことをいうがそういうことではなく、
「いや、あれだけの大怪我でなんで動けるのかというのが一番気になるところなんだが。」
「それは、まぁ、私のだんな様だし。」
きゃっなどと年甲斐も無くほざきながらのろける両親もとい母上。
少し殴ってやろうかと思った。
「・・・まぁ、それで微妙に納得できてしまうのがまたいやだなぁ・・・。」
「ふふふ、私の亜魏斗は最強よ?」
とウィンク付きで言ってくる。
それは確かに間違っていないのだが、
「生物としてもう少しくたばってろよって思うんだが。というか、個人的願望としたらそのまましばらく冬眠でもしててくれればいいのにと思うし・・・。」
「・・・まぁ、それは私も少し思うけどねぇ。」
あら、妻にまでそんな事いわれてますよこのオトコ。
アワレダネー。
「ま、コレのことはいいや。もう、生物以外の何かだと認識しておけば大丈夫さ。きっと。」
必死に自分に言い聞かせる。
「そういえば、よく亜魏斗の事討ち取れたわねー?」
「・・・いや、こいつのことだから絶対手を抜いていた。というか、のりでやられるというのも考えられるからなぁ・・・。」
そう、昔から自分が苦しいことを省みずにウケを狙いに行くことが多かったのだ、このオトコは。
拙者の記憶に残っているだけでも
『俺は鳥になるんじゃぁあああああ!!!!』
とほざきだしそのまま変な(多分鳥のつもりだったであろう)格好で谷から飛び降りてみたり。
その後何故か谷の上にいたみんなの頭上から落下してきてみたりと色々とやってくれた。
まぁ、結局、最終的には血まみれになって阿鼻叫喚・・・そんなことになるのだが、拙者が里を去る直前あたりのときはすでに皆なれた様子で血まみれになって
『と、トマトジュース・・・。』
とかほざいてる阿呆を冷ややかに見ていたりした。
無論、救助はコボルさん率いる一部の人間だけがやって、他の人々は遠くからあぁまたやってるよあの阿呆の族長はみたいな感じで見ていた。
「ま、拙者はまたふらふらしてくるよ。」
言って医務室もとい亜魏斗の自室を出て行く。

―王宮 廊下―

「・・・あ、大丈夫だった?お父さん・・・。」
と微妙に落ち込み気味で聞いてくる名美さん。
「・・・何か暗いな。どうした?」
「だって私も一緒になってやっちゃったし・・・。」
ぁー。そんなまじめなことを・・・。
「気にするな。あの程度で死んでいたらこの里を守っていくことなどできはしない。」
と、微妙に嘘も混ぜつつ言う。
守る義務があるのは本当だが、あの程度のダメージで死んでいたら・・・あたりは嘘っぱちだ。
普通に考えてあそこまで傷を負う事自体がだめなんだから。
あれで死なないのは亜魏斗であるからこそだ。
「・・・昔から母上と一緒にボコってたからなぁ・・・。」
何のことか分からずきょとんとしている名美を置いて拙者は歩いていく。
「さてドコイクカナァー。」
考えつつ王宮を出る。

―銀狼の里 表通り―

わいわいがやがや・・・。
そんな表現がしっくりくるような表通りにやって来た。
と、いっても拙者はある程度以上の年齢の者には警戒されてしまうのであまり目立たないように行動しているわけだが。
「・・・おや?」
そんな雑踏の中で絡まれている娘が一人。
何てお約束なんだ・・・!
心の中ではそんなこと思ってます。
しかもこの里の者じゃないってゆーかあれは風凛さんですね。
なにやってん!
心の中でそうは思っていても一瞬出るのを躊躇してしまう。
「・・・ちっ!」
小さく舌打ちしてから止めに入る。
せめて若い連中であることを願おう。
そして、世の中そんなに甘くないんですねこれが。
「・・・おい。」
こちらが声をかける前に向こうが気付きましたよ。
「あいつ・・・。」
「あぁ。」
「コレで俺らも・・・!」
なんかいみがワカンナイ感じに盛り上がっている彼ら。
「おい、そこのお前ぇ!」
思わず後ろを確認する。
「てめぇだ、てめぇ!」
「名前を言え、ぐずめが。」
ちょっと気取っていってみた。
まぁ、挑発もこめてなんだが、これがまた面白いように食いついてきた。
「てめぇ・・・!」
「ふんっ!俺たちに勝てるとでも思ってんのか!?」
といきがる彼ら。
反応を見る限り若造か?でも拙者の事知っていたみたいだし・・・。
「ま、いいさ。とりあえずその娘を放したりなさいな。」
「はっ!おめぇどっちが立場上だかわかってんの?」
そりゃ、実質的な立場ならこちらのほうが上に決まっているんだが、そんなことを聞いているわけは無いだろう。
「ぁー。まぁ、お前さんたちが上というわけではなかろうな。」
分かってはいてもそう答えてしまう。
「・・・そうかい。ならこの娘がどうなってもいいんだな?」
「むしろお前さんたちももう少し相手を選ぶんだな。」
というが早いか今までぼんやりしていたはずの風凛さんは何処かへといなくなっていた。
「・・・はっ!?」
「どこいきやがった、アノ女!」
まぁ、猫だし。
狼と違ってこっそり忍び寄るのが得意・・・つまり気配を消して行動するのが得意なんだからしゃぁないだろう。
「きぃつけろよ。拙者はあくまでも時間稼ぎ。本人が復習に来るぞー。」
拙者はまぁ、命のやり取りを何度もしているので風凛さんが去っていくところを見ていたがなにやら妙に殺気立っていた。
なにがあったんだろうか?
「・・・フフフ。」
そのとき周囲の空気の温度が、明度が下がったかのような感覚に襲われた。
凄い殺気とは物理現象を捻じ曲げる・・・正確には捻じ曲げられたように向けられたものに錯覚させる。
・・・あれ?もしかしてこの殺気って拙者にむけられてません?
「貴輝・・・ふふふふふふふふふ。」
・・・。
怖っ!
てかなんでですかー!?
「ぇーっと。風凛さん!どうしたなにがあったていうかその物騒なものって拙者のものうわ何で抜刀してん!?」
動揺してます。
これでもかというほどね。
だって風凛さんいつの間に持ち出してきたか拙者の刀もって笑ってんだもん。
「積年の恨み・・・ここで晴らすっ!」
「ぅわああああああああああ!?」
絶叫を上げつつ逃走開始。
目立っちゃ駄目・・・そんな考えは吹き飛んだ。

―銀狼の里 秘密の訓練所―

「はぁーっ、はぁーっ・・・。」
ぁーなんだったんだろうさっきの。
積年の恨みって言われても知り合ったのだって最近だし・・・。
・・・んー?
積年も糞も風凛さんはあの地下の屋敷で生活してたんだよな?
なら、あそこで生まれたわけじゃなくて元々外に居たのをあとから入れられたとか、逃げ込んだとかかな?
なんにしても全く記憶にないなぁ・・・。
そんなことをつらつらと考えているとふと視界が暗くなった。
正確には何かの影のようだ。
「ん?」
言って顔を上げるとそこには
「久しぶりだなっ!」
・・・・・・・・・・。
「・・・どなた?」
「・・・。」
今度は相手が黙る番だった。
目の前に居たのは少年だった。
年のころ・・・10才前後、いってても13か14くらいだろう。
・・・といっても見た目だけの問題なんだが。
「お前・・・こないだあったばかりなのにすでに覚えていないというのか!?」
こないだ?
こんな失礼なガキと知り合った覚え・・・あったなぁ。
「ぁー。あの『自称・魔王』か。」
「自称じゃない!名実ともに魔王よ!」
というかさっきから後ろで腕を組んでいるなにやら土人形・・・いわゆるゴーレムっぽいのが地味に気になっているんだが。
「今日はお前を狩に来た!不安因子は今のうちに摘んでおくに限る!」
「その後ろの土人形でか?」
後ろで腕を組んでいるモノを指差し聞く。
・・・あ、頭の辺りが崩れた。モロっ!
「ふっ・・・聞いて驚け!コレがかの有名な」
「ゴーレムだって言うんだろ?ソレぐらい知ってるぞ。」
先に言われたのがショックだったのか少年はその場で泣きそうになった。
・・・精神弱いなぁー、この魔王。
「くそぅ!やってやれゴーレム15号!」
・・・何故に15?
突っ込むと予期に厄介なことになりそうだったので放置した。
そして、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。
ならまだよかった。
実際には、
ずず・・・ずず・・・ずず・・・。
と何かを引きずるような音を立てながらゆっくりと肉薄してくるゴーレム15号。
・・・。
ずず・・・ずず・・・ずず・・・。
・・・・・・。
ずず・・・ずず・・・ずず・・・。
・・・・・・・・・。
「どうした?恐怖で悲鳴も出ないか?くっくっく。」
いや、遅いッスよこれ。
「くぁ~っ!」
「欠伸すんな!」
怒られた。
そうこうしているうちにも土くれは近づいてくる。
ちなみに、もうすでに人型を失っている。
歩くたびに崩れているからだ。
迫力ないなぁー。
そんなことを考えつつこぶしを握る。
何故ここにこいつらが居るかとか考える前にコレをつぶしてしまおうと思ったからだ。
「・・・!?」
その瞬間待っていましたといわんばかりに土くれが『溶解』。
そう、『溶けた』のだ。
「・・・ぇ?液体になりましたよ?」
「こいつはただのゴーレムじゃない。本体を隠せるのさ!」
つまりこの液体はさっきまでのゴーレム本体じゃなく、その隠れ蓑ということか。
なんともめんどくさいなぁ。
「・・・いや、隠れてどうすんねん。」
考えても仕方ないのでとりあえず本体を叩くにはどうするかを考えてみる。
「・・・突っ込むか。」
そう呟いてゴーレム液(仮称)に飛び込んだ。
ずにゅぉん
と変な音がしてたどり着いたのは変な場所だった。

―???? ?? ??―

「・・・うわ!気持ち悪!」
そこは何かの動物の体内であるかのようにうごめいていた。
「それになんか獣くさいし・・・。」
存外本当に何かの体内かもしれない。
そうだとしたらここはどこら辺に当たるのだろうか・・・?
「胃だと消化されかねん。ま、いざとなったら斬り捨て・・・れないじゃん!?」
刀は風凛さんに持っていかれてしまっている。
どうしよう?
「とにかく歩いて情報収集だ。」
そう結論付けて出発した。

―???? ?? ?―

どうにかこうにか迷路のように曲がりくねった道を脱出した。
随分と長かったなぁ・・・。
そしたら広々とした場所に出た。
「ありえんくらい広く感じるな。」
なにせいくら暗いといえどこちらとて吸血鬼の知を受け継ぐもの。
その拙者でも向こう端が見えない。
「つまりこれは生物の体内ではない・・・っと。」
歩を進めていくと天井(?)の方から声が聞こえてくる。
「貴輝!」
名美の声だろうか?くぐもっていてイマイチ聞こえない。
「はっはっは!あいつは俺が食ってやったよ!!!!」
これは・・・さっきの少年か?
なぜかすぐ近くから声が聞こえる。
・・・もしや少年の胎内にでも居るのだろうか・・・?
「はぁ、今日は人形関係に苦しめられて、あげくこの状況か。」
さてどうしたものかと思考を巡らせ始めた・・・。



~後書き会話~
貴輝「いぇい!仕事が辛い!」
華月「知ったことか。」
貴輝「つれないなぁお兄さん。」
紅月「くぅ・・・くぅ・・・。」
貴輝「寝てルー!?」
風凛「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス・・・。」
名美「ねぇ、風凛ちゃんが凄い怖いんだけど・・・?」
貴輝「あ、拙者のかたうわああああああああああああ!」
風凛「貴輝・・・コロス。」
貴輝「・・・。」
名美「・・・。」
華月「・・・ひっくし!なぁ、なんか寒くね?」
貴輝「黙ってろ!何でこの緊迫した空気が伝わらないんだ貴様わ!」
華月「まぁ、俺だしな!」
貴輝「うっせぇ!もうちっと考えろ!」
名美「私身の危険を感じるから寝るね!グッバイ!」
貴輝「あっ逃げんなってうわあああああぁぁぁぁぁぁ・・・・。」
――きき は とうそう した!
風凛「・・・逃がさない。」
――ふうりん は おいかけて いった!
華月「・・・おいおい、司会進行が居なくなってしまってはどうしようもないではないか。むしろ私一人にしていいのか?私は今何やっても許されるということだな!?ふははははははははははは!!!!!」
貴輝「あほかー!?」
――きき が あらわれた!
華月「・・・ちっ!帰ってきやがったか!」
貴輝「もう少し進行しようって気はな」
華月「無い!」
貴輝「・・・。」
華月「断じて!無い!!!」
貴輝「そんな力入れて断言スンナ阿呆!」
華月「阿呆というな阿呆と。」
貴輝「まぁ、いい。それでは皆さん!この後書き会話の意味がイマイチ分からん!ッて人だらけでしょうが気にするな!作者もイマイチ分かっていない!」
華月「爆弾発言だな。」
貴輝「ってことで次回もまた楽しみにしている人は楽しみにしていてくれ!あと、更新遅くて、まじすんませんでしたああああああああああああ!ってまたきたあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
――ふうりん が あらわれた!
――きき は とうそう した!
華月「さっきから気になってんだがなんだこのしけたRPGみたいなト書きは。焼くぞこら。」
風凛「捕まえた。」
――きき は とうそう しっぱい した!
貴輝「あああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・。」
華月「いや、焼くまでもないか。ご愁傷サマー。」

To be continue...

―Sky―【SITS.Story.】 第伍話 ~帰郷~

この物語は全てフィクションです。(念のため)

Skyの世界のパラレルワールドであるもう一つの世界でのお話・・・。

―Sky―【SITS.Story.】 第伍話 ~帰郷~

中学生到来から三日後。
「電報が来てるぞー。」
といってなぜか矢文風に部屋に手紙が打ち込まれた。
「誰だ!?矢文とか微妙な真似するのは!?」
と叫ぶと遠くからあいつの忍び笑いが聞こえてきた。

とりあえず手紙を読んでみることに。

―――チチ キトク スグカエレ チチヨリ―――

「・・・っく!またこの手紙か!?」
この数年で何通同じ手紙が来たことか!?
「ん?でも今回は続きがあるな。・・・どれどれ?」

―――冗談はさておき、最近色々とあれなので一回帰って来いコンチクショー。
あと、もう一つ。
ハハ ゲキド タスケテクレ チチヨリ
P.S. 一回ぐらい手紙返してくれても良いんじゃないか?―――

「・・・何故重要な部分だけ電報調なのだ?というか、そんな冗談の手紙しか送ってこないから返事がないということに気が付かないのかこのクソ親父は・・・!?」
悪態をつきつつ母さんが怒ってんのかぁ・・・。と考える。
「お父さんがキトクってやばいんじゃないの!?早く帰ってあげなきゃ!!」
と耳元で突然名美の叫び声が。
「五月蝿いよ!こっちの電報(?)は冗談だから無視しとくの!っていうか、文をよく読んでみろ!なんで危篤のやつが電報を出せるんだ!?」
と叫び返すと
「あ、それもそうか。」
とあっさり沈静化。
「あ、でもでも、母激怒ってあるよ?」
「うん、だから帰ってみるかなぁ・・・。と少しばかり悩んでいるんだ。どうしよう・・・・・。」
とりあえず、いつもどおり処分しとくか、刀技の練習にもなるし。
「ぅおーい、腐れ外道ー。」
「何だこの豚野郎ー。」
といって現れるはご存知澄夜華月君。
「いつも通り処分対象。」
「了解。」
いつものことなのですぐに返答が来る。
だいたい拙者に手紙・・・それも電報とまでなると親父からしかないのだ。
で、内容はいつもあれだからすでに心得たものだ。
「いくぞー。」
いつでも来いといわんばかりにあっちも戦闘体勢に入る。
そして、手紙を上に放る。
ふわりと舞う手紙を見つつ刀を出し、
ひらりと舞う手紙の位置を見極めて、
「―――ふッ!」
と気合を入れて刀による三撃を繰り出す。
「―――斬影(ざんえい)。」
手紙がちょうど『刀が辿った軌跡』を通った瞬間に完全に納刀する。
チンッ、と納刀した瞬間、
キンキンキン!
と音がして手紙が六等分される。
そこにすかさず
「マグマボール・コンプレッション。」
と華月がつぶやくと縮小された炎が手紙を中心にして起こる。
ごおぉぉ!
それは炎というより光の玉というほうが正しいかもしれない。
限界まで圧縮された炎はその球のような範囲の中で燃え尽き、中のものを蒸発させた。
「おぉぉぉぉぉ・・・。」
名美が嘆息する。
「腕を上げたな?」
と華月に聞く。
「おう。前に憑依合体の試し打ちしたときあまり成功とはいえた状況ではなかったのでな。すこし改良してみた。」
「お前あのとき成功とか言ってたような気がするが?」
たしかにそんなことをいわれた記憶がある。
「キノセイダ。」
「片言で言われてもなぁ・・・。」
もう突っ込む気力もないのでスルーしておく。

―一時間後―
女性陣三名に猛攻を受けた結果一度故郷に帰ることになった。
「いや~、久しぶりだねぇ。帰るの。」
「だな。追い出されてからもう・・・、何万年経ったかなぁ・・・?」
と雑談をしつつ歩く。
「って、万!?」
「ん?あぁ、万というかそろそろ億の単位に入っててもおかしくないんじゃないか?」
と相棒に聞いてみる。
「さぁ、な。俺は数えてないから知らん。まぁ、少なくとも数千万年は帰ってないだろうな。」
「な、何でそんな長いこと生きてるの!?」
名美が驚いた様子で聞いてくる。
「ぁ~、もともと獣人は長寿だってのは知ってるだろ?それが拙者たちは幻想獣の獣が混じってるっていう要因で不老の体になってるんだ。ま、あくまで不老なだけで不死ではないからね。殺されれば死ぬよ。その代わり寿命で死ぬことはないのさ。色々と便利だよ~。この年で成長止まってくれたし。」
「良いなぁ~。」
と羨ましそうに言うのは風凛だった。
そんな会話を微妙な顔で眺める不老不死といわれる紅月さん。
「・・・そういえば、いまので思ったんだけど。紅月さんって不老不死なんだよね?」
「え?あ、はい。まぁ、不死、といっても不完全なものですけどね。弱点はありますし。」
「へぇ~、そうなんだ。意外だなぁ。んまぁ、それが聞きたいんじゃないから置いとくとして。紅月さんたち人魚ってのは最初からある程度成長して生まれてくるの?それとも拙者たちみたいにある程度まで成長するの?そこんとこお兄さんは聞いてみたい。」
と聞いてみる。
これは少し前から思ってたことで拙者たちは『後天的に不老の体になった』身で『先天的に不老の体である』人魚とは少し事情が違う。だから人魚とかそういういわゆる幻想獣と呼ばれる者たちがどういう風に不老になるのかというのを知らないのだ。
「私たち人魚ですか?ん~・・・そうですねぇ。そのどちらの答えでもなくて、ある儀式を終えるまでは成長を続けます。その儀式を終えたときから不老不死になるのです。その儀式については秘密ですけどね。まぁ、人魚として一人前になるための儀式・・・といったところですかね。」
「・・・ふ~ん。ちょっと複雑な感じですね。拙者にゃよ~分からん。」
と雑談がいったん途切れたところで目的地に到着。
目的地というのは勿論『フレイア』だ。

―フレイア ガテ乗り場―
「ふぅ~。やっと着いた~!」
フレイアは天幻―――正確には幻界というのだが―――にある街の中でもっとも大きな主要都市だ。
街は大きな城壁で囲まれている。そしてその城壁は外よりも中のほうが頑丈に出来ている。
その理由が言うまでもない忌々しき『天魔戦争』だ。
ここはこの世界で一番大きな町であるのと同時にもっとも一般市民の住んでいる割合、人数が少ない街でもある。それはこの街が最終防壁であるからだ。ゲートから魔物が入ってくるなど日常茶飯事・・・とまでは行かなくともそこそこ頻繁に起こる。故に住人の数は次第に減っていく。そして、その穴を埋めるように兵士などが増えていくのだ。
「ま、この街には用ないし。とっととガテで獣牙界に行くか。」
「だな、長居していいことあるような街でもないし。」
ということでとっととガテに乗り込む。
「おぉ~。おっきい町だねー。おっきいー水溜りだねー。」
とずっと驚きっぱなしなのは風凛だった。

―獣牙界行きガテ内部―
「さて、今後の方針だが、まず向こうに着いたら何がしたい?」
「いや、まず拙者らの村に帰らにゃならんだろ。・・・あまり帰りたくないが。」
と二人して微妙な顔をする。
正直半分追い出されるようにして村を出た身としてはあまりひょいひょい帰れるものではないのだ。
「おぉ~。窓の外に変な光景が広がってる~。」
とここでも驚きっぱなしの風凛。彼女に意見を求めるのはやめとくことにしようと思う。
で、名美のほうを見るとなぜかにやついた顔をしてこちらを見ていた。
「何だ?」
と問いかけてみると、
「別に~。にしし。」
と笑いながら言った。
で、紅月さんは紅月さんでニコニコ笑顔で華月のことを眺めている。
華月は思考に没頭中で全然気づいた様子がないが。
・・・話しかけないほうが良いかな。
「ふむ。それじゃぁ、とりあえずいったん村に戻ってゆっくりするか。出来たらだけどな。」
「やっぱ、そうなるか。」
「「はぁ・・・。」」
二人同時にため息をはく。
そんなこんなでガテは獣牙界へと向かっていくのだった。

―2時間後 獣牙界―
「あぁー、着いた着いた。我が故郷よこんにちは・・・っと。」
獣牙界で唯一の近代都市『風解都市』。
これで街の名前だというのだから驚きである。
読み方は「ふうかいとし」何故こんな名が付いているかというとこの『門』がある山が元々文字通り『風』を『解く』地だったからだと言われている。
風を解くというのは、風を空気に戻す。つまり、風をなくす。もしくは風を消してしまうという意味だ。
そして、それだけではなく。この地は風の生まれる場所でもある。
風にとって見れば、この地は母なるものでもあり、死神のようなものでもある・・・らしい。
少し分からないかもしれんが。
さてはて、何故、この都市だけ近代的かというと、理由は簡単。
一度他の界に占拠されたことがあったのだ。
そのときになにやら近代的にされ、取り返したはいいが処分の仕方が分からない、とか、めんどくさいとかいろいろな理由で放置され他の界域の人々が移り住み、近代的になったといわれている。
他の地は昔ながらの風景を残していたり、荒廃した荒地になっていたり・・・。さまざまだ。
「俺らの神獣の村までどうやっていく?」
「まて、どこが神獣の村だって?」
と、相棒が突然わけ分からないことを言い出したのでとりあえず突っ込んでおく。
「いや、俺たち神獣だし。」
と、さらに爆弾発言。
「待てぇぇぇぇぇい!誰が神獣だと!?お前も拙者も神獣には程遠いだろ!?」
力いっぱい突っ込むが、彼が聞いてくれるはずも・・・
「そうだなぁ・・・。」
なにいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!???
心の中で激しく絶叫!
「何変な顔してんだ?」
と、表情を隠すことも出来ない驚愕を見て相棒が聞く。
「お、おま、なん、そんな、すな・・・!?」
すでに言葉になってませんが気にしない方面で。
「いや、帰るにあたって少し緊張してな。」
・・・あぁ、なるほど。
こいつも思ったよりまと・・・
「どうやってあいつから逃げようか・・・むしろコロシテやろうか・・・?」
・・・。
なるほど!納得!理解理解!
「・・・大変だな。お前も。」
「お前もだろ。輝(あきら)が来たらどうするつもりだ!?」
めずらしく常時において絶叫。・・・それほど切羽詰っているらしい。
「大丈夫!対策は考えてある!」
「何!?」
ちらりと名美を見て、
「あいつをだしに・・・」
「無理だな。」
最後まで言う前に返答が返ってくる。
「・・・やっぱり?ぅわ~!どうしよう!!!」
悩みぬく阿呆がふたり。
それを不審気に見つめている・・・もとい、見つめて囁きあっている女性陣たち。
しかしそんなことにかまってられないといった風の二人。
鳥狼の里に向かい始めたのはそれから三十分ほど経ってからだった。

―鳥狼の里 入り口―
「さぁ、着いたぞ~。」
「あいつをまずはあしらって・・・いや、あしらえるような相手では・・・!」
ぶつぶつとつぶやき続けるは華月君。
「・・・何もないよ?どうなってるの?」
「みていなさいお譲ちゃん。」
「お譲ちゃぁん?」
すごく不気味なものを見るような目で拙者を見る名美。
「それどころではない。ここで時間を稼ぐか?いや、しかし・・・」
「ゎ~い!華月!お帰り~!!!」
と思考の途中で乱入アンド華月に猛烈タックル・・・もとい、飛びついたのは拙者も知ってる自他共に認める(華月は否定・・・というよりむしろ怖がっている)華月ファンこと『白梟 古都(しらふくろう こと)』。
「くっ・・・!は、離れろ!このバカ!」
といつも無敵な華月君も彼女に対しては弱い。これは昔の古傷というかなんと言うか。拙者らにはトラウマ気味の連中なのである。
連中というからにはもう一人。
「・・・ぅお!?こいつがいるということはすぐ近くに・・・!?あああああ!それらしき気配というか匂いがああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
この場から全力で逃げたいのを必死に我慢。
その代わり完全武装で待機します!!
「うわ!華月君が女の子に抱きつかれてる!?というか、たじたじになってる!?面白~い♪」
といいますは風凛さん。というか面白いか!?
そしてぇ!
「貴~輝~!・・・死にさらせええええぇぇぇぇ!」
と前半猫なで声、後半は地獄の亡者のごとき叫びを上げつつ突撃してきますは『群狼 輝(ぐんろう あきら)』さん。自称花も恥らう乙女です。
「ぐぼぐぁずふぁあ!?」
と飛びつかれたまま何故かチョークスイーパー&関節技でがんじがらめにされる拙者。
「~~っ!~~~~~~っ!~~~~~っ!?!?」
喋れなくて地面をだんだんとたたいて目で訴えます。死ぬ!死ぬ!窒息死する!?
「ぅゎー・・・。」
と言葉もなくしてその惨状を眺めるはやっぱり女性陣三名でした。

―銀狼の里 王宮 自室―
「・・・ん?」
とりあえず今の現状をぐるりと確認。
目を覚ましたということはあのまま気絶もしくは絶命したということだろう。
なら、ここは黄泉の国か!?まだ現世か!?
――がちゃり。
と入ってくるは
「あ、輝ああぁぁぁ!!!???」
驚き跳ね上がり窓から逃走しようとする。
が、しかし、
「うおおおおぉぉぉぉぉ!?何で竹やりがこんなに一杯生えてるの!?危なっ!?」
「ふふふ・・・。」
とすぐ後ろからの含み笑い。
「あはは・・・。ココハドコデスカ?」
「何言ってるのよ。ここはあなたの部屋でしょう?貴輝。」
と、少し呆れた風に言う輝。
「いやいや、ここは地獄かと聞いているのだよ私は。」
つい変な口調になるのはこいつと話すときの癖みたいなものだ。
「いや~ねぇ、もう。あれしきで貴輝が死ぬわけないでしょう?ちょっと三分ほど首を締め上げただけじゃない♪」
「いえいえ、お嬢さん、普通の方なら二分も締め上げれば十分死ぬのだよ?あなたのようなイキモノに締め上げられたら死んでしまうのよ~!あーっはっはっは!」
生きてるって素晴らしい~!
心の中でそう叫びながら笑っていると急に首を
ごきゅっ!
とやられました。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁ!?!?!?!?」
とりあえず叫ぶことが出来るということは逝ってはいないということだろう。
「おおげさねぇ~。」
とからからと笑いながら言う目の前の輝こと悪魔。
「もう、ずっと待ってたんだからね。それはもう死んでしまうかと思うくらいにさ。ね?貴輝・・・。」
出来ればそのままくたばっててくれれば・・・!
心の中ではそんな黒い感情がほとばしってます!
「あ、ところで他の連中は?」
「ん?華月君は黒梟の里へ連行されていって、その付き添いで赤い髪の子が一人向こうに行ったな。こっちには黒髪の鳥人が来たよ。」
「・・・あれ?もう一人いたでしょ?」
少し待っても風凛のことが聞けないので問うてみる。
「あぁ、猫の子?あの子は向こうとこっちといったりきたりしながらしきりに「おぉ~」って言ってたわよ~。面白い子よね~。」
好奇心旺盛なことで・・・。
とりあえず、家に帰ってくることは出来たようだ。
・・・兎にも角にも、母の現状を少しでも知っておきたい。
まぁ、親父で駄目だったのなら拙者でなんとか出来るとも思ってないのだが。
「拙者の母上は?凄いことになってるって聞いたから帰ってきたんだが・・・。」
「それを言いに来たのよ。うん。凄いわよ~。何か邪神みたいになってるからねぇ。まぁ、良いのは人の血を吸わないってところかな。あとはとりあえず死者は出てないって事。」
「ふむ。ようはまだ最悪の事態ってのは起きてないか・・・。」
でも、最悪の事態一歩手前でとまってるだけのこと。
何をそんなに怒っているんだ・・・?
「・・・とりあえず、一回会ってみるか。」

―銀狼の里 王宮裏の訓練場―
「うおぉぉぉぉ!!!」
と裂ぱくの気合ともに狼の獣人の剣士が走りより上段から剣を
「なめるなぁ!」
振り下ろすことも出来ずに吹き飛ばされる!
どごっしゃああぁぁぁ!!
と盛大な音を立てて拙者の横に瞬時に飛んでくる剣士の体。
「ぐぅ・・・!!」
まだ生きてるな。まぁ鎧は死んだみたいだけど。
「・・・いや、また暴れてるなぁ。鎧を一撃で打ち砕くってどんなパワーだよ。さすが純血のバンパイア、神祖の鬼神、銃牙の姫神などと呼ばれていただけある。お~い!母上~!」
とりあえず呼びかけてみる。
「き、貴輝様!?」
何故傍らでうずくまっている兵士が反応する!?
「お、お願いです!あの方を止めてください!我々ではもう無理です!」
「ん。まぁ、そのつもりで帰ってきたわけだし・・・っと、そういえば、ここでは別に変化してる必要はないのか。気兼ねなく獣姿で歩けるんだよなぁ~。便利便利~。」
と、人化を解く。正確には吸血鬼化なのだが。
「ふぅ~。んじゃ、いっちょやりますか。」
と、ここに来る途中で拾ってきた木刀を体の斜め後ろに片手で持って構える。切っ先は自分の斜め右後ろ。拙者にはこの構えが一番戦いやすいからこの構えを取っている。その代わり、この構えは防御に徹するときにはとても役に立たない。防御のときは正眼の構えが一番だと思う。
「お~い。母上や~い。息子が帰ってきたぞ~。」
と、声をかけながら歩み寄っていく。
「あぁ!?」
不良のような声を出し、睨み付けてくる母親。
その瞳には自分に立ち向かってくるものしか映ってないようだ。
「ふむ・・・。完全に狂化状態になってるみたいだなぁ・・・。まったく、誰だ母の『狂』ここまで覚醒させたのは・・・!」
「俺だ!あーっはっはっはっは!」
と文句に答えるは我が家の屋根の上にぶぁさぁぁ!とマントを翻して立つ上半身裸の変体男!
「あんたぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「親父ぃぃぃぃぃぃ!!!!」
母親と仲良く絶叫。
拙者は我を忘れて足元の小石を自らの技で放ち、母はどこから取り出したか杭のような棒を投擲!
「ぬおぉ!?あ、危ないだろうが!このドラ息子!!」
「うっさい!ボケェ!お前が最前線に立たないで何でそんなところに立ってる!?この腹筋マント変態!!」
と親父を罵倒する。
親父はいつものことと流して聞いているようだ。
あの野郎は最低なことに街中をあの格好で歩く。
故に毎日が罵倒と野次と女性の悲鳴であふれているのだ。
・・なんともバカバカしい事この上ない。
「俺も最初は前線で戦ってたよ!?全力で!!」
「それがあかんのやろがぁぁぁぁぁぁ!!!自分の妻に全力で攻撃しかける夫がどこに要るってんだお前以外に!!!!!!」
母はしきりに杭を投げ続けている。
よっぽど腹立たしいようだ。あの糞野郎が。
「ぇー。だってー。俺、怖かったしぃ。」
「気色悪いは!?何でいきなりコギャルっぽくなる!?全然似合ってなくて気持ち悪いは!全然似合ってなくて気持ち悪いは!!!」
「二回も言わなくても分かるよー!?」
拙者も謎の男に目標を変更して、
「母よ!あの野郎を二人で殺ろう!」
と持ちかける。
母はこくんとうなずき猛攻開始。

―黒梟の里 王宮 華月の部屋―
「・・・。」
「えへへぇ~。華月くぅ~ん。」
「・・・うぅ。」
とへばる人約一名。
その一名は右腕に古都が、左腕に何故か紅月さんが抱きついていて身動きが取れない状態にあった。
しかも、その両脇の二人が牽制しあっているのか腕をぎりぎりと締め上げるはお互い黒い笑顔を浮かべて含み笑いをもらしつつ表面上は楽しげに会話しているのだ。
・・・俺、死ぬかも。
と、少し本気で思っていた。

―三十分後 銀狼の里 王宮 元訓練場―
あれからの攻防で訓練場は二目と見れない状態になり、親父は拙者と母の二人で成敗され、なおかつ清掃員のおばちゃん軍団にこっぴどくしかられてから解放された。
が、
「ぐるるるるるるるぅ・・・。」
腹の虫が収まらないか、野生に戻りつつある母が一匹。
「くそぅ!?あれだけやってまだ戻りませんか!?えぇ~い!こうなったら動かなくなるまでハッタオス!」
こうして、乱戦が開始される。
まずは貴輝が木刀を一閃!先制攻撃を仕掛ける!
それをすばやくかわして貴輝の左側に駆け込む神祖の吸血鬼。
駆け込む勢いそのままで鋭い爪をたててわき腹を切り裂こうとする。
それを刀を振りぬいた勢いを殺さずくるりと左回転する貴輝の体。
その回転のおかげで爪に当たらずにすむ。
「ふぅ!やっぱ、強いなぁ!しゃぁねぇ!秘術!獄炎刀!」
叫ぶと同時に刀がもう一回り大きくなる。その増えた部分が炎のきらめきをたたえているのだ。
「一度くたばれええぇえぇぇぇぇぇぇ!!!」
と大きく振りかぶって
後方に跳躍!
一瞬後に今さっき立っていた場所を神祖の爪が通る。
「よく、避けたわね。この『六星 血姫(ろくせい けっき)』の攻撃を!」
怒り心頭のご様子。
「んー・・・やばいか!?仕方ないか・・・。まだ実験段階にあるから使いたくはなかったんだが・・・。」
そういって詠唱に入る。
拙者の技・術の中で唯一詠唱が必要な秘術・・・いや、秘奥技術。
「戦いの道は武士の道、武士の道とは剣の道、我が剣とはすなわち刀!刀に憑かすは清浄な力なり、今ここに集結し、終結させよ。」
神祖こと我が母親の血姫の攻撃を避けつつ一小節ごと正確に、かつ素早く言っていく。
そして詠唱が終わり十分な気力が集った時
「―――秘奥技術!銀炎刀!」
叫ぶ、そして刀に纏いしは赤くもなく青くもない炎。
その姿を見て・・・いや、その熱量に血姫も立ち止まる。
「知ってるか?行き過ぎた炎ってこうやって水みたいになるんだってさ。」
と喋りつつ木刀を血払いし一気に踏み込む!

―銀狼の里 王宮 自室―
一糸纏わぬ姿の焼け焦げた我が母親を救護班に明け渡し、重症の傷で寝ている親父に「ごめんな」といいながら踵落しをかまして追い出されてから数分。
「やっほ~。貴輝、大丈夫?何か色々と血とか出てるけど・・・。」
「お?名美か。んー。まぁ、大丈夫だろう。血が出るのも定期的に摂取する輸血パックで補給できてるし。」
と名美にテキトーに答えて布団に寝転ぶ。
「あぁ~眠い。お休み名美~。」
と言って寝ようと目を瞑ると、
ゴソゴソ・・・
「・・・お前は何を人の布団に・・・!」
「だ、だって、何か怖くって・・・。」
何故かしおらしい名美。
「・・・あ、あれ?マジでなんかへこんでる?ぅ、ぅわ、泣くな泣くな。」
「じゃぁ、良い?一緒に寝ても・・・。」
・・・くそっ!前々から変なやつだとは思ってたけどこういうときに限ってまともなやつになるか!?
「・・・やっぱ、だめ?」
と残念そうに肩を落とす名美。
「・・・ぅー・・・・・・・。分かった。分かったけど引っ付くなよ。」
一応そう断ってから許可。凄く不本意だけど許可。
「ゎーい!やったー!」
と布団にもぐりこんですぐ傍らですぐに寝てしまう。
「ったく!なんでこんなときだけ・・・!」
小声でつぶやく声は誰も聞いてなかった。

―そのころの華月君―
―自室にて―
「私が一緒に寝るの!」
「いえ、私が!」
って感じで紅月さんと古都がけんかを始めて早一時間。
いつになったら終わるのかとうんざりした顔で、しかし騒がしくて眠れないというひどい惨状で困っていた。

~あとがき会話~
貴輝「耳が痒い!!」
名美「むぎゅう~。」
貴輝「て、くっ付くなぁぁ!」
名美「むぎゅぎゅうぅぅぅぅぅぅ!!!」
輝 「あぁぁぁぁ!!!僕の貴輝がぁぁぁぁ!!!」
貴輝「誰が貴様のかぁぁぁぁ!!!!」
華月「それより助けてくれ、というか助けろ!」
貴輝「こっちこそ助けてもらいたわがうわとぅるあぱら!?」←顔面にドロップキックをかまされK.O.
紅月「私は華月さんとずっと一緒に暮らしているんです!あなたが知らな
古都「あなたなんかでは分からないほどながーーーーい間一緒にこの村で
華月「眠れねぇーーーー!!!!」
輝 「寝るなぁ!おきろ貴輝ぃ!!!」
貴輝:がっくんがっくん!「はっ!?いま、川の向こうのほうで名美に似た天使っぽいのが手招きしながら納豆にはやっぱりソースですよね~とか良く分からないことを・・・!?」
輝 「いっとる意味が分からん!」
貴輝「ということで、大伍話どうでしたかぁー!?私的には書いてて楽しかったのは血姫と貴輝の戦闘場面。頭の中ではシルフ○イド見聞録のテストの妖精のテーマ(?)が流れっぱなしです!誰か止めてー!!!」
名美「むにゃ・・・貴輝~・・・・・うるさい~・・・・・・・・・・。」

To Be Continued...

―Sky―【SITS.Story.】 第肆話~復帰~

この物語は全てフィクションです。(念のため)

Skyの世界のパラレルワールドであるもう一つの世界でのお話・・・。

―Sky―【SITS.Story.】 第肆話~復帰~

「ふむ・・・。」
あれから五分ほどたった。
結局何作るかがきまらずだらだらと時間だけ過ぎた感じだ。
「むむむむ・・・・・・・・。」
「眉間にしわがよってるよ。」
名美がそんなことを言ってくる。
「いや、別によってても良いんだけど・・・。」
「しわが付くよー・・・。」
とにんまり笑って言う。
「せっかく可愛い顔になったのになぁ・・・♪」
「黙れ。」
さっきどっかいった華月がいつの間にか戻ってきていた。
「何処行ってたの?」
「野暮なことを聞くんだな。」
・・・ようは便所か。
と結論付けて再び思考へ。
「あう~~~~~~。何も思いうかばねぇ・・・・・・。」
「こうなったら扇子作れ。扇子。」
意味のわからないことを言い出す我が相棒。
「鉄扇なんか作ってどうすんだよ。しかも鉄芯もって来た意味ないし・・・。」
てきとーに反論をする。
「んじゃ何が良いんだよ?バナナでも作るか?」
鉄のバナナ・・・?
「作れたら面白いかもしれないがかなり無意味だよな?ってか、なんでバナナなんだ!?」
「んじゃ、りんご。」
「食い物から離れろ!」
とりあえず殴っとく。
当然のように避けられた。

―午後一時半―
結局何も案が出ないまま実習の時間になった。
「何やるんですかー?」
「ぁー。何か作りたいものある人ー?」
と聞く。
がやがやと周りと相談したりしているあたり何か作りたいものとかはないようだ。
「バナナー。」
と、遠くから聞こえてきたが無視する。
ふむ・・・。
と考えようとしたとたん。
・・・!
後方に飛んだ。
直後、
ぶしゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!
飛来してきた濃い青色の液体の入ったフラスコが割れ、中の液体が地面の上に広がり、その液体が触れた植物を枯らしていった。
「・・・。」
沈黙していると。
「無視すんなー。」
と、声をかけられた。
「貴様は自分の仕事をやらんかい!」
とりあえず突っ込んでおき振り返る。
「ぅゎー・・・・・・。」
一番前に座ってたやつが驚きのあまり昇天しそうになっていた。
「そうだ!包丁作りたい!」
何も知らない・・・というより騒いでいたせいで前での騒動に気づいてない後ろのほうのやつがそう叫んでいた。
「んー。刃物は難しいんだよねぇ。・・・まぁ、いっか。んじゃ包丁よりかは簡単なナイフでも作っとこうか。
といって鉄芯を切り分けて配った。

―5分後―
一通りの説明を終えた。
「そんじゃー、てきとーにデザインとか考えててきとーに作ってってねー。」
無論半日やそこらで素人が作れるとも思ってないが・・・。
拙者もいろいろと失敗を重ねてなんとか刀が打てるようになったんだし・・・。
暇だったので自分も鉄芯を切って小太刀を作ることに。
「なにやってるのー?」
名美がやって来た。
「んー?小太刀打ってるのー。」
「ふーん・・・。」
と微妙な返事をしつつ手元を覗き込んでくる。
「あんま近寄るとやけどするぞ。」
「させたら一生うらんでやるんだから。もしくは責任とってもらうからねぇ♪」
と注意したら返された。
責任も取りたくないしうらまれたくもない。
ということで、
ごすっ。
頭突き!
自分も結構痛かったがそれは我慢。
「いった~・・・。何すんのよー!」
とむくれながら文句を言っている。
「危ないって言ったでしょう。」
「む~・・・。」
とむくれているが放っておく。
―30分後。―
拙者はできたのでぼーっとしていたら風がやりたいと言ってきた。
「ほんまでっか?」
「何語?」
首を傾げられる。
「いや、まぁ、いいけど・・・。何作るの?」
「私短剣の扱いには自信があるんだー。ということで短剣を作りたい。」
短剣・・・。
まぁ、あそこにはナイフとかしかなかったしなぁ・・・。
変な気配もあったし。
ナイフだけであそこで生きてたってことはかなりの腕前・・・?
さっとそんなことを頭の中で考えて、
「んー。まぁ、良いんだけど、なんならせ、私が作るよ?」
「いえいえ、やっぱり自分で作ったほうが愛着がわくでしょう?」
と言われる。
拙者も鍛冶を始めた理由はそれだし別に止めやしないが・・・。
「結構辛いぞ?熱いぞ?かなりの確立で失敗するぞ?」
「うん。大丈夫そんなことは覚悟のうちだよ。」
ふむ。
まぁ、いいか。
「決意は・・・固いか?途中で放棄するくらいならここでやめといたほうが身のためだぞ?」
「そんな脅しに屈しなくらいには決意硬いよ。」
なかなかに頑固というか強情というか。
まぁ、そういう面で強いのはいいことだが。
「よし、それなら良いだろう。とりあえず説明だが・・・。まぁ、ざっと簡単に説明すると、まずは刃物の核とも言える『芯』を作らなければならない。まぁ、今回はあらかじめ拙者が作っておいた(かなり昔に作りだめしたもの)があるから別にいいが、基本的にはここからはじめる。というか拙者は始めていた。この『芯』の強さによって武器の限界や耐久度なども変わってくる。『芯』が硬く、強く、鋭いほどいい武器になるのだ。芯も刃物の一部だから当然鋭さも必要だ。さっきいった鋭いほどいいってのはそういうことだ。『芯』の『鋭さ』というのは『美しさ』に置き換えても大丈夫だろう。で、美しさとは何かというと、どれだけ端麗にできているかだ。『ごつごつした芯』よりも滑らかで、『できる限り完成形に近い形のもの』ほど良い。だからといって完成形とまったく同じが良いという訳でなく、刃物のような薄い部分を作るとそこから『芯』が痛んで・・・って、大丈夫か?」
見ると変な顔をしてボーっとしていた。
「貴輝もそんな風にしゃべれるんだねー・・・。」
と感心した風に言われた。
「・・・話を戻すぞ。」
たしかにこんなに連続でしゃべることはそうないが・・・。
と思いつつ言う。
「あ、うん。」
返事をするのを確認してから戻る。
「で、だ。ぇー。さっきまで話してたところまでは大丈夫だな?」
こくんとうなずく風凛。
「よし。ぇっと『芯』が痛むと・・・ってところまでだったな。でわ、『芯』が痛むとどうなるか。そこから刃物全体が壊れ始める。故に『芯』に刃のような鋭い部分は作ってはだめなのだ。だが、『芯』自体は鋭くなければならない。ここら辺が難しいところだな。さて、『芯』に関してはこんなところで次は刃と刀身についての説明だが、まずは刀身を作らなければならない。当然だな。刀身はまず刃のことをあまり意識せずに大体の形を作ってしまってそれからあとで刃をつける・・・というか打つんだ。『刃』は当然ながら『芯』とは違い非常に鋭くしなければ意味がない。相手を切ることのできない刀なんぞ刃のない出刃包丁のようなものだからな。その点西洋剣は『斬る』のではなくて『叩き切る』という風だから刃に関してはあまり気にしなくても大丈夫だが・・・短剣だろ?なら切れ味が良くなければ意味がないな。短剣やナイフといったものも切れ味が最終的にものを言う。西洋剣は重量があるから叩き切れるが短剣やナイフにそんなものを要求したところでどだい無理な話だ。だから短剣やナイフは切れ味がいいものが良いのだ。で、その場合どのように刀身を打っていくかだが、こればっかりは慣れてもらうしかない。基本的なことはとりあえず肉付けすると思って溶かした鉄を自分の思った量をつける。それが固まりきる前に急いで形を整える。さっきせっ、私が作った小太刀もそういう風に作ってあるし。慣れろって言うのは自分にとってどれくらいが一番ちょうどいいかとか、個人の打ち方によってはどれくらい鉄がいるかって言うのも変わってくるしな。んで、刃こぼれとかの直し方だがやはりこれも鉄をつかってその刃こぼれの部分を覆う、もしくは一度その物自体を溶かしてもう一度打ち直す、のどちらかになる。後者のほうが楽だが時間とか手間とかいろいろとかかるのであまえりお勧めしない。前者のほうも時間の短縮になるが結構難しい。まぁ、拙者のやりかたを教えるとその部分にだけ熱を加えて打ち直すというやり方をとっている。これはこれで難しいのでそこらへんはまぁ、てきとーにじぶんにあっているやりかたでやっていただけるとありがたい。・・・だいたいの説明はこんなものかな。」
「お~・・・。」
感心された。

―さらに1時間30分後―
午後の実習が始まってから二時間がたった。
がきどもはもうお帰りのようだ。
これまたお決まりのあいさつをしてまた演説を頼まれる。
「が・・・」
「貴様がやれ!」
すぱーん!
後頭部をハリセンで張り飛ばす。
で、やる気のない演説を聴き終えガキどもはぞろぞろと去っていった。
「いやー、一部のやつが不恰好とはいえ完成させたのは驚きだなぁ・・・。」
「こっちもだな。ほれ薬の作り方教えたんだが皆うまいこと作っ・・・」
「ちょっとまて!」
今不審な単語が・・・!?
「ほれ薬?」
「おう。」
普通に応答する相棒。
「完成させた?」
「おう。」
またも普通に応答する相棒。
「・・・やばくない?」
「おう。」
さっきからおうしかいってないよお前・・・。

―10分後―
とりあえず先ほどの問題はほうっておいて。
「これ元に戻せ!」
絶叫。
「はいはい。動脈注射。」
グサッとさされる注射器。
「二回もあんな衝撃うけたらお前からだ壊れるよ?」
「そんなだったら人を実験台に使うな!」
と、
「ぐっ・・・!」
きた・・・。
今度はみしみしと音を立てながら急激に体が大きくなっていくようだ。
「うごぁ・・・。ぐふぁ・・・!」
「変な声。」
人が苦しんでいるのを見て言うのがそれか・・・!?
とりあえず・・・これで元に・・・。
意識が途切れた。

―三時間後―
「・・・うぅ・・・。お?」
「目が覚めたか。このくそやろー。」
戻ってる!
「ってか、お前に糞野郎呼ばわりされる筋合いはない!」
ズヴァシッ!
ハリセンアタック!
「いつつ・・・。本気ではたきやがって・・・。」
「今までのお返しだ!」
ちなみにハリセンは今の一撃で粉砕している。
「まったく・・・。」
とため息をついていると。
「あぁ、そうそう。ひとつ言っておこう。」
「んあ?」
部屋に帰ろうとしたところを呼び止められて振り返る。
「これから先は男女は自由に変われるぞ。多分だけどな。」
「はぁ?どういう意味?」
突拍子もないことを言い出す我が相棒に変な顔で聞き返す。
「いや、薬が体内に『取り込まれた』からな。お前の意思ひとつで変われるぞ。」
「へぇ~。そんなものなんだ。でも、あの苦痛だろ?もういやだぞ・・・。」
と渋い顔で言うと。
「あぁ、多分これからはそんなことはないと思う。体に耐性ができてるはずだから。さらさらっと変われるはずだ。」
「あっそう。そら便利でいいや。」
と気のない返事をして部屋に戻っていった。
「ぅお~い。」
「ん?」
風凛だった。
「今日はありがとう!また明日も教えてね~。」
と今日作った短剣を持って自室に入っていった。
「・・・寝よう。」

~後書き会話~
貴輝「ふぅ・・・。」
華月「今回俺の名前が急に華月になったな。」
貴輝「まぁ、澄夜がもう一人現れたし。」
紅月「・・・私ですか?」
貴輝「そうでーす。」
風凛「今回私の出番少なかった。」
貴輝「役柄的に今回は動かしづらかったんだ。まぁ、ちゃんと短剣作ってたじゃないか。」
風凛「作ってる過程は書いてくれないんだ。」
貴輝「・・・ま、また今度な、今度。」
華月「何あせってるんだか・・・。」
名美「私のお色気シーンは!?」
貴輝「また突拍子もない・・・。そんなものが欲しいの?」
名美「私ってドラ○もんで言うところのしず○ちゃん的な存在なんじゃないの?」
貴輝「まったく持って違う。お前もヒロインの一人だがお色気担当ではない!」
華月「んじゃほかに誰かいるのか?」
貴輝「・・・・・・・・・・・。いないねぇ。」
華月「まぁ、この物語にお色気はいらないだろう。」
貴輝「ってか、変な会話になったなぁ・・・。」
華月「誰のせいだろうね?」
貴輝「・・・なぜ拙者をみる?」
華月「いや、別に・・・。さて、俺はもう寝るかな。」
紅月「それでは私も・・・。」
風凛「皆寝るみたいだからあたしもー。」
わいわい・・・。
しーーーん。
名美「二人っき・・・!」
貴輝「はーーーーーい!!終わり終わり!お前今日は何なんだ!?どうしてそんなことばっかり言うの!?」
名美「それは・・・貴輝君のことが好きだからです!」
貴輝「・・・・・・目が笑ってるぞ?」
名美「あはっ♪ドキッとした?ドキッとした?」
貴輝「あーあー、はいはい、擬人化名美たんにドキッとしたましたとも。ええ。」
名美「なにその擬人化って・・・。」
貴輝「人じゃないし。・・・っと、何か長くなったな・・・。それでわ、皆さん!また次回!お会いしましょうー!!!」
名美「今日一緒に寝よ!?」
貴輝「いい加減黙れ!?」

To Be Continued...

―Sky―【SITS.Story.】 第参話~女!?~

この物語は全てフィクションです。(念のため)

Skyの世界のパラレルワールドであるもう一つの世界でのお話・・・。

―Sky―【SITS.Story.】 第参話~女!?~

あの事件の翌日。
「ふぁ~・・・。」
あくびをしながら貴輝が起きてくると
「おはよう!」
何故か元気に挨拶をしながら笑顔で近づいてくる澄夜。
「それ以上寄るな!」
警戒して叫ぶ貴輝。
「そう警戒するなって。」
相変わらず笑顔で近づいてくる澄夜は右手を後ろにまわしている。
「その右手の物を見せてみろ・・・。」
そういうと澄夜はすっと右手に持っている物を見せてくれた。
「・・・注射器!?」
しかもなにやらピンク色の液体が入っている・・・!?!?!?
身の危険を感じ身構えるが
「隙あり!」
後ろから羽交い絞めにされる。
「な、名美!?何してンのお前!?」
「お手伝い!」
元気よく言われる。
しかしこうなるとドウヤッテ逃げようか?
最悪振りほどいて逃げるも良しなんだが・・・。
と考えているうちにもすたすたとこちらに近づいてくる悪鬼。
「寄るなー!!!」
叫ぶが彼の耳には届いてないもよう。
そのまま近づいてきて、
「お注射でーす。」
「させるかー!!」
手をぶんぶんと振って抵抗する。
「頭に注射打つぞ?」
額に青筋を立てて脅迫してくる悪鬼は笑顔だった。
「それはもっと勘弁。」
とりあえず暴れるのをやめて思い切り蹴ろうとする。
「ふっ。その程度の攻撃が俺に当たると思っているのか!」
どこの悪役の台詞だと思いながら警戒する。
(どうやって逃げるかな・・・。ってか、朝っぱらからなんでこんな目に・・・。)
悲しみながら思考すること三秒。
振り払うことに決定。
即実行と思って腕に力を込めるが
「解けない・・・!?お前どんな腕力しとるんだ!?」
名美の拘束から逃れられなかった。
「ふっふっふ・・・。」
しかも質問には答えず不敵な笑いだけが返される。
「ふふふふふふ・・・・・・・・。」
前方からは悪鬼が近づいてくる。
「ぜ、絶体絶命!?」
そのあと腕に謎の液体を打ち込まれ開放される。
「何を打ったー!?」
「大丈夫だ。人型の女になる薬だ。足の生える薬を作ろうと思ったけどこっちのほうが先にできたからな。お前で実験だ。」
・・・ナンダって?
「人型の・・・『女』になる薬?」
「可愛くなったりしてね!」
名美がなにやらほざいているが耳に入らない。
・・・女!?
拙者が女になる!?
「ちょっと待て・・・ぐっ!?」
「お、変化が始まったか。」
頭が割れるように痛い。
体中の筋肉に力が入らない。
そのまま床に倒れ付す。
「ぐっ・・・かはっ・・・!」
体が溶けるかのようにしゅうしゅう音を出し、煙を出している。
そして体が芯のほうから熱くなってくる。
血を吐きそうなその熱の苦しみに耐えながら訊いてみる。
「・・・なんで、こんな・・物を・・・・・くっ!」
骨が軋む。
体が縮むような感覚。
・・・いや、本当に縮んでるかもしれない。
「がんばれ!それひっひっふー、ひっひっふー。」
拙者は妊婦か!?
とつっこみたいがいかんせん体が言うことを利いてくれない。
視界が霞んでいき、最後に死を覚悟した。
そして、そのまま意識は闇に落ちていった・・・。

―二時間後―
「ん~・・・。」
・・・ん?
「あーあー。」
「お、起きたか。・・・で、何やってるんだ?」
自分の声を確かめた後澄夜に声をかけられたが聞こえなかった。
「声高くなってるー!?!?!?」
「当たり前だ女になったんだから。」
さらりと何かほざきやがる相棒。
「おいおいおいおいおいおい!マジデカ!?」
「マジでだ!ちなみに実験の結果が分かったから紅月にはもう飲ましてある。」
「飲み薬もあるのかよ!」
と突っ込んでおく。
とりあえずその紅月さんの姿は何処に?
と思って見回してみるもコノ部屋にはいないようだ。
「ってか、ココ何処?」
フラスコやらなんやらと研究器具が一杯並んでいる。
「俺の部屋だ。」
「・・・こんなんじゃなかっただろ?」
もっと普通の部屋だったと思うが・・・。
よーく見てみる。
吸血鬼の血が流れているから暗いところでも目は利く。
「・・・やっぱりお前の部屋じゃないだろ。」
「いやいや、俺の研究室だって。」
研究室?
そんなものコノ家にあったか?
頭の中の記憶の引き出しをあらいざらい調べてみる。
「そんなもの無かったはずだけど・・・?」
自分の記憶の結果を疑問として口に出すと
「俺が後から増設した。」
と、拙者の相棒はそうのたまった。
「勝手に何作ってんだこら!ドレダケ苦労してたてたか知ってるのか!?」
なにせコノ家は設計は澄夜がやったが実際に建てたのは拙者だ。
といっても近隣の皆様に手伝ってもらってやっと建った家だが。
「ふっふっふ。ま、良いじゃないか。お前だって工場を作ってるんだし。」
「それは最初から計画にあっただろ!」
拙者は自分の刀や色々な物理的な武器を作る工場を持っている。
・・・その工場も最近はあまり使ってない。
「まぁまぁ、店先でやられるよりよっぽどましだろ?」
「当たり前だ!」
と怒鳴ってみる。
「そんな可愛い声ですごまれてもなぁ・・・。」
笑いをこらえているかのような表情でそういう相棒。
く・・・屈辱だ!
「そうそう。もうすぐガキどもが来るそうだ。」
「中学生だっけ?拙者はいないということで話を進めてくれると嬉しいが?」
そう提案するも
「偽名使ってでも出ろ。コノクソヤロウ。」
どっちがクソヤロウだ!
と思うが言うとぼこられるので黙っておく。
「んじゃ、『六星 貴輝』で。」
「下の名前は変えないのか?」
相棒が聞いてくる。
「別に女でききって名前いても問題なかろう?」
そう返す。
「まずはその喋り方を何とかしろ。」
「唐突に話し飛んだな。」
とは言えさすがにコノ喋り方はまずいか?
少し考えて。
「別に大丈夫だろ?」
そう結論に達する。
「一人称だけでも変えろ。」
あぁ、なるほど。
と思って再び思案。
・・・・・。
「どんな一人称が良いと思う?」
「名前で言ってみるとかどうだ?」
想像する。
「絶対に嫌だ!」
「んじゃ、無難に『私』で良いんじゃないか?」
と、まっとうな答えが返ってくる。
「やっぱり?ま、そうするかな・・・。」
そう言うたら
「華月さんお客さん来ましたよ。」
紅月さんが呼びに来た。
「お。本当に足できてる。」
そんなことを口に出すと
「おいおい。誰が犠牲になってあの薬作ったと思ってるんだ?俺だぞ俺。」
「いっぺんといわず何べんでも死んでくれ。」
人の犠牲を自分の物にするな。
心の中でそう呟いて澄夜と紅月の後についていく。


―仕事場(受付)―
正面玄関のあるここは受付である。
ちなみにさっき洗面所で鏡を見てきたら髪の毛は銀色の長髪、肌はすべすべ、鏡を見なくても分かるけど胸も出ていた。
そんでもって今目の前にはガキがうじゃうじゃと・・・。
中一のガキどもが仕事場で騒いでいる。
しかも狭いためかぎゅうぎゅうづめだ。
外でやれば良いのに・・・。
「皆ー。こちらがここで働いている人たちだよー!」
教師らしい一人の女性が子供達相手に声をかけている。
挨拶を済ませると演説をしてくれと頼まれる。
「がんばれ!」
「貴様がやれ!」
殴ろうとするが避けられる。
最近澄夜の俊敏性がとても上がってきているようだ。
一通りお決まりの挨拶をとてもやる気なさそうに澄夜がやり終えたあと自己紹介をすることになった。
自己紹介・・・って偽名の方を名のりゃ良いんだよな?
と考えていると
「ぁー。澄夜華月、年齢は16歳です。」
嘘ばっかし。
と思うが外見上そうなので何も言わない。
次は拙者の番か。
「せ、私は六星貴輝、年は・・・秘密ってことで。」
本当のことを言っても信じてもらえそうになかったのでそういった。
「あれが貴輝!?」
「聞いてたのと全然違うな・・・。」
「男の人じゃなかったの?」
色々と聞こえるが全部正しい。
「はーい静かに。」
教師が言うがあまり静かにならない。
ちなみに次は名美。
「うるさいよ?君たち。」
静かで低く通る声でそういうと全員黙った。
女って怖いなぁ・・・。
と今現在は女の身である自分が考える。
「私は麗空名美、年は・・・忘れた!」
「麗空?そんな苗字になったの?」
素直に訊くと。
「悪い?」
にっこりと微笑みかけられる。
「いえ、全然悪くアリマセン。」
と返答。
で、次は紅月さん。
「私は・・・」
苗字をどうしようか迷っている様子。
別に言わなくっても良いんじゃなかろうか?
と思うが面白そうなので黙っておく。
「私は・・・澄夜紅月です。年は成長が止まってから数えてません。」
成長止まってから数えてないって、あんた一体いくつ?
ってか、結局苗字は澄夜ですか?
いろういろと誤解を生みそうですよ?
と正直なところは色々訊きたいが年齢不詳者や謎が多い人物が多いので訊かないでおく。
最後は風凛さん。
「私は朱猫(しゅねこ)風凛。年は16だよー。」
朱猫・・・。
昨日苗字って何と会議の後聞かれたので教えたらなにやら考え込んでいたのはそれか・・・。
種族の名前をそのまま持ってきたか。
やるな。
とか考えているうちに質問タイムへ。
「貴輝さんって男なんじゃないんですかー?」
率直な質問がきた。
「えーと、あっちの貴輝君はちょっとお仕事で出かけてて今いないんだ。」
と答える。
隣で笑いをこらえてる奴は後で切り殺すと心に誓う。
そのごさまざまな問答を繰り返して実習へ。
「実習って何やるの?」
隣の相棒に訊いてみる。
「俺は魔術指南と薬の調合の仕方。お前は武術指南と鍛冶の仕方だ。」
うげぇー。
と思って嫌だといったら殴られた。
「お前には名美もつくらしい。風凛はどっちにつくかちゃんと訊いてないからいたりいなかったりするかもしれん。」
「へいへいわかりましたよ。」
とりあえず武術指南はなにを教えてやろうと考える。
「そういえば何処で武術指南はやるの?」
「場所は一緒だ。ついて来い。」
ついていく。

―裏庭の川原―
このSITSが建ってる場所はコノ村の中を流れるこの島で一番大きい川のほとりだ。
裏庭は少し場所をとってあるので武術指南や魔術指南には最適かも知れない。
というかココでよく武術訓練や魔術訓練をしているんだからここになったんだろう。
・・・で、武術指南には男16名、女4名と二十名ほど来た。
「・・・驚いた。女が四人も来るとは。」
ってかこのクラスは男女何人ずついるのだろうか?
男16名?で、向こうにいる男は4名。女は・・・15名か。
合計で20名19名の39名のクラスか。
とにもかくにも武術指南で何やるかはさっき考えておいた。
やっぱり刀(剣)術でしょ。
と思ってそこら辺に生えてる木からてきとーに木刀もどきを作らすところからはじめる。
あらかた形は整えてある状態で渡し、各々好きな形に削らせるという物だ。
「先は尖らせないよーにねー。危ないからー。」
と注意してほうっとく。
魔術指南の方では核石を一つずつ渡している。
どこにあんなにあったんだ?
できるまで少なくとも10分くらいかかるだろうと思って魔術指南の方を眺めていると。
「エクスプロージョン!」
どごーん!
!?!?!?
何教えてんだあいつ!?
「「「「「エクスプロージョン!」」」」」
ガキどもも続いて言う。
ポン!ポンポン!
とても小規模な爆発があちらこちらで起きる。
・・・大丈夫そうだ。放っとこう。

―約10分後―
全員できたようだな。
「よし。それじゃぁ、武術指南始めるぞー。まず自分の得物を良く見ろ。ちゃんと刃が付いているな?そちら側でしか攻撃をしても大して手傷を負わせられない。まぁ、常識だな。そんでもって槍状にした奴もいるな?これは突くことに特化した武器だが、結構扱いが難しい。相手を払ってもよし。突いても良し。だがその分端っこのほうを持たないといけないので結構な力が要る。それに刃の部分があまり大きくないので切ることはまず無理だ。だから剣や刀より余計に力が要るんだな。で、三名ほど二つに切って双剣にしたやつがいるが・・・これは攻撃範囲が短い。その分攻撃速度がますといった感じか。突くにも斬るにも良いが攻撃範囲が短いことを肝に銘じておけ!他は・・・あぁ、一人弓刀・・・スワローという名前の武器と同じ形にした奴がいるな。弓刀というのは刀が二本柄の部分で繋がってるような物だ。これは攻撃範囲と耐久度を犠牲にして攻撃速度を極端に上げる物だ。縦に回しているだけでもかなりの速さで攻撃ができる。その代わり槍以上に扱いが難しいから気をつけろ。・・・各々の武器の特性はそんなところか?ではこれから二人一組を作ってちょっとした実践練習をしてみろ。」
一気に喋ったから少し疲れたな。
目の前ではぞろぞろと相手を探すガキども。
「まぁ、中学生程度なら別に大丈夫か。」
そうぼやいていると、
「はい。お茶。」
「ん。すまんな。」
名美がお茶を持ってきてくれた。
「すいません!」
ん?
と振り向くと。
「勝負してください!」
一人の少年が立っていた。
「でもなぁ、偶数人いるし・・・。よし、もう一人連れて来い。そうしたら戦ってやる。」
「はい!」
といってもう一人探しに行く。
あいつは双剣か。
「元気なって言うかきびきびした子だねー。」
名美が感心したように言う。
「うん。ああいう奴ばっかりだと良いんだがなぁ・・・。」
しみじみ思った。
で、少ししたらそいつが一人の少年を連れて帰ってきた。
「勝負です!」
「よし、ちゃんとつれてきたな。なら勝負を受けよう。」
「怪我させないようにね。」
名美がそう忠告して離れる。
「ふむ・・・。ハンデは?」
「大丈夫。要りません。」
そういって少年が構える。
ちなみに双剣の少年が連れてきたのはたった一人の弓刀使いだった。
両方とも逆手に構えてるか。
「ま、ハンデは要らないといわれてもな・・・。怪我はさせれないし。・・・そうだ。少し待ってろ。」
そう言って店の中に一旦戻る。

目当ての物を持ってまた帰ってくる。
「これなら怪我はしないだろう。」
その手に持っている物はスポンジ棒。
これで怪我したらある意味驚く。
「そうだね。攻撃が一回でも当たったらそいつは行動不能ということで。皆ルールは勝手に作ってやってるらしいし。あ、当たったらといってもかすっただけなら無しな。・・・良いか?」
「「はい!」」
二人が声をそろえて言う。
「では、このコインが地面についたら開始だ。」
といってコインを指で弾く。
くるくると回転しながら上昇していき。
空中で一瞬だけ静止。
そして今度は落下し始める。
そして・・・
キン―――。
コインが地面に触れると同時に双剣が走り出す。
――反射神経は中々か・・・。
一瞬遅れて弓刀も走ってくる。
――だが、甘い。
双剣の攻撃を刀で弾こうとして、
後方に飛んだ。
――危なかった・・・。今スポンジ棒じゃん。攻撃は受けられないと。攻撃をかわして斬りかかるか。
二人の攻撃を後ろに飛びのきながら避けつつそう考え
――・・・今!
紙一重で双剣の攻撃をかわし懐に入り胴を打ち込む。
後ろから来ていた弓刀の攻撃は身を回転させて弓刀の背後に回りこみつつ回避。
後ろに回り込んだらその遠心力をそのままスポンジ棒に乗せて叩き切る!
バシッ!バシッ!
とほぼ二連続で両者を斬り伏せる。
「勝ちっ♪」

―二時間後―
あの後も何人か挑んできた。
最後のほうは模擬戦をせずに拙者と誰かという組み合わせの戦闘を全員観戦するものとなっていた。
ちなみに今は昼休憩。
拙者たちもなにやら風凛が作ったらしい昼ごはんをご馳走になっていた。
「何回か危険な場面があったな・・・。やっぱり女の体だからか?」
と考える。
「そうなんじゃないか?狼の獣人の女性は皆非力だって言うし。狩は男の役目で女は普通の人間と大差ないんだろ?」
相棒がそう聞いてくる。
「そうなんだよなぁ。まぁ、私の場合は吸血鬼の血が流れてるからそんな悲観したもんじゃないけどね。」
「ぷっ。」
相棒が笑いがこらえられないといった感じでふきだす。
「何がおかしい?」
「私ってお前。今は別に良いじゃないか。」
笑いながら答える澄夜。
「まぁ、そうだけど・・・。」
考え考え喋る。
ま、良いか。
と開き直って準備をしに行く。
午後は鍛冶の実習らしい。
簡単な鍛冶道具は裏に出してあるらしいからあとは鉄芯を持っていくだけか。
拙者はちゃんとした鍛冶師じゃないから剣や刀の芯をなんていうか知らない。
だから鉄芯と拙者は呼んでいる。
芯が強ければ打った刀も強くなる。
鉄芯をどの程度がんじょうに作れるかが強い武器を作れるかに繋がるのだ。
裏に鉄芯の材料26個を持って出る。
といっても何回か往復したが・・・。
予備を5個だけ持ってきた。
裏庭には21個の簡単な鍛冶道具が置いてある。
いつの間にそんなものを用意したのか?
というか終わったあとずっと一緒にいたのにドウヤッテ出しておいたのか?
後で聞いてみようと思い多分教えてくれないだろうなぁ。と結論を出す。
いつもは重くも何とも無い鉄芯が今日はやけに重く感じたので三つずつ運んでいく。
意外と時間がかかりなおかつ結構汗をかいた。
女って不便だなぁ・・・。などと思いつつ一服していると。
「あの~・・・。」
「ん?」
声をかけられ振り向くと一人の女子がいた。
「何用だ?」
といつもの調子で返してしまいしまった!と思っていると
「どうやったら強くなれますか?」
と質問された。
気にしてないみたいだ。
「強く・・・ねぇ。基本的に女が強くなる必要は無いんだけどなぁ。私の種族もそういう風習が会ったために女性は結構非力だし。」
「・・・種族?」
・・・やらかした!
拙者たちはなるべく『人間として』暮らしている。
種族の事を話してしまったりはしてはならないと今日まで警戒して暮らしていたのに!
どうしようか考えあぐねていると、
「種族っていうのはな、俺達が住んでいたところの民族のことだ。」
向こうからやってきた澄夜がフォローしてくれた。
「(ナイス!)」
少女に気づかれないように口元だけを動かして伝える。
「(バーカ。)」
罵倒された。
拙者たちはこういうときや色々と使えるので読唇術を学んでいる。
といっても今は拙者は澄夜に対して、澄夜は拙者に対してしか読唇はできない。
色んな人に対して読唇を試みるのが一番手っ取り早く読唇術を極めることができるのだが、この島には人が少ないしあまり読唇をする必要が無いためあまり成長はしていない。
「へぇ~・・・。」
と少女が感心(?)している。
「まぁ、そういうことだ。女が強くなろうとするのはあまり賢明とはいえない判断であるんだな。やっぱり男の・・男って言うのは強い女が好みって言うやつあまりいないしね。むしろ精神面を強くしたほうが良いよ。」
一瞬自分を男だと言いそうになり慌てて訂正する。
早く解毒(?)剤作れ!
と心の中で相棒に文句を言っておく。
「精神面を強くって言うのはどうすれば?」
普通に考えれば分からないか・・・。
と思いこちらも考える。
精神的に強くなるのは中々簡単なものではない。
一番手っ取り早く、かつ一番鍛えられるのは一度『堕ちて』みる事だ。
といってもそれは拙者の持論であって他の人に言わせると違うのかも知れない。
それにこの方法はとてもハイリスク・ハイリターンなのだ。
堕ちてしまってからまた同じ場所まで、もしくはさらに上に昇れなければならないのだ。
普通の人間には土台無理な話なのは間違いない。
拙者は精神修行と称して一ヶ月間何も無く暗い部屋に閉じ込められたことがあった。
あの時は本当に気が狂うかと思ったのを良く覚えている。
拙者が考えているのをどうとったのか少女は
「・・・私では無理なんでしょうか?」
と訊いてきた。
別にそういうわけではないのだが、突き詰めて言っていけばそうなのかも知れない。
「ん~・・・。あんたがどういう人間かによるかな?」
とテキトーに言っておく。
「私が、どういう人間か・・・か。」
何か満足したように笑顔を浮かべて
「ありがとうございました。六星さんも頑張ってくださいね。」
といって去っていった。
「・・・本当に女ってのは分からんなぁ・・・。」
とぼやいていると。
「そう?」
といつの間に背後に立っていたのか、名美がそこにいた。
「・・・いつの間に?」
「テレポート使ったの!澄夜君に教えてもらったんだ。」
と笑顔で答える名美。
「拙者には教えてくれなかったくせに・・・。」
少し腹が立つ。
「で、午後は何を作らせるの?」
「ん?やっぱり刀とかかなぁ・・・。でも危険だよなぁ。簡単に作れるような物じゃないし。・・・どうしようか?」
名美に訊いても仕方ないのだが一応訊いて見る。
「ん~・・・。私としては危険じゃなくて面白い物を作ってほしいなぁ。そんな物無い?」
と訊いてくる。
「ん~・・・。危険じゃなくて面白い物ねぇ・・・。・・・・・・・・そんな物心当たり無いがなぁ・・・。」
「やっぱり~?ん~・・・。」
二人で悩み始める。
「何悩んでるだ?」
悪鬼が現れた。
「露骨に嫌そうな顔をするな。」
「無理だな。」
相棒でもあるそいつにそういって無視しようとする。
「で、何考えてたんだ?」
「元に戻る方法とこの後何作らせようかを考えてたんだ。」
それだけ言って考えに戻る。
「元に戻る方法は別にあるが、この後ねぇ・・・。」
「何?元に戻る方法はあるのか!?」
驚きと共に訊く。
「あるぞ。ようは人型の男になれば良いんだからそういう薬を飲ませれば良いだけの話しだし。」
さらりと言う澄夜。
「出せ。」
それに対して急かすように言う。
「一日に二回もあんな苦しみを味わったらいくらお前でも結構体がもたないと思うが?明日にしたらどうだ?」
「む・・・。」
一理ある。
しかし一刻も早く戻りたいこちらとしてはあまり構ってられない・・・。
「まぁ、それは後でも良いとして。とりあえずこの後のことを考えろ。この後作らせる物なぁ・・・。刀は?」
「一応そのつもりで鉄芯持ってきたけどやっぱり危険だしなぁ。刃物作らせるわけにはいかんし、第一誰も完成させられないだろ?」
そういうと無言で考えていた名美が
「じゃぁさ、ナイフみたいなの作らせたら?」
「ナイフか・・・。でもそれも難しいぞ?」
刃物は基本的に作るのが非常に難しい。
「さて、どうするかな・・・。」

―あとがき会話―
貴輝「眠い!」
澄夜「そうか。」
貴輝「今回は返し方が普通だ!?」
名美「別に驚くことではないと思うけど・・・?」
風凛「私もう寝ても良い?」
紅月「私も良いですか?」
貴輝「んじゃぁ女性陣はもうご就寝ですか?」
名美「私は別に大丈夫!」
貴輝「あっそう。じゃ、二人は寝てきても良いよ。もう夜遅いし。(現在午前2:55)」
澄夜「じゃ、俺も。」
貴輝「お前は駄目。」
澄夜「けち。」
貴輝「けちだから駄目。」
名美「うわ。開き直った。」
貴輝「ぇ~。とりあえず。次回予告はしたとしても全く意味を成さないと気づいたので、」
澄夜「遅っ!」
貴輝「次回予告はなしにします!」
名美「じゃぁ、何やるの?」
貴輝「豆知識とか?」
名美「すぐにネタが尽きると思います。」
貴輝「そこはつっこんじゃ駄目だよ嬢ちゃん。」
澄夜「黙れオヤジ。」
貴輝「ま、とりあえずはテキトーに思いついたことをやろうかな?とか思ってます。」
澄夜「何やるか決めてからやれ。」
貴輝「んじゃ、キャラクター達で雑談しよう。」
名美「ようは何もやらないと?」
貴輝「そういうことです。」
澄夜「いよいよこのあとがき会話が意味をなくしてきたぞ!」
貴輝「うるさいよ!まぁ、何はともかく。今回はこの辺で。」
澄夜「さようなら~。歯ぁ磨けよう~。」
名美「ばいば~い。また今度ねぇ~。」
貴輝「何か約一名古臭いこといってるけどさようなら~。次回を楽しみに待っていてください!」

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―Sky―【A.Story.】 第二話~脱出~

この物語は全てフィクションです。(念のため)

Skyの世界のパラレルワールドであるもう一つの世界でのお話・・・。

―Sky―【A.Story.】 第二話~脱出~

あの後帰ってきた四人は材料がないはずの食事を取った。
無論作ったのは澄夜である。
「・・・そういえばこの家に食費という言葉が出たためしがないな。どっから材料調達してるの?」
「ふふふ・・・。」
不気味に笑うだけで答えてくれなかった。

―応接間―
「汚~い。」
名美が文句を言う。
「ま、ココ使ってないし。埃もたまるわなぁ。」
言葉通り埃だらけの部屋。
一応、応接間と呼ばれていた場所だ。
「最近はここに通してお話、とかないからね。お客さん大体立ち話で用件済んじゃうから。」
「そうだな。たまにはココに通して話し聞くか?」
澄夜に聞かれる。
「いらん。」
簡潔に答える。
「だろうな。」
予測していたらしい。そう返答が帰ってきた。
「ここ私の部屋にして良い!?」
「駄目。」
名美に聞かれるも即答する。
「ぶー。けちっ!」
「部屋はちゃんと用意してある!」
見栄を張ってみる。
「嘘つくんじゃない。」
相棒につっこまれた。
「でも、一応客間に住まわせば良いんじゃないの?」
「用意したとは言わんがな。」
相棒は相も変わらず手厳しかった。

――五分後。
部屋割りが決定した。
名美は貴輝の隣の部屋。
紅月は澄夜の隣。
ちなみに澄夜と貴輝の部屋は向かい合わせなので一箇所に固まっていることになる。
「トイレは一番奥の扉。間違っても男のほうに入るなよ。」
「風呂場は便所の手前のすりガラス。入る時は鍵をかけるように。一応女湯と男湯に分かれているが・・・。いかんせん女湯は使う人が居なかったから荒れ放題だ。掃除は・・・、貴様がやれ。」
何故か指を指される。
「・・・拙者?」
「肉体労働のエキスパートだろう?」
疑問を疑問で返される。
「マジデスカ?」
「片言で言っても駄目。」
そう返されるが
「ワタシニポンゴワカリマセーン!」
懲りずに片言の日本語を使ってみる。
「いっぺん死ぬか?」
「ごめんなさい。」
即挫折。
芸人への道のりは遠い・・・。
とかくだらないことを考えていると、
「だったら私が掃除しようかな・・・。」
「それじゃあ私も手伝いますよ。」
女性陣が進み出た。
「尋常じゃないくらい汚いよ?大丈夫?」
「ダッタラお前がやれ。」
相棒は相変わらず手厳しい。
というよりも他力本願すぎ。
「お前がやるという考えは最初から皆無ナンデスカ?」
後半片言で訊いてみる。
「ない。」
簡潔だった。
「澄夜さんもやりましょうよ。」
「そうだよ~。皆でやったほうが早く片付くし~。」
女性陣に迫られる。
「ぅ・・・分かった。」
いくらなんでも女性陣の誘い(?)を断ることはできないのか澄夜は渋々ながら承諾した。
・・・ように思ったが最初に小さくうめいたような気がするのは気のせいなんだろうか?

―二十分後―
掃除道具を探し出すのに時間を浪費したため大分遅れて大掃除スタート。
「お掃除スタート~!!!」
「スタートー!」
女性陣は意外にも楽しそうだった。
紅月さんもなにやら名美に影響されているのかハイテンション。
「・・・。」
「・・・はぁ~。」
無論男性陣はやる気なし。
片方なんかはため息までついている。
「とっとと終わらすか・・・。」
「だな。」
やる気がないのとあるのと二人ずつの変な組み合わせでお掃除スタート。

―さらに一時間後―
「全然綺麗にならない・・・。」
最初よりかはまだましになったがまだ部屋と呼ぶには程遠い存在となっている居間。
「これ、いつまでかかるんだろう・・・。」
弱音を吐く。
「俺はもう寝たいぞ・・・。」
「同感。」
相変わらずやる気ない二人組。
「まじめにやれー!」
バキッ!
ぽか。
何故か拙者だけ思い切り力を込めたグーパンチだった。
・・・普通に痛い。
「何故拙者だけー!?!?!?」
絶叫してみる。
「五月蝿い。」
バキッ!
今度は相棒に殴られる。
踏んだりけったりだった。

―お掃除終了[開始から五時間後]―
「ぐふっ・・・!」
「ふぅ・・・。」
約一名満身創痍でお掃除終了。
その一名が自分だというのがなんとも悲しい。
「やっと終わった~。」
「疲れました~・・・。」
女性陣は元気なモノである。
いや、正確には名美だけか。
「今日は私が料理作るよ~。」
名美がそういったのでお言葉に甘えることに。

―食堂(キッチン)―
「どうぞ召し上がれー!」
意外に豪勢な料理だった。
しかし、
「ぅっ・・・。」
とても辛そうだった。
「あの~・・・。もしかして辛い?」
「当たり前よー!」
何故当たり前なのか訊く気になれない。
「辛いの苦手なんですけどー。」
ささやかな主張。
「・・・がんばれっ!」
ぐっと右手の親指を立ててこっちに向けてきた。
・・・その指折ったろかーーー!!!!
とも思ったが止めておいた。
その日の夕食は実に小食だった。
そして、
「おやすみ~。」
「おやすみなさい。」
女性陣は早々に寝るらしい。
「おやすみなさいませー。」
去ろうとするも相棒に手を掴まれる。
「お、襲われる!?」
「ファイアウォール!」
炎に包まれる。
「ぐおぉぉぉおおぉおおおおおおおぉ!!!!」
絶叫する。
「何するの!?」
「くだらないことを言うからだ。」
・・・だからって焼くな。
そう思いつつ聞いてみる。
「何用だ!?」
「いちいち叫ぶな。とりえず今電話が入ってな。」
嫌な予感。
「・・・で?」
澄夜は笑顔で
「三日後中学のガキどもが来るらしい。」
と、言い放った。
「急すぎやしないか?」
訊いてみる。
「あ~・・・。一ヶ月前から決まってたんだが忘れててな。(笑)」
「笑ってんじゃねー!」
また絶叫。
「うるさーい!!」
ズガシュっ!
後頭部に拳を打ち込まれる。
ザスッ!
そしてよろめいたところに手刀が。
「痛っ!ぐはっ!」
そのまま昏倒する。
「静かにしときなさいよ!」
憤慨したような名美の声が途切れ行く意識の最後に聞こえた。

―???―
「・・・何故拙者はこんなところで寝てるんだ?」
そこは倉庫だった。
「いつつ・・・。」
起き上がりながら後頭部をさする。
ぐぅぅぅぅぅぅ・・・。
「・・・腹が、減った・・・・・・・。・・・・ところで今何月何日の何時何分だ?」
長い間眠っていたらしく時間の感覚がほとんどない。
「腹時計もあてにならんだろうし・・・。」
思案していると。
「きーきー。」
ねずみが目の前を通っていった。
「・・・何故ねずみが。」
確か澄夜が何かの結界を張ったとかでねずみとか害虫とかは入ってこないはずだ。
「・・・・・・・・。」
嫌な予感がして扉に近づく。
ガチャガチャ
案の定扉は開かない。
「・・・これを食えってか?」
振り向いてねずみの顔を見た。
「きー。」
目が合ってねずみが一声鳴く。
「・・・それはないだろう。とりあえず扉をぶち破るか。」
ズガン!
思い切り蹴ったが壊れない。
「ならば!」
獣人の力を使って思い切り蹴ってみる。
ドゴンッ!!!
扉は音を出すだけで曲がりもしなかった。
「あれー?」
倉庫の中を見回してみる。
「・・・そういややけに広い。もしかして倉庫じゃない?物もないしなぁ・・・。どっかの廃屋にでも放り込まれたか?」
ぶつくさ言いながら歩いて回ってみる。
やはりどこかの荒廃した屋敷のようだ。
中々広く部屋の数も半端じゃない。
「・・・ん?」
その部屋のうちの一つに明かりがともった部屋があった。
そ~っと近づいていく。
ココらへんは狼の獣人でもあり仕事で潜入任務などをやったこともあって手馴れている。
(え~・・・っと。武器は・・・。)
懐を探ってみる。
(ん?)
固い感触があってそれを取り出してみる。
「なっ・・・!」
思わず声が出てしまう。
懐から出てきたのはフォークとナイフだけだった。
(もっとましな物入れといてくれてもバチ当たらんぞ・・・。)
フォークは銀でできているらしい。
なかなか綺麗だった。
ナイフは刀のような刃が片側にしかついていない物で、柄は片手で持てる分しかない。
柄の部分に何かが書いてある。
(黒・・・零?)
「ってか、寒い・・・。」
今貴輝は上半身にはシャツ一枚だけ下半身はズボンもちゃんとはいているがしかし上半身の格好が格好だけに非常に寒い。
とりあえず先ほどの部屋に誰かが居てもナイフで対抗できるだろう。
自身の格好は気にせず部屋の中に音もなく入っていく。
「~♪」
誰かが鼻歌を歌っている。
鼻歌が聞こえるほうにそ~っと近づいていく。
(この向こうからか・・・。)
どうやら鼻歌は今貴輝の目の前にある扉の向こう側から聞こえてきているようだ。
(幸いまだ奴さんは気づいてないようだな。)
そう考え扉を少しだけ開けて中の様子を見る。
ココから見えるのは、二段ベッド、机、そしてその机に向かって何かをしている人物だ。
(・・・ん?人じゃ・・・ない?この匂いは・・・、そうだ猫だ。猫の獣人の匂いだ。でも・・・なんで?・・・まぁ、良い。とにかく情報を・・・。)
頭を振って考えを吹き飛ばし部屋の中に入っていく。
部屋に入ると同時にすばやく部屋の隅の暗がりに飛び込む。
そこで息を潜めて機会をうかがう。
「ん?」
相手が何かに気づいたようだ。
(気づかれた・・・!?)
そう思い少し身構える。
「あれ?閉まりきってなかったのかなぁ・・・。」
そういって扉を閉めにいく。
(ふぅ・・・。)
内心で安堵の吐息を吐きつつ相手の動きを観察する。
「ん~・・・。」
相手は扉から顔だけ出して外の様子を伺っている。
(チャンス・・・。もらった!)
音もなく相手の背後に回りこみ。
「何もないし・・・。やっぱり閉まりきってなかったんだね。」
直後振り返られる。
(くっ・・・!)
とっさに扉上の天井と壁との角に飛び張り付く。
(久々に潜入任務に就いたみたいだな・・・。っとと、長くはこの体制で保てんか・・・。)
相手がまた机のほうに向かう。
(よしっ・・・!)
ふわりと地に降り立つ。
しかし、相手は何か衣擦れの音でも感じ取ったか振り向いた。
「あ・・・。」
「げ・・・。」
両者同時に声を上げる。
(どどど、どうしよう!・・・・そういえば・・・。猫の獣人は目が悪い割には鼻も犬系の獣人ほど利かない。その代わり猫系の獣人に勝る聴力を持った種族はないんだっけか・・・。)
冷静になろうと少し混乱気味の頭でそんなことを考える。
(と、とりあえず、どうする!?)
あまり効果はなかった。
相手も硬直している。
貴輝の突然の出現にかなり驚いているのだろう。
(・・・チャンス?) 
相手の背後を取るために回り込もうと立ち上がったところ。
「・・・だれ?あなた?」
声をかけられた。
「・・・拙者か?」
当たり前のことを聞く。
(何訊いてるんだ拙者は・・・!)
少し自分が情けないと思いつつ返答を待つ。
三秒ほど後。
「君・・・。面白いね♪」
何が嬉しかったのか明るくそう言われあっけにとられる。
「・・・もっと、こう、何か、疑ったりしないの?」
我ながら馬鹿な質問だと思う。
「そう訊いただけでも十分に信用に値するよ♪」
彼女は変にご機嫌だった。
(む~・・・。女性って分からんなぁ・・・。)
そんなことを考えていると、
「君、どっから入ったの?」
と訊かれる。
「・・・さぁ?窓から投げ込まれでもしたんじゃないかと。そう拙者は推察しているが・・・。」
「投げ込まれるって・・・。」
あまり思い出したくないがとりあえず説明をする。
「ナルホドねぇ~・・・。」
「・・・そういえばお主、名は?」
今頃になって訊く。
「あぁ、そういえば自己紹介マダだったね。私は風凛。風に凛と冷えるとかの凛で風凛。風って呼んで良いよ~。で、君は?」
「貴輝だ。貴族の貴に輝くで貴輝。苗字は六方で六つの方位と書いて六方と読む。・・・そういえば風とやら、苗字は?」
再度問いかけるも何かわからないといった感じで、
「みょうじって何?」
そう訊かれた。
「・・・はいぃぃ?」
間抜けな声を出す。
「みょうじって何!?」
大きな声を出す風凛。
「・・・説明しにくいので解説は飛ばします。」
妙な言い回しで断ると、
「むー。」
膨れた。
「膨れても駄目だ。ところで、」
話題を変えようとする。
「出口はないのか?」
一番知りたかったことを聞いてみる。
「人に物を尋ねる態度じゃな~い。」
何故か文句を言われる。
「・・・報酬を渡すから教えてくれないか?」
実際のところ何も持ってないのだが・・・。
「カラシーフード食べる?」
さらりと無視して謎の食物を出される。
「・・・いらん。で、出口は?」
「私が知りたいくらいなんだけど。」
風鈴の言葉に絶句する。
「な、何だってえええぇえぇぇぇぇぇぇぇえぇぇえぇえぇぇ!?!?!?」
直後絶叫。
「うるさーい!」
怒られる。
ぐうううぅぅぅぅぅ・・・。
叫んだら腹がなった。
(そういえば腹減ってたんだっけ・・・。)
少し赤くなってそう思い。
「そ、そんなことより、出口はないのか!?本当に!?!?」
詰め寄る。
「う、うん。」
圧倒されて後ずさりする風凛。
「なら、ぶち破るか・・・。」
「え?ぶち破る?」
意味が分からないのか思案顔になる風凛。
「壁を吹き飛ばす。」
簡潔に言うと、
「あ~。多分無理だと思う。」
「・・・何故?」
少し意地悪な笑みを浮かべる貴輝。
「人間にはあんなの壊せないよ。“真紅の猫”である私でさえ無理だったんだから。」
そこで貴輝は突然笑い出した。
驚く風凛を前にひとしきり笑った後、
「拙者は人間ではない。拙者はほんの少しだけ吸血鬼の血が混じった“白銀の狼”だ。それにしても真紅の猫なんて高貴な生き物が何故このようなところに幽閉されているのだ?」
「は、白銀の狼!?」
そう叫んで風凛は貴輝の顔をまじまじと見る。
「毛色が違う。」
「今は吸血鬼の状態だからな。こっちのほうが人っぽく見えるし。これが、」
貴輝の体がざわつく。
頭髪が根元の方から徐々に色を変えていき、顔の側面にあった耳は徐々に頭頂部のほうに向かって大きくなり獣の耳になっていく。
そして目の色も変わり、
「力を解放した状態だ。」
完全な狼の獣人と化した。
その毛色は銀色に輝き目の色は左右で違う。
右が真紅で左が青色。
「これなら対外の物は破壊できるぞ。」
そういって歩き出す。
風凛はそれについていき。
「だったらこっちに来て。」
そういってある方向に向かって走り出した。
「ふむ・・・。」
そういって貴輝も小走りに追いかける。

―猫屋敷 玄関ホール―
ここは猫屋敷というらしい。
先ほど風鈴から聞き出した。
そして、
「この玄関の前の階段。上のほうが何かで塞がれてるのよ。あれ壊したらいけないかな?何かココ埋まってるみたいで。」
「埋まってる?」
貴輝が怪訝な顔をして振り返る。
「あれ見てみて。」
そういって玄関扉を指差す風凛。
そちらを見ると玄関扉が破壊されていた。
そしてそこからは地肌が見えている。
「ぅわお~。本当に埋まってるたいだね。まぁ、良い。多分地表に近いのはあそこなんだ・・・よね?」
そう訊きながら階段の上を指差す。
「多分。」
予想通りの答えを聞きつつ階段を上っていく貴輝。
その天井のような場所にはいくつもの破壊しようとした痕跡が残っていた。
「・・・ふっ。」
小さく笑い全身に力を込める。
「―――っはぁ!!!」
全身全霊の一撃。
天井のような地面のような者は吹き飛んだ。
「わわわー!!!」
下から落ちてくる瓦礫を避けながら悲鳴を上げている風鈴が居る。
「む、ちょっと足りてない。」
貴輝が言うとおり光がさしているがまだ人が通るには小さすぎる。
「もういっちょー!」
元気よく声を上げ。
ばたっ!
倒れた。
「あ、あれ?体に力が・・・。」
徐々に体が最初の状態に戻っていく。
「あれ!?どうしたの?」
風鈴がそう言いながら駆け寄ってくるのが見える。
「血が、足りない。あと、腹減った。」
風凛はあきれた顔でため息をついた。

―三十分後―
血は摂取してないが食料を摂取して再度トライ。
「今度こそココから出るぞー!」
気合を込めて殴打。
ズンッ!
吹き飛んだ。
そして、

―フィルスト ボクーンの店 倉庫―
「よっと!」
貴輝が上がってきた。
手を借りて風鈴も上がってくる。
「ふぅ・・・。」
「・・・この匂い。ボクーンの店か。まぁ、良い。行くよ。」
そういって身を低くする貴輝。
「え?何処にですか?」
「フォークか売って親友に電話をかける。」
真顔で言う貴輝に、
「でも・・・、その格好で外歩くんですか?」
「・・・あ。」
すっかり忘れていたが今上半身はシャツ一枚だったのだ。
「気にしない気にしない。好きでこんな格好してるわけじゃないんだけど、ま、なんとかなるっしょ。」
にかっと笑う貴輝。
「そういえば、ココに電話あるよな。勝手に使おー。」
すたすたと歩いていく。

―1時間後―
「で、明日のことなんだが。」
貴輝と風凛はSITS本拠地兼家にたどり着いていた。
あの後澄夜に電話して服を持ってきてもらったのだ。
変える時はボクーンの店にあった金を勝手に使って帰ってきた。
貴輝はパックのジュースのような物を飲みながら聞いている。
「・・・聞いてるか?」
相棒に訊かれ、
「先に寝かしてくれ。」
「駄目だ。・・・ところで、その血液ジュースとやら、いつも飲んでるな。」
さきほどから飲んでいるパックを指差して言う。
「輸血パックだっつーに。これでも結構高いんだぞ。ちなみに吸血鬼としては・・・まぁまぁだが普通の人にとっちゃこの上ないくらいまずいと思う。貴様もケルベロスとしての誇りとか特性とかないのか?」
聞いてみるが、
「誇りはない。特性といえば化け物犬になれるくらいか。ま、貴様のように貧血起こすぐらいならそれで良いがな。」
「「はぁ・・・。」」
同時にため息をつく。
彼らの悩みは深まっていく・・・。

豆知識―第二回―
猫屋敷
これはボクーンの店の地下にある広大な屋敷で何故か埋まっている。
ボクーンが店として使っているのはこの屋敷の三階部分から上だ。
ちなみに階段は全て土とコンクリートで固められているのでぱっと見ではワカラナイ。
貴輝が吹っ飛ばしたのは倉庫(本当は展望台)に続く階段のところで玄関はもっと広い。
実は玄関だと書いた扉はただの裏口。
あと、中庭に続く道とか色々とある。
中庭は今でも健在だがどこにあるかは分からない。

あとがき会話。
貴輝「ぐはっ!」
澄夜「いきなりなんだ。」
貴輝「今回微妙に自分がかわいそう。」
澄夜「変えれば良いだろ。」
貴輝「メンドイ。」
名美「ちゃんとやれよ。」
澄夜「そういえば今回不可解なことが一つあるんだが・・・。」
貴輝「何でしょう?」
澄夜「一体誰があそこにお前を放り込んだの?」
貴輝「それにはちょっと色々ありまして。長くなるから今回はこの辺で切り上げます。でわ次回予告。」
次回予告【かはっ!】
澄夜「よう何もないんだな。」
貴輝「何も考えてないもーん。」
紅月「嘘でも良いから書いたほうが良いと思います。」
風凛「そうだね。何も書かないで終わると目標とかなくなるよ?」
貴輝「・・・。」
次回予告!【新しい仲間を加えたSITSのメンバーに新たなる危機が到来!その危機とは職場見学だった!果たして一体どうなってしまうのかーーー!?】
貴輝「どうだ。」
澄夜「普通。」
名美「面白みがない。」
紅月「良いんじゃないんですか?」
風凛「終わり方が某テレビ番組みたい。」
貴輝「相変わらず約二名は手厳しい・・・。まぁ、良いや。(←大分慣れてきた)それでは皆さん!また次の機会に会いましょう!今度はNormal.Story.のほう書きます!多分!でわでわ~♪」
澄夜「でわーw」
名美「またねー。
紅月「またお会いしましょう。」
風凛「まったねー♪」

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―Sky―【A.Story.】 第一話~自称魔王~

この物語は全てフィクションです。(念のため)

Skyの世界のパラレルワールドであるもう一つの世界でのお話・・・。

―Sky―【A.Story.】 第一話~自称魔王~

あれから十分後・・・。
「あぁー。どうするよ?これ。」
「知らん。」
貴輝と澄夜は立ち往生していた。
「私が来る時はなんとも無かったのに・・・。」
無念そうに言う男。
「とりあえず・・・。」
「片付けますか・・・。」
今更だが、何故立ち往生しているかと言うと、
「大変なことになってるねぇ・・・。」
「そりゃぁ、普通の人間達には魔物を相手に出来んでしょう。」
「そらそうだ。」
ボークス(決まった進路を飛ぶ箱のこと)の発着場に魔物が現れて暴れているからだ。
「んじゃ、後方支援頼むね。」
「はいはい。死ぬなよ。」
「あ~い。」
軽い返事をして貴輝は走り出し、澄夜は詠唱を開始する。
「ていっ!とぁっ!」
貴輝が前線で時間を稼ぎ、
「裁きの雷よ、落ちろ!」
澄夜が魔法で蹴散らす。
その繰り返しで魔物で魔物がどんどん数が減っていく。
しかし、それに比例するかのように次々と魔物が現れる。
「キリ無いな・・・。」
「どっかで召還魔法でも使っているのか・・・?」
一向に減らない魔物の数を見て貴輝と澄夜が聞き合う。
「・・・そういえば。」
貴輝が突然何かを思い出したように言った。
「お前空間転移魔法覚えたとか言ってなかったっけ?」
「・・・そういえばそんな物覚えたなぁ。」
「忘れとったんかい!って、ぉわ!」
貴輝がつっこんでいると魔物が攻撃をしてきた。
「危ないって!っのやろ~!」
貴輝は何とか魔物の攻撃をしのいで反撃した。
「ギャーーーー!!!」
魔物はその一撃で朽ちた。
「早く門を開け!」
「はいはい。」
澄夜は生返事をして詠唱を開始する。
「我の命に従い、我らを導く門よ、―――開け!」
澄夜が言うと地面に光の渦が出来る。
「作ったぞ~。」
「結構早かったな。」
近くにいた魔物を蹴散らした貴輝が戻ってくる。
「魔法の詠唱なんてのはただの下準備だからね。意味が同じようなものなら間違ってても魔法は使えるし。」
「結構アバウトだな・・・。」
「は、早くしてくださいよ!」
二人が早く入らないのを見て男が言う。
「そうだな。行くか?」
「先に行け。」
「あ~い。」
貴輝はテキトーな返事をして光の渦の中に入っていく。
みょ~~~ん・・・。
と変な音を立てて貴輝がその中に沈んでいく。
「・・・場所、間違えたりしてねぇだろうな?」
「・・・。」
「何で無言なんだよ!」
そう言う間にも貴輝の体は沈んでいく。
「間違えてたら後で殴る!」
「出来るものならやってみろ!」
そう言われて貴輝は渦の中に沈みきった。
「・・・われわれも行きましょうか。」
「は、はい・・・。」
男は不安げに返事をして澄夜を共に渦の中に入っていった。


―????????―

「・・・。」
周りは真っ暗だった。
(どこかの地下なのかな・・・?)
いや、所々光が漏れているから何かに埋まっているといったほうが良いかもしれない。
「っのやろ~・・・。後で絶対殴る・・・。」
ぶつぶつと良いながら貴輝は全身に力を込めて、
「ていっ!」
周りの瓦礫を吹き飛ばした。
「あ゛ー。この技は気力の消費が激しいから嫌いなんだが・・・。」
そうぼやいていると頭上から、
みょ~~~ん・・・。
と言う音が聞こえ
「ん?」
貴輝が顔を上げると、
「やw」
澄夜が降って来た。
ズドン!
「~~~っ!」
貴輝は悶え苦しみ、澄夜は涼しい顔して、
「早く行くよ。」
と言い放った。
「くぬやろ~・・・。」
やっとの思いで立ち上がったところに、
ズドン!
先ほどの男が降って来た。
「あぁ~!すみません!すみません!」
「・・・・・・・・・・。」
貴輝は何か諦めたような顔をしていた。


―首都 フィルスト―

「ま、無事ついたんだから良いじゃないか。」
「拙者は全くもって無事でわないような気がしてならないんだが・・・?」
貴輝たちが出現した場所は首都フィルストの居住区の一角だった。
「で、何処に魔物たちが出てきたの?」
貴輝が文句を言うのを無視して話を聞く澄夜。
「はい。ここの居住区から南東です。」
「・・・地図は?」
「あぁ。すいません・・・。これです。」
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃┏━━━━━┳━━━━━━━━━━┓┃
┃┃     ┃          ┃┃
┃┃ 大公園 │    居住区    ┃┃
┃┃     │          ┃┃
┃┃     ┃●┏━┓●     ┃┃
┃┣━───━┻━┫㊥┣━───━━┫┃←地図
┃┃      ●┣─┫●     ┃┃
┃┃  職場町  ∥高∥ 商店街  ┃┃
┃┃ (ビジネス街)┃級┃      ┃┃
┃┃       ∥住∥      ┃┃
┃┃       ┃宅┃      ┃┃
┃┃       ∥街∥      ┃┃
┃┃     ┏─┻─┻┐     ┃┃
┃┗━━━━━┛ 船着場 ┗━━━━━┛┃
┃                  ┃
┃細い線:門   太い線:城壁    ┃
┃㊥:中央区  ●:地下道出入り口  ┃
┃       ~首都 フィルスト~ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
「さすがに広いな・・・。」
「そんなこと言ってる場合か。」
しげしげと地図を眺める二人。
「今いるのが居住区の・・・
┏━━━━━━━━━━┓
┃          ┃
│⇒☆  居住区    ┃
│          ┃
┃●┏━┓●     ┃
┗━┛ ┗━───━━┛
ここらへんです。」
「南東って言うと・・・商店街?」
「はい。商店街の中心あたりです。あそこは人の通りも多いので早くしないと・・・。」
男の顔が曇る。
「心配するな。拙者たちが絶対何とかするから。」
「そうそう、こいつがなんとかするから大丈夫ですって。」
それを聞いて男の顔に生気が少しだけ戻る。
「そうですね・・・。と、とにかく、一刻を争う事体なので早く・・・!」
「あいよ~。」
そういってすっと体勢を低くする貴輝。
「走るの?ちょっと遠いよ?」
「あれで飛ばされるぐらいなら走ったほうが良い!」
すこし怒って言う貴輝。
「まぁ、俺一人ならテレポートできるし。良いか。」
「・・・。」
「んじゃ、」
「「行くぞ!」」
二人同時に言って貴輝は走り、澄夜は詠唱を開始する。
「・・・速い・・・。」
もう貴輝の姿は見えない。
「まぁ、狼の獣人ですしね。」
ほぼ詠唱を終えた澄夜が言う。
「では、行ってきます。」
にこりと微笑んで澄夜は、
「目標地点設定。―――テレポート!」
最後にそう叫んで澄夜の体は光に包まれ、
「では、吉報をお待ちください。」
消えた。

―商店街―
「もうそろそろか・・・。」
そうつぶやいた貴輝の耳に
ズンッ!
と、重い音が聞こえてくる。
「やっぱテレポートのほうが早いか・・・。」

一方、澄夜は。
「やれやれ、こんな物があるとは・・・。」
そういう澄夜の前には何か四角くて大きなものがある。
「じゃ、壊しますか。―――神々の怒り、憤りを炎に変えて、今我の前に姿を表せ・・・。エクスプロード!」
ズンッ!!
「・・・壊れないし。硬いなぁ・・・。あいつが来るまで待つか・・・。」
ダンッ!ダンッ!
「・・・見つかったか。厄介な。」
ガタンッ!ガタンッ!バキッ!
扉をぶち破って魔物が数体入ってくる。
「ふん、貴様らのような雑魚に殺られはしないさ。・・・来い!」

戻って、貴輝は。
「うげぇ~・・・。居すぎ・・・。」
魔物がわらわらと大量に居る。
「こういうときに澄夜が居れば良いのに・・・。」
ちなみに先ほどから建物の中から笑い声と爆音が立て続けに聞こえている。
声は澄夜の物だ。
「・・・暴れてるなぁ・・・。あんま物壊すなとか言いよるくせに・・・。ま、こっちも暴れますか!」
そう言って魔物の群れに突っ込んで行く。
「炎剣!」
そう貴輝が叫ぶと剣に炎が宿る。
その炎の宿った剣で魔物をバッサバッサ斬っていく貴輝。
そしてある魔物は宙をとび、またある魔物は燃え尽き、灰となっていく。
「弱い・・・。」
実に残念そうに貴輝がつぶやく。
「剣よ・・・爆ぜよ!」
そう叫び地面に刀を突き立てる。
すると貴輝の周りの地面が突如として爆発する。
そうやって魔物を一掃すると爆音と笑い声が聞こえる建物に駆け込んでいく・・・。

そのころ澄夜は。
「ふはははははは!!!」
笑っていた。
笑いながらエクスプロードを連発している。
「弱い!―――エクスプロード!」
ズンッ!
魔法は先ほど澄夜も言っていた通り、意味さえあっていれば詠唱はなんでもよく。
熟練した魔法使いほど詠唱は短い。
中には詠唱しなくても高等魔法を使える者も居る。
ちなみに、澄夜は魔法使いの中ではそこそこ上の方のもので、直前に使った魔法を連続して使おうとする時、詠唱を必要としない。
と、言っても、一部の魔法はそのようなことは出来ないのだが・・・。
「エクスプロード!エクスプロード!」
ドカン!ズドン!
魔物たちが断末魔の叫びを上げる暇なく消し炭になって行く。
・・・どちらが悪役か分からなくなってくるほどに澄夜は乱発していた。
「ぐげぇぇぇぇ!!!」
通路の奥から魔物の叫び声と何かを切るような音が聞こえてくる。
「澄夜!」
貴輝だった。
「よう、遅かったな。―――エクスプロード。」
「お前が!早いんだ!ろ!」
喋りながら魔物を切っていく貴輝。

―三分後―
「や~っと片付いた。」
「だな。」
死屍累々と言った状況の部屋の中に二人はいた。
「で、なんでこんなものがあるの?」
「知らん。」
二人の前には先ほどの四角くて大きいものがある。
「ジェネレータ・・・ねぇ。道理で奴さんたち減らないわけだ。」
「そんなことは良いからとっとと斬れ。」
「へいへい。」
貴輝が前に進み出て腰に提げた刀を構える。
「・・・今思ったけどお前がとっとと壊せばよかったんじゃないのか?」
そう言う貴輝に
「壊せなかったからお前に言ってるんだろ。」
「さいですか。」
うなずく貴輝が刀を抜いた。
「魔の障壁よ、我を、守れ。―――バルリエル!」
澄夜の前にバリアが出来上がる。
「・・・は?」
ジェネレータを破壊した貴輝が振り向いて変な顔をする。
「どした?」
「危ないぞ。」
ぴぴぴぴぴぴ・・・・・!!!
「・・・まさか!」
ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!チュドカーン!
「・・・危なかった~・・・。もっと早く言え!ってか、拙者にも張ってくれよ!」
貴輝は澄夜の後ろに隠れて爆発をしのいでいた。
「めんどくさかったし、大丈夫だろうと思ったから。」
何が起きたかというとジェネレータが大爆発したのだ。
「全く・・・。」
ため息を吐く貴輝の顔はすすだらけ。
「・・・ぷっ。」
澄夜がこらえきれずふきだす。
「笑うな!」
「さぁ、外にいる奴ら倒そう・・・。くくっ!」
「だから笑うなって!」
言い合いをしながら外へ向かう。

―フィルスト商店街―
「・・・なんか減ってない?」
「だね。なんでだろ?」
外に出た二人は魔物の数が減っているのに驚いた。
先ほどまでの半分ほどまでに減少している。
「ジェネレータが壊れたからかな・・・?」
「さぁね。」
ガシャーン!
ガラスが割れる音がする。
「きゃーー!!」
続いて人の悲鳴。
「・・・行こう。」
「あぁ。」
二人は悲鳴が聞こえた方角へ走った。

―ボクーンの店前―
「・・・ボクーンってあの闇商人の?」
表にかかってる看板を見て貴輝がたずねる。
「・・・そんなことを俺に聞くな。」
しかし返答はそっけないものだった。
「まぁ、良いか。入ろう。」
「確かなんだな?ココから聞こえたって言うのは。」
澄夜がそう問う。
「拙者を誰だと思ってる?」
得意そうに言う貴輝。
「ただの腐れ外道。」
さらりと酷いことを言ってさっさと入っていく澄夜。
「・・・。」
それを聞いてうなだれる貴輝。
それらを密かに見つめている者がいた。
「・・・あの人は。」

―ボクーンの店 店内―
「・・・まずい。」
澄夜が店に入って開口一番にそんなことを言った。
「何が?」
意気消沈のまま店に入ってきた貴輝がたずねる。
「見つかった。」
「・・・はぁ?」
意味がわからないと言うように問い返す貴輝。
「・・・。」
しかし黙ったままの澄夜。
「どういう意味?」
再度問う貴輝。
「・・・黙れ。」
その相貌に警戒の色を宿して言う澄夜。
「・・・今日はそっけないなぁ・・・。」
軽い口調で良いつつ警戒を強める貴輝。
それらを見つめている者が、また、いた。
「・・・シッツ共、か。」
その者はモニタに付属されているマイクに向かってそう呟いた。
「ボクーンか?」
「多分ね。」
スピーカーから聞こえてきた声を聞き、貴輝が相棒に問う。
相棒の問いに適当な返事を返し通路の奥を凝視する澄夜。
「さてと、どうしたものかね。」
澄夜が不意にそんなことを呟く。
「・・・本当にね。」
それによって気づいたように貴輝も返す。
がらららぁぁぁ・・・
ガシャンッ!
火花を散らしながら滑ってきた鉄格子が盛大に火花を散らして完全に閉まる。
少し隙間もあるが多分猫でも通れないだろう。
「もげぇ。ビクともしないし。こりゃ合金だな。刀きかんわ。」
「・・・閉じ込められた、か。」
貴輝が変な声を出し、澄夜が冷静に状況を判断する。
「めんどくさいなぁ・・・。」
「確かにな。でも、そんなこと言ってる場合じゃないだろ。」
弱音を吐く相棒に叱責を与え通路を進んでいく澄夜。
「分かってるけど・・・。お前後衛のくせに先に行くなよ。」
その後を追って貴輝も通路を進む。

―ボクーンの店 ?????―
「悪趣味な・・・。」
「その意見には賛同できるな。」
二人して悪態をつくのも無理はない。
この部屋は尋常じゃないほど汚い・・・と言うよりも、
「クサイ。」
「我慢しろ。」
そう、とても匂うのだ。
それも、血の匂いが。
「人の血が大半だね。ちびっと魔物の血と・・・なんだろう?これ。」
貴輝が嗅いだことのない匂いに眉をよせる。
「お前にも嗅いだことの無い匂いがあるのか。驚きだな。」
「褒めてんのか?貶してんのか?ん?」
相棒に言われたことに問い返す。
「全面的に貶している。もしくは愚弄している。」
「酷ぇ・・・。何もそこまで言わんでもええのに。」
変な方言を使う貴輝を無視して澄夜が静かに呟く。
「―――来るぞ。」
「分かってるよ。下がってろ。」
腰に提げた刀を掴んで抜刀の構えをとる貴輝が前に出て澄夜が詠唱しながら後ろに引く。
ココらへんは長年付き添ってきた仲間と言うのもあって連携が取れている・・・はず。
「シッツはそこで鎮座しておとなしく殺されていろ!名前の通りな!ヒャヒャヒャヒャ・・・!!!」
「下らん親父ギャグに付き合っている暇なぞない。」
「後ろに同じく。」
ボークンのものと思われる声にテキトーな返事を返したその時。
ガリ、ガリガリガリガリガリガリガリガリ・・・・・・・・。
嫌な音を立てながら前方の頑丈そうな鉄格子が開く。
「上がるの遅いなぁ。」
ゆっくりと上がっていく格子の向こう側でまた一つ機械が作動し始めた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。
何かが降りてきているようだ。
「え~い、ジレッタイ!」
「落ち着け。」
たしなめられる。

―二分後―
ズドンッ!
と、重い音を響かせてやっと格子が開いた。
「遅いにも程がないか?」
「よほど厳重に保管してあったのか、ただ単に油が射してなかっただけか・・・。」
ゴトンッ!
奥の機械も少し遅れてしっかりと作動し終わったようだ。
「・・・ボークンってさぁ、もしかして、すごい阿呆?」
「・・・俺に聞くな。」
ズシャリッ、ズシャリッ、ズシャリッ・・・!
奥から歩いてるような、何か引きずっているかのような、何かを砂の上に落とすような。
そんな音が近づいてくる。
「・・・この匂い。さっきのかいだことない匂いと同じだ。」
「未確認生物ってところか?」
薄明かりの中見えたその禍々しい姿を見て澄夜が問う。
「・・・いや、半機械、半獣もしくは獣人ってところか。油の匂いが少しする。」
よく見ると所々パイプのような物が見える。
「ゲテモノか。」
「確かに。でも、あれ倒さなきゃいけないんだろう?」
今度は貴輝が問う。
「みたいだな。」
澄夜が言うが早いか、それは突如攻撃を仕掛けてきた。
「ふはははははは・・・・!!!!貴様らなんぞ殺してやる!殺してやるぞぉぉぉぉおおおお!!!」
その獣からボークンの声が聞こえる。
「・・・もしかしてあれがボークン?」
「―――――。――――。――――――――――。」
澄夜は詠唱と避けるのに夢中で聞いていない。
「えぇい!クソッ!」
半ばやけになって切りかかる貴輝を尾びれのようなものが近寄るのを拒むように、本体と繋がっているくせに違う生き物のように蠢く。
「ええぃ!うっとうしい!」
貴輝がそれを斬ろうとする。
が、それは斬れなかった。
正確には斬るにはたやすく斬れた。
しかしすぐに、むしろ一瞬で斬られた部分が復活するのだ。
「もげぇ。クソッ!『炎剣』!」
唱えて刀に炎を宿す。
「せい!」
しかし、結果は変わらず。
斬っても一瞬で回復するので突破することもままならず、苦戦する貴輝の元に、
「いくぞ!貴輝!」
と言う声が聞こえる。
「え゛!?あれはまだ完成してないだろ!?やるの!?」
相棒の急な申し出に戸惑う貴輝。
「それしかないだろ!こっちだっていつまでも避けてられないぞ!」
そういう澄夜は確かに避けるのが辛そうだ。
今は紙一重で避け続けているが長続きしそうにない。
「・・・くっ!悩んでる暇もないか!良いよ!来い!」
そう叫んで二人同時に唱える。
「『紅蓮刀』!」
「『マグマ・ボール』!」
「「憑依!」」
そう叫ぶと同時に貴輝の刀に猛々しい紅蓮の焔が宿り、澄夜の手元にこれまた一振りの綺麗な紅蓮の両刃剣が現れていた。
「「切り裂け!!!」」
二人が再び同時に叫び自らの敵とする“物”に斬りかかった。
二人が斬りつけた後一瞬、間があったあと、
―――ごおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!
とてつもない火柱が巻き起こりその“物”を焼き尽くし、溶かしていく。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!」
「あっつーーー!!!」
「バルリエル張っといて良かったー。」
火柱が消えて数秒。
「殺す気かーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?」
今度は怒りの濁流が巻き上がった。
「生きてるから良いじゃん。」
と、澄夜。
「奔流に飲まれてたら確実に逝ってた・・・。」
顔を拭いながらそう呟くは貴輝。
「まぁ、結果的には成功かな?」
「改良の余地ありだと思いまーす。ってか、思え!」
半狂乱で叫ぶ貴輝を無視して勝手に思考をまとめていく澄夜。
「もうちょっと炎を収束できれば上出来だが・・・。どうすれば良いだろうか・・・?マグマ・ボールの密度を高めて・・・」
あーでもないこーでもないとぶつぶつと呟き始める澄夜を見て貴輝が一言。
「あー、もう。これだから『梟の獣人』は・・・!!!」
半分諦め、半分怒りでそうはき捨てる貴輝に、
「やるねぇー、兄さん達。」
「ありがとねぇー。」
意識せずに返す貴輝。
何が聞こえて自分がどういう状況にあるか理解していない。
というよりも混乱していてそんなこと気にしてる余裕がない。
「・・・。」
無視された“少年”が露骨に不機嫌な顔になる。
「人の話を・・・聞けーーーーーー!!!」
貴輝にとび蹴りを食らわす。
寸前で避けられる。
「なんだこんがきゃー!」
八つ当たりをする貴輝。
そこでやっと“少年”に気づく。
「・・・あれ?」
「ふふふ・・・。きづいたか。」
不適な笑みを浮かべる“少年”。
「・・・白昼夢か。」
またそっぽを向く。
「こらこらー!」
澄夜もやっとこっちの世界に戻ってくる。
「誰?」
「あれ?お前にも見えるの?じゃぁ、白昼夢ではないか。つまらん。」
と意味不明なことを良いつつ“少年”に向き直る。
「誰だ貴様?」
いきなりの喧嘩口調。
「こらこら。」
たしなめられる。
「あのお兄さんねぇ。自分の考えが中断させられたのがよほど腹たった見たいだねぇ。」
ちなみに怒っているのは澄夜だ。
「ぶつぶつぶつ・・・。」
また向こうの世界へ行く。
「全く・・・。こういうときに役たたんな。」
「おい。魔王のことを無視するのか?」
“少年”がそう言う。
ぼくっ!ゴキャッ!
「じゃ、忙しいからこれで。」
“少年”のことをお構いなしにさっさと撤退する貴輝。
その腕には澄夜が抱えられている。
・・・いや、担がれている。気絶しているようだ。
「奥に行くしかないみたいだなぁ・・・。」
呟きながら勝手に進んでいく貴輝。
「・・・・・・・!!!」
後には怒りと屈辱で顔を真っ赤にして地団太を踏む“少年”が残った。
「あいつら・・・!絶対に後悔させてやる!」
そういった言葉は確かに貴輝の耳に届いていた。

―ボークスの店 二階【希少動物売買所】―
「あらぁ。こんなところに一杯・・・。」
「本当だな。」
ちなみに澄夜は先ほど叩き起こされたばかりだ。
「少し後頭部と腹部に鈍い痛みが・・・。」
と目が覚めたときに訴えたが、いかんせん、ココ最近の記憶がもやもやしているのだ。
何があったのか理解できないままそのまま進んできたのだ。
「あれ?」
貴輝がふいにあるケースの前で足を止める。
「どした?」
「いや、こいつ。見覚えあるなと思って。」
それは鳥人(ちょうじん)と言う鳥の獣人と大型の鳥の間に生まれた種族と言われている非情に希少価値の高い者だった。
「へぇ~。鳥人に知り合いなんかいたんだ。」
「いや、違う。夢で見た人に似てるような似てないような・・・。今朝こいつに似てる人が夢に出てきたんだよ。・・・引き取っても良いかな?」
少し待っても応答がないのでそう言ってみる。
そんな提案をする貴輝を見て、
「変なところでまじめなお前がそんな事言うなんてな。まぁ、良いか。じゃ、俺も何か頂いていこう♪」
にやりと笑って澄夜がそう言った。
「お前、ちょっと狙ってただろ。」
ジト目で睨む貴輝だが、特に気にしていないようでそのままケースを開けて中の鳥人を出してやった。
「一応カムフラージュとして全員逃がしとくか。」
「そうしようか。」
と言う澄夜は人型の何かを連れていた。
「・・・人魚?」
「ごめーとー。」
棒読みにそういう澄夜に、
「お前がそんなロマンチストだったとはね。」
皮肉を言ってみるが、
「あいにく俺はリアリストなんでね、人魚って不老不死って言うじゃん?だから色々と研究に付き合ってもらおうと思って。お前付き合ってくれないからさ。」
「付き合いたくないわ!あんな実験!」
「あんな実験?」
声を出したのは人魚だった。
多分気になるのだろう。
なにせ、澄夜は手当たり次第に手を出すので危険な実験も多々ある。
と言うか、手伝えと言うのは大体危険な実験である。
「たまには良い奴があったじゃないか!ほら、毛生え薬の実験。」
「お前がシャンプーだと偽って拙者に渡したあれのことか?」
以前プレゼントなどと称してシャンプーをくれたので使ってみたところ二時間毛が生え続けるという事体に陥ったことがある。
「あんなの良かないわ!・・・はぁ、もう相手にするのがめんどくさくなってきた。」
「じゃ、報酬貰って帰ろうか。」
気軽な足取りで去っていく澄夜。
全部のケースを破壊して中の生き物を逃がしてから追いかける貴輝。
「そういえば、そいつ、名前は?」
「あ~。考えてない。お前の鳥人は?」
「こいつは・・・」
「名美。」
貴輝が言うより早く答えたのは鳥人だった。
「・・・らしい。」
「じゃ、こいつは・・・、」
「私は可愛い名前が良いです。」
不穏な気配を気取ったか、澄夜が言うより早くそう言った。
・・・なかなか鋭い。
「・・・っち!じゃぁ、人魚だろ・・・?う~ん・・・・・。うん、か」
「女の子の名前が良いです。」
またも先に言う。
・・・こいつ只者じゃないかもしれない。
と貴輝が思っていると考えなした澄夜が、
「じゃぁ、紅月(くげつ)、かな。」
「どっから、そんな名前が・・・?」
「ふっと、頭の中に浮かんだ。」
「あっそう。」
その名前で満足したのか、紅月は満足そうな笑みを浮かべて澄夜に寄り添っていた。
名美はとても眠そうでふらふらしていた。
その後彼らは報酬を貰い、帰路に着いたのだった。
まだこの二人は危険な状態にあるとは思っていない。

―――今回のお仕事の報酬⇒154,600D
豆知識:お金の単位(D)
『D』はDue(ドュー)と読みます。めんどくさいのでそのままディーと読む人もいますが。
で、このDueは特殊貨幣(普通の工法では決して作れない紙(?)にこれまた普通の工法では決して作れないインクで特殊な方法で印刷されている貨幣)で出来ています。一説には魔法で作られたと言うのもあるらしく、澄夜は躍起になってこれに取り組んでいます。今のところ実を結んだ結果はないようですが。
そして、この特殊貨幣のすごいところは切れない、破けない、燃えない、溶けない、水にぬれてもなんともない。というもの。
すでに紙の域を超えている物です。まぁ、そんなんだから魔法で作られたとか言われてるんですが。
なので、これは過去に莫大な量が作られた後そこから先は作られていません。
破けない燃えない等の要素があるので今まで紛失は多少あっても大丈夫だったのです。
ついでに、これが何故Dueと書いてあるかと言うと、紙幣の一枚一枚にDue=Sorconと言う署名があるからなんです。だからなんだと言われた何もいえませんが。
・・・と、まぁ、お金についてはこれぐらいです。なんかあったらまた豆知識出します。仕事の報酬も出します。

―後書き会話―
貴輝:「久々のこーしんだー。」
澄夜:「棒読みだね。」
名美:「棒読みみたいね。」
紅月:「棒読みですね。」(三人一緒に)
貴輝:「異口同音ですか・・・。ってか、事実を述べたまでだー!」
澄夜:「発狂か・・・。」
名美:「発狂ねぇ・・・。」
紅月:「発狂ですかぁ・・・。」(三人一緒に)
貴輝:「名美まで!酷い!ってか、また異口同音かよ!ってか、打ち合わせでもしてるの!?なんで同時に言えるのさ!?」
澄夜:「・・・ふふっ。(薄ら笑い)」
貴輝:「・・・・・・・・・・・・・・・・。なんだその意味深な含み笑いは。
名美:「眠いから寝ま~す。お休みなさい♪」
紅月:「では、私も。失礼します。」
澄夜:「便乗し」
貴輝:「逃がさん。」
澄夜:「っち!」
貴輝:「でわ、次回予告!」
次回予告:【なんと!新しいメンバーが!】
澄夜:「短っ!ってか、大雑把すぎ!」
貴輝:「眠いので・・・。」(更新時間二時九分)
澄夜:「お前もか・・・。」
貴輝:「まぁ、仕事も終わったし、寝よか。・・・って、あれ?澄夜?・・・勝手に戻ってったな。でわ、皆さんまた次回会いましょ~。にしても皆薄情だなぁ~。(泣」

―Sky―【A.Story.】 プロローグ~もう一人の貴輝~

この物語は全てフィクションです。(念のため)

Skyの世界のパラレルワールドであるもう一つの世界でのお話・・・。

―Sky―【A.Story.】 プロローグ~もう一人の貴輝~

ここはSkyの世界のパラレルワールド。
そして主人公は作者であるもう一人の『貴輝』です。
そして、世界観しょうかいで言っていた『迫害されている少女』というのは、この物語のヒロインに当たる人です。
この物語には既に了承を取ってある方がキャラクターとして登場します。
勝手に使うことは多分無いと思うのですがあったら文句を言ってやってください。
あと、「俺(又は私)を使ってくれー!」という方も掲示板にて言ってください。
でわ本編をお楽しみください。

―――どくん
―――どくん
―精神世界―
―――どくん  ―――どくん
(ここは、何処だ・・・?)
深い深い闇の中に少年がぽつんと一人浮かんでいる。
これは夢だ。
少年はそう理解している。
理解しているんだが、なかなか認められない。
(こんなリアルな感触の夢は見たことも聞いたこともない・・・。)
それが少年が認められない理由だった。
―――どくん  ―――どくん
遠くからは何かの鼓動のようなものが聞こえてくる。
(そういえば、この音は何なんだ?さっきからずっと聞こえてるけど・・・。)
『あなたは?』
その瞬間少年の前に一糸まとわぬ姿をした人らしき物体が光を放ちながら現れた。
残念ながら男か女かわからない。
それどころか人間であるかも少し怪しい。
(人間とは『匂い』が違う。)
少年は狼の獣人だった。
匂いをかぎ分ける能力には優れている。
目の前に現れた者は・・・。
そう、鳥の獣人と匂いが似ている。
少し人間の血が混じっているのだろう。
少しだけ人間の匂いがする。
『あなたはだれ?』
目の前の者は再び尋ねる。
「拙者は・・・。拙者は貴輝。あなたは?」
『私は名美と申します。』
「なび・・・ね。」
『はい。私とあなたはいずれ会うでしょう。その時はよろしくお願いしますね?』
「・・・は?」
『ふふふ・・・。今は分からなくても良いです。でも、その時は・・・。』
そこで急に周りが明るくなった。
少年は目を覚ましていた。
「・・・なんだったんだ?今の・・・。」
少年はしばらく考えてから、
「ま、良いか。変な夢はいつものことだ。飯食って仕事しよう仕事。」
少年は若いながらも友人とともにある仕事をしている。
ソレがこの少年が住んでいる『Star In The Sky』だ。
ここら界隈では有名で皆からは『SITS』・・・シッツと呼ばれている。
一部の者は二人のことをまとめてシッチーズと呼ぶが、少年達は気にしていなかった。
「ふぅ・・・。澄夜起こして仕事行くか・・・。」
そう言って少年は部屋を出て行こうとして、
「あぁ。忘れてた。」
ベッド脇まで戻ってきた。
「これは持ってかないとな。ってか、拙者もこの独り言言う癖直さないとなぁ・・・。」
そう良いながら少年はベッド脇の円卓に置いてあった腕時計を身につけ、携帯電話のようなものをポケットにしまい、最後に赤いハチマキをしめてから部屋を出て行った。
―廊下―
「澄夜ー。勝手だが入らせてもらうぞー。」
そう言って少年は勝手に部屋に入っていく。
「ノックぐらいしろ!・・・めずらしく早起きしてきたと思ったらこれか・・・。」
澄夜は着替え中だった。
「おぉ。すまんすまん。ま、男同士だし良いじゃないか!」
「ったく。ソレより、何のようだ?」
澄夜は不服そうにそう尋ねる。
「飯。」
貴輝はそれだけを言って部屋を出て行った。
部屋の中から「たまにはお前が作れー!」という叫び声が聞こえたが、無視をする。
「・・・そういえば、着替えてなかったな・・・。」
貴輝は部屋に戻っていった。

―五分後―
部屋を出ると澄夜がちょうど洗面所から戻ってきたところだった。
「よう。おはよう!」
「さっきあったけどな。・・・おはよう。」
「今日も良い天気だねぇ~・・・。」
「そうか?」
外は微妙に雲があるも青空はしっかり見えている。しかし、良い天気とは言い難かった。
「ふぅ・・・。で、飯は?」
「だから、お前が作れって!」
「ちっ!しょうがない・・・。」
「ったく!」
澄夜は廊下をすたすたと歩いていく。
貴輝もそれとは反対方向に進んでいく。

―台所―
「む。なべ結構汚れてるな。ま、良いか。さて、飯何作ろうかな~・・・。」
冷蔵庫を漁っていると、
「む。これは!賞味期限が十年前・・・。食えねぇな。絶対。ってか、何でこんなの入ってるのー!?他にも・・・、ポテトチップス!?冷やしても変わらんだろう!こんなもの!え!?おしるこの缶が何故こんなところに!?今夏だよ!?賞味期限は・・・、八月十四日!?なんで夏にこんな物が・・・!」
そんなこんなで出てきた食材。
「にんじん、トマト、キャベツ少々にたまねぎが大量に・・・。あ。後豚肉がちょっとあるな・・・。米は炊いてあるし・・・。何を作ろう?」
考えた挙句炒め物に決定。

―三十分後―
食卓には炒め物とご飯だけ出ている。
「他にも何か作れよ!」
澄夜に怒られる。
「使えそうな食材全部つかったらこうなったの!文句言うな!」
貴輝も反論する。
少し言い合いをした後食事開始。
「ん~少ししょっぱいな。」
「本当にな。少し塩入れすぎたか・・・。」
批評しながら食事を進め。

―食事終了後―
「じゃ、後片付けよろしく。」
澄夜はそう言って早々に部屋を出て行った。
「準備頼むなー!」
「おうー!」
貴輝は澄夜の返事を聞いてから台所に食器を持って戻っていった。

―二十分後―
「お。遅かったな。事故にでもあったかと思って心配してたぞ。」
「はいはい。フライパンの汚れがなかなか取れなくてな。あと、ついでになべも洗っといたぞ。」
「お。サンキュー♪」
そんな感じで会話を進めていると、
バンッ!
扉が勢い良く開いた。
「どうしました?」
そういって、すばやく対応したのが澄夜。
「何かあったんですか?」
ソレをうけつぐ貴輝。
「町に!町に魔物が出てきたんです!頼みます!どうか奴らを追っ払ってください!」
「町ってあの首都『フィルスト』ですか?」
澄夜が聞く。
「そうです。私はそこからの使いの者です。頼みます。私の故郷を守ってください!」
必死に頼み込む男。
「どうする?」
「決まってるでしょう。ってか、お前もそのつもりだろう?」
「当然。」
「その仕事・・・」
「「引き受けた!」」
二人声をそろえてそう言うと貴輝が男の襟首をつかみ店を後にする。
「戸締りはしっかりしてかないとね。」
澄夜が玄関に鍵をかけてからそれを追いかける。
これが物語の始まり・・・。
この仕事を受けたことによって彼らの人生は大きく波乱万丈の世界へと傾いてしまったのだ。

To Be Countinue...

―あとがき会話―
貴輝:「いぇ~い!」
澄夜:「いぇーい。」
貴輝:「文句を言われようが何しようが強行突破していきます!こっちの小説!」
澄夜:「強行突破・・・。でも、お前が主人公カヨ!
貴輝:「悪いか!」
澄夜:「悪い。(キパッ!」
貴輝:「がーん。お兄さんショック!ってか、お前も一応は主人公なんだよ!」
澄夜:「ふーん。」
貴輝:「サラッと流された!」
澄夜:「じゃ、頑張れお兄さん。二つもの小説。頑張って書くんだよ?」
貴輝:「がんばりますよう・・・。でわ次回予告・・・。」
次回予告:いよいよ物語が始まります。まずはさっき言ってたヒロインと出会い。澄夜君もパートナーとなる人物を見つけ、作者が死にます。
澄夜:「おまえ死ぬの!?」
貴輝:「精神的に・・・ね。中部大会行っちゃったもん・・・。部活・・・。」
澄夜:「がんばーw」
貴輝:「でわでわ~皆さん。これを読んだ感想を掲示板に書き込んでください。ってか、書き込みなさい!(命令形)でわこの辺で。」
澄夜:「でわ~w」