2007年7月25日水曜日

―Sky―【A.Story.】 第一話~自称魔王~

この物語は全てフィクションです。(念のため)

Skyの世界のパラレルワールドであるもう一つの世界でのお話・・・。

―Sky―【A.Story.】 第一話~自称魔王~

あれから十分後・・・。
「あぁー。どうするよ?これ。」
「知らん。」
貴輝と澄夜は立ち往生していた。
「私が来る時はなんとも無かったのに・・・。」
無念そうに言う男。
「とりあえず・・・。」
「片付けますか・・・。」
今更だが、何故立ち往生しているかと言うと、
「大変なことになってるねぇ・・・。」
「そりゃぁ、普通の人間達には魔物を相手に出来んでしょう。」
「そらそうだ。」
ボークス(決まった進路を飛ぶ箱のこと)の発着場に魔物が現れて暴れているからだ。
「んじゃ、後方支援頼むね。」
「はいはい。死ぬなよ。」
「あ~い。」
軽い返事をして貴輝は走り出し、澄夜は詠唱を開始する。
「ていっ!とぁっ!」
貴輝が前線で時間を稼ぎ、
「裁きの雷よ、落ちろ!」
澄夜が魔法で蹴散らす。
その繰り返しで魔物で魔物がどんどん数が減っていく。
しかし、それに比例するかのように次々と魔物が現れる。
「キリ無いな・・・。」
「どっかで召還魔法でも使っているのか・・・?」
一向に減らない魔物の数を見て貴輝と澄夜が聞き合う。
「・・・そういえば。」
貴輝が突然何かを思い出したように言った。
「お前空間転移魔法覚えたとか言ってなかったっけ?」
「・・・そういえばそんな物覚えたなぁ。」
「忘れとったんかい!って、ぉわ!」
貴輝がつっこんでいると魔物が攻撃をしてきた。
「危ないって!っのやろ~!」
貴輝は何とか魔物の攻撃をしのいで反撃した。
「ギャーーーー!!!」
魔物はその一撃で朽ちた。
「早く門を開け!」
「はいはい。」
澄夜は生返事をして詠唱を開始する。
「我の命に従い、我らを導く門よ、―――開け!」
澄夜が言うと地面に光の渦が出来る。
「作ったぞ~。」
「結構早かったな。」
近くにいた魔物を蹴散らした貴輝が戻ってくる。
「魔法の詠唱なんてのはただの下準備だからね。意味が同じようなものなら間違ってても魔法は使えるし。」
「結構アバウトだな・・・。」
「は、早くしてくださいよ!」
二人が早く入らないのを見て男が言う。
「そうだな。行くか?」
「先に行け。」
「あ~い。」
貴輝はテキトーな返事をして光の渦の中に入っていく。
みょ~~~ん・・・。
と変な音を立てて貴輝がその中に沈んでいく。
「・・・場所、間違えたりしてねぇだろうな?」
「・・・。」
「何で無言なんだよ!」
そう言う間にも貴輝の体は沈んでいく。
「間違えてたら後で殴る!」
「出来るものならやってみろ!」
そう言われて貴輝は渦の中に沈みきった。
「・・・われわれも行きましょうか。」
「は、はい・・・。」
男は不安げに返事をして澄夜を共に渦の中に入っていった。


―????????―

「・・・。」
周りは真っ暗だった。
(どこかの地下なのかな・・・?)
いや、所々光が漏れているから何かに埋まっているといったほうが良いかもしれない。
「っのやろ~・・・。後で絶対殴る・・・。」
ぶつぶつと良いながら貴輝は全身に力を込めて、
「ていっ!」
周りの瓦礫を吹き飛ばした。
「あ゛ー。この技は気力の消費が激しいから嫌いなんだが・・・。」
そうぼやいていると頭上から、
みょ~~~ん・・・。
と言う音が聞こえ
「ん?」
貴輝が顔を上げると、
「やw」
澄夜が降って来た。
ズドン!
「~~~っ!」
貴輝は悶え苦しみ、澄夜は涼しい顔して、
「早く行くよ。」
と言い放った。
「くぬやろ~・・・。」
やっとの思いで立ち上がったところに、
ズドン!
先ほどの男が降って来た。
「あぁ~!すみません!すみません!」
「・・・・・・・・・・。」
貴輝は何か諦めたような顔をしていた。


―首都 フィルスト―

「ま、無事ついたんだから良いじゃないか。」
「拙者は全くもって無事でわないような気がしてならないんだが・・・?」
貴輝たちが出現した場所は首都フィルストの居住区の一角だった。
「で、何処に魔物たちが出てきたの?」
貴輝が文句を言うのを無視して話を聞く澄夜。
「はい。ここの居住区から南東です。」
「・・・地図は?」
「あぁ。すいません・・・。これです。」
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃┏━━━━━┳━━━━━━━━━━┓┃
┃┃     ┃          ┃┃
┃┃ 大公園 │    居住区    ┃┃
┃┃     │          ┃┃
┃┃     ┃●┏━┓●     ┃┃
┃┣━───━┻━┫㊥┣━───━━┫┃←地図
┃┃      ●┣─┫●     ┃┃
┃┃  職場町  ∥高∥ 商店街  ┃┃
┃┃ (ビジネス街)┃級┃      ┃┃
┃┃       ∥住∥      ┃┃
┃┃       ┃宅┃      ┃┃
┃┃       ∥街∥      ┃┃
┃┃     ┏─┻─┻┐     ┃┃
┃┗━━━━━┛ 船着場 ┗━━━━━┛┃
┃                  ┃
┃細い線:門   太い線:城壁    ┃
┃㊥:中央区  ●:地下道出入り口  ┃
┃       ~首都 フィルスト~ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
「さすがに広いな・・・。」
「そんなこと言ってる場合か。」
しげしげと地図を眺める二人。
「今いるのが居住区の・・・
┏━━━━━━━━━━┓
┃          ┃
│⇒☆  居住区    ┃
│          ┃
┃●┏━┓●     ┃
┗━┛ ┗━───━━┛
ここらへんです。」
「南東って言うと・・・商店街?」
「はい。商店街の中心あたりです。あそこは人の通りも多いので早くしないと・・・。」
男の顔が曇る。
「心配するな。拙者たちが絶対何とかするから。」
「そうそう、こいつがなんとかするから大丈夫ですって。」
それを聞いて男の顔に生気が少しだけ戻る。
「そうですね・・・。と、とにかく、一刻を争う事体なので早く・・・!」
「あいよ~。」
そういってすっと体勢を低くする貴輝。
「走るの?ちょっと遠いよ?」
「あれで飛ばされるぐらいなら走ったほうが良い!」
すこし怒って言う貴輝。
「まぁ、俺一人ならテレポートできるし。良いか。」
「・・・。」
「んじゃ、」
「「行くぞ!」」
二人同時に言って貴輝は走り、澄夜は詠唱を開始する。
「・・・速い・・・。」
もう貴輝の姿は見えない。
「まぁ、狼の獣人ですしね。」
ほぼ詠唱を終えた澄夜が言う。
「では、行ってきます。」
にこりと微笑んで澄夜は、
「目標地点設定。―――テレポート!」
最後にそう叫んで澄夜の体は光に包まれ、
「では、吉報をお待ちください。」
消えた。

―商店街―
「もうそろそろか・・・。」
そうつぶやいた貴輝の耳に
ズンッ!
と、重い音が聞こえてくる。
「やっぱテレポートのほうが早いか・・・。」

一方、澄夜は。
「やれやれ、こんな物があるとは・・・。」
そういう澄夜の前には何か四角くて大きなものがある。
「じゃ、壊しますか。―――神々の怒り、憤りを炎に変えて、今我の前に姿を表せ・・・。エクスプロード!」
ズンッ!!
「・・・壊れないし。硬いなぁ・・・。あいつが来るまで待つか・・・。」
ダンッ!ダンッ!
「・・・見つかったか。厄介な。」
ガタンッ!ガタンッ!バキッ!
扉をぶち破って魔物が数体入ってくる。
「ふん、貴様らのような雑魚に殺られはしないさ。・・・来い!」

戻って、貴輝は。
「うげぇ~・・・。居すぎ・・・。」
魔物がわらわらと大量に居る。
「こういうときに澄夜が居れば良いのに・・・。」
ちなみに先ほどから建物の中から笑い声と爆音が立て続けに聞こえている。
声は澄夜の物だ。
「・・・暴れてるなぁ・・・。あんま物壊すなとか言いよるくせに・・・。ま、こっちも暴れますか!」
そう言って魔物の群れに突っ込んで行く。
「炎剣!」
そう貴輝が叫ぶと剣に炎が宿る。
その炎の宿った剣で魔物をバッサバッサ斬っていく貴輝。
そしてある魔物は宙をとび、またある魔物は燃え尽き、灰となっていく。
「弱い・・・。」
実に残念そうに貴輝がつぶやく。
「剣よ・・・爆ぜよ!」
そう叫び地面に刀を突き立てる。
すると貴輝の周りの地面が突如として爆発する。
そうやって魔物を一掃すると爆音と笑い声が聞こえる建物に駆け込んでいく・・・。

そのころ澄夜は。
「ふはははははは!!!」
笑っていた。
笑いながらエクスプロードを連発している。
「弱い!―――エクスプロード!」
ズンッ!
魔法は先ほど澄夜も言っていた通り、意味さえあっていれば詠唱はなんでもよく。
熟練した魔法使いほど詠唱は短い。
中には詠唱しなくても高等魔法を使える者も居る。
ちなみに、澄夜は魔法使いの中ではそこそこ上の方のもので、直前に使った魔法を連続して使おうとする時、詠唱を必要としない。
と、言っても、一部の魔法はそのようなことは出来ないのだが・・・。
「エクスプロード!エクスプロード!」
ドカン!ズドン!
魔物たちが断末魔の叫びを上げる暇なく消し炭になって行く。
・・・どちらが悪役か分からなくなってくるほどに澄夜は乱発していた。
「ぐげぇぇぇぇ!!!」
通路の奥から魔物の叫び声と何かを切るような音が聞こえてくる。
「澄夜!」
貴輝だった。
「よう、遅かったな。―――エクスプロード。」
「お前が!早いんだ!ろ!」
喋りながら魔物を切っていく貴輝。

―三分後―
「や~っと片付いた。」
「だな。」
死屍累々と言った状況の部屋の中に二人はいた。
「で、なんでこんなものがあるの?」
「知らん。」
二人の前には先ほどの四角くて大きいものがある。
「ジェネレータ・・・ねぇ。道理で奴さんたち減らないわけだ。」
「そんなことは良いからとっとと斬れ。」
「へいへい。」
貴輝が前に進み出て腰に提げた刀を構える。
「・・・今思ったけどお前がとっとと壊せばよかったんじゃないのか?」
そう言う貴輝に
「壊せなかったからお前に言ってるんだろ。」
「さいですか。」
うなずく貴輝が刀を抜いた。
「魔の障壁よ、我を、守れ。―――バルリエル!」
澄夜の前にバリアが出来上がる。
「・・・は?」
ジェネレータを破壊した貴輝が振り向いて変な顔をする。
「どした?」
「危ないぞ。」
ぴぴぴぴぴぴ・・・・・!!!
「・・・まさか!」
ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!チュドカーン!
「・・・危なかった~・・・。もっと早く言え!ってか、拙者にも張ってくれよ!」
貴輝は澄夜の後ろに隠れて爆発をしのいでいた。
「めんどくさかったし、大丈夫だろうと思ったから。」
何が起きたかというとジェネレータが大爆発したのだ。
「全く・・・。」
ため息を吐く貴輝の顔はすすだらけ。
「・・・ぷっ。」
澄夜がこらえきれずふきだす。
「笑うな!」
「さぁ、外にいる奴ら倒そう・・・。くくっ!」
「だから笑うなって!」
言い合いをしながら外へ向かう。

―フィルスト商店街―
「・・・なんか減ってない?」
「だね。なんでだろ?」
外に出た二人は魔物の数が減っているのに驚いた。
先ほどまでの半分ほどまでに減少している。
「ジェネレータが壊れたからかな・・・?」
「さぁね。」
ガシャーン!
ガラスが割れる音がする。
「きゃーー!!」
続いて人の悲鳴。
「・・・行こう。」
「あぁ。」
二人は悲鳴が聞こえた方角へ走った。

―ボクーンの店前―
「・・・ボクーンってあの闇商人の?」
表にかかってる看板を見て貴輝がたずねる。
「・・・そんなことを俺に聞くな。」
しかし返答はそっけないものだった。
「まぁ、良いか。入ろう。」
「確かなんだな?ココから聞こえたって言うのは。」
澄夜がそう問う。
「拙者を誰だと思ってる?」
得意そうに言う貴輝。
「ただの腐れ外道。」
さらりと酷いことを言ってさっさと入っていく澄夜。
「・・・。」
それを聞いてうなだれる貴輝。
それらを密かに見つめている者がいた。
「・・・あの人は。」

―ボクーンの店 店内―
「・・・まずい。」
澄夜が店に入って開口一番にそんなことを言った。
「何が?」
意気消沈のまま店に入ってきた貴輝がたずねる。
「見つかった。」
「・・・はぁ?」
意味がわからないと言うように問い返す貴輝。
「・・・。」
しかし黙ったままの澄夜。
「どういう意味?」
再度問う貴輝。
「・・・黙れ。」
その相貌に警戒の色を宿して言う澄夜。
「・・・今日はそっけないなぁ・・・。」
軽い口調で良いつつ警戒を強める貴輝。
それらを見つめている者が、また、いた。
「・・・シッツ共、か。」
その者はモニタに付属されているマイクに向かってそう呟いた。
「ボクーンか?」
「多分ね。」
スピーカーから聞こえてきた声を聞き、貴輝が相棒に問う。
相棒の問いに適当な返事を返し通路の奥を凝視する澄夜。
「さてと、どうしたものかね。」
澄夜が不意にそんなことを呟く。
「・・・本当にね。」
それによって気づいたように貴輝も返す。
がらららぁぁぁ・・・
ガシャンッ!
火花を散らしながら滑ってきた鉄格子が盛大に火花を散らして完全に閉まる。
少し隙間もあるが多分猫でも通れないだろう。
「もげぇ。ビクともしないし。こりゃ合金だな。刀きかんわ。」
「・・・閉じ込められた、か。」
貴輝が変な声を出し、澄夜が冷静に状況を判断する。
「めんどくさいなぁ・・・。」
「確かにな。でも、そんなこと言ってる場合じゃないだろ。」
弱音を吐く相棒に叱責を与え通路を進んでいく澄夜。
「分かってるけど・・・。お前後衛のくせに先に行くなよ。」
その後を追って貴輝も通路を進む。

―ボクーンの店 ?????―
「悪趣味な・・・。」
「その意見には賛同できるな。」
二人して悪態をつくのも無理はない。
この部屋は尋常じゃないほど汚い・・・と言うよりも、
「クサイ。」
「我慢しろ。」
そう、とても匂うのだ。
それも、血の匂いが。
「人の血が大半だね。ちびっと魔物の血と・・・なんだろう?これ。」
貴輝が嗅いだことのない匂いに眉をよせる。
「お前にも嗅いだことの無い匂いがあるのか。驚きだな。」
「褒めてんのか?貶してんのか?ん?」
相棒に言われたことに問い返す。
「全面的に貶している。もしくは愚弄している。」
「酷ぇ・・・。何もそこまで言わんでもええのに。」
変な方言を使う貴輝を無視して澄夜が静かに呟く。
「―――来るぞ。」
「分かってるよ。下がってろ。」
腰に提げた刀を掴んで抜刀の構えをとる貴輝が前に出て澄夜が詠唱しながら後ろに引く。
ココらへんは長年付き添ってきた仲間と言うのもあって連携が取れている・・・はず。
「シッツはそこで鎮座しておとなしく殺されていろ!名前の通りな!ヒャヒャヒャヒャ・・・!!!」
「下らん親父ギャグに付き合っている暇なぞない。」
「後ろに同じく。」
ボークンのものと思われる声にテキトーな返事を返したその時。
ガリ、ガリガリガリガリガリガリガリガリ・・・・・・・・。
嫌な音を立てながら前方の頑丈そうな鉄格子が開く。
「上がるの遅いなぁ。」
ゆっくりと上がっていく格子の向こう側でまた一つ機械が作動し始めた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。
何かが降りてきているようだ。
「え~い、ジレッタイ!」
「落ち着け。」
たしなめられる。

―二分後―
ズドンッ!
と、重い音を響かせてやっと格子が開いた。
「遅いにも程がないか?」
「よほど厳重に保管してあったのか、ただ単に油が射してなかっただけか・・・。」
ゴトンッ!
奥の機械も少し遅れてしっかりと作動し終わったようだ。
「・・・ボークンってさぁ、もしかして、すごい阿呆?」
「・・・俺に聞くな。」
ズシャリッ、ズシャリッ、ズシャリッ・・・!
奥から歩いてるような、何か引きずっているかのような、何かを砂の上に落とすような。
そんな音が近づいてくる。
「・・・この匂い。さっきのかいだことない匂いと同じだ。」
「未確認生物ってところか?」
薄明かりの中見えたその禍々しい姿を見て澄夜が問う。
「・・・いや、半機械、半獣もしくは獣人ってところか。油の匂いが少しする。」
よく見ると所々パイプのような物が見える。
「ゲテモノか。」
「確かに。でも、あれ倒さなきゃいけないんだろう?」
今度は貴輝が問う。
「みたいだな。」
澄夜が言うが早いか、それは突如攻撃を仕掛けてきた。
「ふはははははは・・・・!!!!貴様らなんぞ殺してやる!殺してやるぞぉぉぉぉおおおお!!!」
その獣からボークンの声が聞こえる。
「・・・もしかしてあれがボークン?」
「―――――。――――。――――――――――。」
澄夜は詠唱と避けるのに夢中で聞いていない。
「えぇい!クソッ!」
半ばやけになって切りかかる貴輝を尾びれのようなものが近寄るのを拒むように、本体と繋がっているくせに違う生き物のように蠢く。
「ええぃ!うっとうしい!」
貴輝がそれを斬ろうとする。
が、それは斬れなかった。
正確には斬るにはたやすく斬れた。
しかしすぐに、むしろ一瞬で斬られた部分が復活するのだ。
「もげぇ。クソッ!『炎剣』!」
唱えて刀に炎を宿す。
「せい!」
しかし、結果は変わらず。
斬っても一瞬で回復するので突破することもままならず、苦戦する貴輝の元に、
「いくぞ!貴輝!」
と言う声が聞こえる。
「え゛!?あれはまだ完成してないだろ!?やるの!?」
相棒の急な申し出に戸惑う貴輝。
「それしかないだろ!こっちだっていつまでも避けてられないぞ!」
そういう澄夜は確かに避けるのが辛そうだ。
今は紙一重で避け続けているが長続きしそうにない。
「・・・くっ!悩んでる暇もないか!良いよ!来い!」
そう叫んで二人同時に唱える。
「『紅蓮刀』!」
「『マグマ・ボール』!」
「「憑依!」」
そう叫ぶと同時に貴輝の刀に猛々しい紅蓮の焔が宿り、澄夜の手元にこれまた一振りの綺麗な紅蓮の両刃剣が現れていた。
「「切り裂け!!!」」
二人が再び同時に叫び自らの敵とする“物”に斬りかかった。
二人が斬りつけた後一瞬、間があったあと、
―――ごおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!
とてつもない火柱が巻き起こりその“物”を焼き尽くし、溶かしていく。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!」
「あっつーーー!!!」
「バルリエル張っといて良かったー。」
火柱が消えて数秒。
「殺す気かーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?」
今度は怒りの濁流が巻き上がった。
「生きてるから良いじゃん。」
と、澄夜。
「奔流に飲まれてたら確実に逝ってた・・・。」
顔を拭いながらそう呟くは貴輝。
「まぁ、結果的には成功かな?」
「改良の余地ありだと思いまーす。ってか、思え!」
半狂乱で叫ぶ貴輝を無視して勝手に思考をまとめていく澄夜。
「もうちょっと炎を収束できれば上出来だが・・・。どうすれば良いだろうか・・・?マグマ・ボールの密度を高めて・・・」
あーでもないこーでもないとぶつぶつと呟き始める澄夜を見て貴輝が一言。
「あー、もう。これだから『梟の獣人』は・・・!!!」
半分諦め、半分怒りでそうはき捨てる貴輝に、
「やるねぇー、兄さん達。」
「ありがとねぇー。」
意識せずに返す貴輝。
何が聞こえて自分がどういう状況にあるか理解していない。
というよりも混乱していてそんなこと気にしてる余裕がない。
「・・・。」
無視された“少年”が露骨に不機嫌な顔になる。
「人の話を・・・聞けーーーーーー!!!」
貴輝にとび蹴りを食らわす。
寸前で避けられる。
「なんだこんがきゃー!」
八つ当たりをする貴輝。
そこでやっと“少年”に気づく。
「・・・あれ?」
「ふふふ・・・。きづいたか。」
不適な笑みを浮かべる“少年”。
「・・・白昼夢か。」
またそっぽを向く。
「こらこらー!」
澄夜もやっとこっちの世界に戻ってくる。
「誰?」
「あれ?お前にも見えるの?じゃぁ、白昼夢ではないか。つまらん。」
と意味不明なことを良いつつ“少年”に向き直る。
「誰だ貴様?」
いきなりの喧嘩口調。
「こらこら。」
たしなめられる。
「あのお兄さんねぇ。自分の考えが中断させられたのがよほど腹たった見たいだねぇ。」
ちなみに怒っているのは澄夜だ。
「ぶつぶつぶつ・・・。」
また向こうの世界へ行く。
「全く・・・。こういうときに役たたんな。」
「おい。魔王のことを無視するのか?」
“少年”がそう言う。
ぼくっ!ゴキャッ!
「じゃ、忙しいからこれで。」
“少年”のことをお構いなしにさっさと撤退する貴輝。
その腕には澄夜が抱えられている。
・・・いや、担がれている。気絶しているようだ。
「奥に行くしかないみたいだなぁ・・・。」
呟きながら勝手に進んでいく貴輝。
「・・・・・・・!!!」
後には怒りと屈辱で顔を真っ赤にして地団太を踏む“少年”が残った。
「あいつら・・・!絶対に後悔させてやる!」
そういった言葉は確かに貴輝の耳に届いていた。

―ボークスの店 二階【希少動物売買所】―
「あらぁ。こんなところに一杯・・・。」
「本当だな。」
ちなみに澄夜は先ほど叩き起こされたばかりだ。
「少し後頭部と腹部に鈍い痛みが・・・。」
と目が覚めたときに訴えたが、いかんせん、ココ最近の記憶がもやもやしているのだ。
何があったのか理解できないままそのまま進んできたのだ。
「あれ?」
貴輝がふいにあるケースの前で足を止める。
「どした?」
「いや、こいつ。見覚えあるなと思って。」
それは鳥人(ちょうじん)と言う鳥の獣人と大型の鳥の間に生まれた種族と言われている非情に希少価値の高い者だった。
「へぇ~。鳥人に知り合いなんかいたんだ。」
「いや、違う。夢で見た人に似てるような似てないような・・・。今朝こいつに似てる人が夢に出てきたんだよ。・・・引き取っても良いかな?」
少し待っても応答がないのでそう言ってみる。
そんな提案をする貴輝を見て、
「変なところでまじめなお前がそんな事言うなんてな。まぁ、良いか。じゃ、俺も何か頂いていこう♪」
にやりと笑って澄夜がそう言った。
「お前、ちょっと狙ってただろ。」
ジト目で睨む貴輝だが、特に気にしていないようでそのままケースを開けて中の鳥人を出してやった。
「一応カムフラージュとして全員逃がしとくか。」
「そうしようか。」
と言う澄夜は人型の何かを連れていた。
「・・・人魚?」
「ごめーとー。」
棒読みにそういう澄夜に、
「お前がそんなロマンチストだったとはね。」
皮肉を言ってみるが、
「あいにく俺はリアリストなんでね、人魚って不老不死って言うじゃん?だから色々と研究に付き合ってもらおうと思って。お前付き合ってくれないからさ。」
「付き合いたくないわ!あんな実験!」
「あんな実験?」
声を出したのは人魚だった。
多分気になるのだろう。
なにせ、澄夜は手当たり次第に手を出すので危険な実験も多々ある。
と言うか、手伝えと言うのは大体危険な実験である。
「たまには良い奴があったじゃないか!ほら、毛生え薬の実験。」
「お前がシャンプーだと偽って拙者に渡したあれのことか?」
以前プレゼントなどと称してシャンプーをくれたので使ってみたところ二時間毛が生え続けるという事体に陥ったことがある。
「あんなの良かないわ!・・・はぁ、もう相手にするのがめんどくさくなってきた。」
「じゃ、報酬貰って帰ろうか。」
気軽な足取りで去っていく澄夜。
全部のケースを破壊して中の生き物を逃がしてから追いかける貴輝。
「そういえば、そいつ、名前は?」
「あ~。考えてない。お前の鳥人は?」
「こいつは・・・」
「名美。」
貴輝が言うより早く答えたのは鳥人だった。
「・・・らしい。」
「じゃ、こいつは・・・、」
「私は可愛い名前が良いです。」
不穏な気配を気取ったか、澄夜が言うより早くそう言った。
・・・なかなか鋭い。
「・・・っち!じゃぁ、人魚だろ・・・?う~ん・・・・・。うん、か」
「女の子の名前が良いです。」
またも先に言う。
・・・こいつ只者じゃないかもしれない。
と貴輝が思っていると考えなした澄夜が、
「じゃぁ、紅月(くげつ)、かな。」
「どっから、そんな名前が・・・?」
「ふっと、頭の中に浮かんだ。」
「あっそう。」
その名前で満足したのか、紅月は満足そうな笑みを浮かべて澄夜に寄り添っていた。
名美はとても眠そうでふらふらしていた。
その後彼らは報酬を貰い、帰路に着いたのだった。
まだこの二人は危険な状態にあるとは思っていない。

―――今回のお仕事の報酬⇒154,600D
豆知識:お金の単位(D)
『D』はDue(ドュー)と読みます。めんどくさいのでそのままディーと読む人もいますが。
で、このDueは特殊貨幣(普通の工法では決して作れない紙(?)にこれまた普通の工法では決して作れないインクで特殊な方法で印刷されている貨幣)で出来ています。一説には魔法で作られたと言うのもあるらしく、澄夜は躍起になってこれに取り組んでいます。今のところ実を結んだ結果はないようですが。
そして、この特殊貨幣のすごいところは切れない、破けない、燃えない、溶けない、水にぬれてもなんともない。というもの。
すでに紙の域を超えている物です。まぁ、そんなんだから魔法で作られたとか言われてるんですが。
なので、これは過去に莫大な量が作られた後そこから先は作られていません。
破けない燃えない等の要素があるので今まで紛失は多少あっても大丈夫だったのです。
ついでに、これが何故Dueと書いてあるかと言うと、紙幣の一枚一枚にDue=Sorconと言う署名があるからなんです。だからなんだと言われた何もいえませんが。
・・・と、まぁ、お金についてはこれぐらいです。なんかあったらまた豆知識出します。仕事の報酬も出します。

―後書き会話―
貴輝:「久々のこーしんだー。」
澄夜:「棒読みだね。」
名美:「棒読みみたいね。」
紅月:「棒読みですね。」(三人一緒に)
貴輝:「異口同音ですか・・・。ってか、事実を述べたまでだー!」
澄夜:「発狂か・・・。」
名美:「発狂ねぇ・・・。」
紅月:「発狂ですかぁ・・・。」(三人一緒に)
貴輝:「名美まで!酷い!ってか、また異口同音かよ!ってか、打ち合わせでもしてるの!?なんで同時に言えるのさ!?」
澄夜:「・・・ふふっ。(薄ら笑い)」
貴輝:「・・・・・・・・・・・・・・・・。なんだその意味深な含み笑いは。
名美:「眠いから寝ま~す。お休みなさい♪」
紅月:「では、私も。失礼します。」
澄夜:「便乗し」
貴輝:「逃がさん。」
澄夜:「っち!」
貴輝:「でわ、次回予告!」
次回予告:【なんと!新しいメンバーが!】
澄夜:「短っ!ってか、大雑把すぎ!」
貴輝:「眠いので・・・。」(更新時間二時九分)
澄夜:「お前もか・・・。」
貴輝:「まぁ、仕事も終わったし、寝よか。・・・って、あれ?澄夜?・・・勝手に戻ってったな。でわ、皆さんまた次回会いましょ~。にしても皆薄情だなぁ~。(泣」

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