2008年8月31日日曜日

―Sky―【SITS.Story.】 第漆話~扉~

この物語は全てフィクションです。(念のため)

Skyの世界のパラレルワールドであるもう一つの世界でのお話・・・。

―Sky―【SITS.Story.】 第漆話~扉~

ふらふらと歩を進めていると唐突に何か扉のようなものが目の前に現れた。
「何か書いてあるな・・・『負けるな若者!』?意味わからん。」
とりあえず何かあるかとあけてみる。
「・・・なんかにちゃっとしてて気持ち悪いなぁ。」
ガチャリと開けると
「何も無い・・・というか、まじでただの扉カヨ!」
後ろの景色が映っていた。
本気で何のためにあるか分からない扉だった。
とにかく前・・・どちらかが前かわからないが進んでみることにした。

―五分後―
先ほどの扉から似たような扉はいくつか発見した。
だが、それ以外何も発見できず途方にくれる。
「ぁー一体何なんだここは。そもそも何処行った土くれ人形・・・。」
あれを追ってここに入ってきたようなものなのにどこにも居ない。
「・・・罠かぁ。せめて刀があればなぁ。」
ぶつぶつと呟きつつも歩き続ける。
何か無いものかと周囲を見回しても何もない。
「・・・ん?」
何か上から降ってきたような・・・?
と上を見上げてみると何か穴が開いている。
「いや、こんなに天井(?)低く無かったよな・・・。」
しかし進んでも何も変わらないのならあの穴に入るのも手か?
などと考えていると。
ポタリ
と穴から何かが降ってきた。
ポタリ、ジュワッ
そしてもう一滴。今度は組んでいた腕に落ちて服を溶かした。
「・・・ぇー。」
危機感を感じてそこから離れると同時に
ゴボッ、ビチャビチャビチャ!
と嫌な音を立てて液体がコレでもかと出てきた。
「うおっ!?なにあれ!?酸か何かですか!」
叫びつつ飛び散る液体を回避。
モノの数秒で一体が洪水と化す。
「・・・ここの床は溶けないのな。」
溶けたらソレはソレでどうなんだとも思いつつそれを眺める。

―掘っ立て小屋―
とりあえず穴を回避しててきとーにぶらぶらしていたら変な小屋を発見した。
「わーなにこれーなにこれー。」
元気が無いから棒読みで言ってみる。
「・・・入ってみるか。」
といって戸を開けようと戸の前に立ったら勝手に開いた。
・・・しかも結構な勢いで。
ばんっ!
「ぶふぇっ!?」
変な声を出して吹っ飛ばされる。
「おや、こんなところにお客さんとは珍しい。なんじゃ?わしが戸を開けた時に吹き飛ばされたのか?いいざまじゃ」
ははは。などと笑う爺が現れた。
なんですか?あれ殺害してもイイデスカね?
「おーおー。そう怖い顔をするな。冗談じゃ冗談。」
そうは言ったが結局謝らなかった。

―掘っ立て小屋 内部―
小屋の中は簡易的なベッドと机があるだけだった。
「とりあえず、ここは何処だ?糞爺。」
「年寄りを労わらんかい!」
殴られそうになったので反撃して殴ってみた。
「くそぅ!いつからここは鬼の住む家になったんじゃ!」
「質問に答えろ?爺。」
「全く、冗談の分からんガキじゃ・・・。」
ぶつくさ文句を言う。
この爺さんは見た目と匂いから人間であると判断した。
つまりどうあがいても拙者よりも年下である。・・・別に構わんが。
「ここはな、魔王様の体内じゃ。」
「ぁー魔王ってアノガキの事か?いや、ありえねぇだろ。」
すくなくとも、拙者はガキに食われて、なおかつその体内を歩き回れるような大きさではない。
「大きさなんぞ魔法か何か使えばどうにでもなるじゃろう?」
「いや、大きさを変えるってのはかなり難しい魔法になるぞ?普通に考えてあんなガキができるようなしろものじゃない。」
変形などと違って界にも影響を与えるため物体の大きさを変化させるのは高度な魔法だといわれているようだ。
華月から聞いた話ではあるが、たぶん嘘ではないだろう。何せ、物体の質量が変化するのだ。簡単なわけは無い。
「しかし、魔王ならそれくらいできてもおかしくなかろう?」
「それはあいつが本当に魔王だったらという前提条件の上で成り立っていることだろう?イマイチ確証がもてるようなものではないな。魔王というには何かおかしい気がする。」
というのは素直な感想だ。あいつが魔王なら神祖の吸血鬼である我が母上はなんになる?
昔から魔王は吸血鬼であることが大体なんだが・・・。
「あいつはどうにも吸血鬼に見えん。良くてただの魔法使いだ。」
「ほ?そうかそうか。お前さんが言うならそうなんじゃろう。」
と、またわけの分からないことをほざく爺。
「ぁー、そんなことはどうでもいいんだ。ここから出れないのか?」
一番肝心なことを聞いてみる。
「無理じゃ。」
にべも無く言われた。
「いや、入れたんだから出れるだろう?」
「わしもそう思って探しては見たが、見つからんかった。もう、何十年と探しているのにだ。」
何十年・・・この爺さんは若い頃からここにずっと住んでいるというのか?
「なに、住めば都じゃよ。所々ににある扉を使えばこうして掘っ立て小屋を作ることもできた。それに無尽蔵にあの扉は出てくるからな。」
無尽蔵に・・・?
「あの扉が何か関係しているのか・・・?破壊した扉はすぐに直るのか?」
「少し放っておくと勝手にな。しかも、必ず同じ場所に復活する。なんとも不思議なものじゃて。」
そんな不気味な扉なら何かあるに違いない。
「あの扉は調べたのか?」
「あぁ、少しならな。開けても開けても何もおきんからあきらめて掘っ立て小屋の材料にしたよ。」
ほっほっほ。と笑う爺さん。
「・・・地図のようなものは作ったか?あるなら見せて欲しい。むしろくれ。」
「あぁ、あるよ。ま、どうせ使わんしな。食料のある場所ももう頭に入っとるでこの地図はお前さんにやるわい。」
と、このどこか分からん場所の地図を手に入れた。
「ありがとう。何とか出口を探してみるよ。」
「おぉ、おぉ、頑張りなさいな若者よ。」
最後に爺らしいことを言って爺さんとは別れた。

―???―
てきとーに歩きながら地図に発見した扉を書き込んで歩く。ペンも一緒に貰ったというか、イランからもって行けと無理やり渡された。
地図には爺さんの言っていた食料のある場所も書いてあった。
ただ、行ってもそこには何も無かったのが少し不可解ではあったが・・・。
「しかし、アノ爺さんが生きてるってことは本当に何かしら食料があるんだろうな。・・・多分。」
そして、地図にあらかた扉の位置を大分書き込み、疲れてくるとあの、変な穴の場所に来た。
「あれか・・・。ここだけなんかなってんのは違和感あるよなあ。」
見ると先ほどの水溜りがいまだにある。
あれからかなり時間がたっているのにまだ水溜りがある・・・。定期的にあれを出してるのか?それとも他に何かあるのか?
一応地図にこの場所を書き込みまた歩き始めた。

―一時間後―
ようやっと、多分だが、全ての扉その他色々なものの書き込みが終わった。
その出来上がった地図を見てみる。
そういえば、真っ直ぐ歩いていたらあの掘っ立て小屋に戻ったな。つまり端や壁は無いということか。
ソレを考慮して色々と思案しているとあることに気付いた。
「これって・・・線を結んだらあの穴のところで交わる?」
何か意味あるんかなぁーと思いつつまた歩き回る。

―二時間後―
とりあえずやってみようと言う事で、片っ端から扉を開けてみた。
数えてみると全部で百八個・・・なんでだ。
全部あけてから穴のところに行くとアノ汚い酸のような液体にまみれた扉が出現していた。
「新たな扉か・・・。これで外に出れるのかな?」
しかし触りたくても上から少しずつたれてくる液体の所為で触れない。
「・・・どういった液体かも分からんのだよな。まぁ、少しくらいならいいだろう。外に出れたら手を洗おう。」
何故か水溜りは消えていたので警戒しつつも扉を開ける。
そこには―――

―魔界内部 心臓部―
そこには―――巨大な心臓のようなものがあった。
そして、
「この匂い・・・魔界か。ならさっきの場所は魔界の入り口?あの爺さんは・・・もしや番人か?」
魔界は昔来た事があった。
大昔に、そう天魔戦争の頃に、傭兵として。
天地界に入り口があり、魔物たちが本来住んでいるはずの場所・・・。
「相変わらず・・・酷い匂いだ。」
あのときの任務はここに居た魔王を殲滅する作戦だったはずだ。
結局は多大な犠牲を払って魔王は撃破、封印された。
生き残れたのは幸運であったとしか言いようが無い。それほど、過酷な戦いだったのだ。
「ま、ここからの出口なら知ってるし。行くか。」
こうして、貴輝は何とか自力で脱出することに成功した。
あとはここから出るだけだ。

―魔界内部 門―
ここまでは屑のような魔物しか居なかったから楽にこれた。途中で奴らが使う剣と大鎌手に入れて門のところまでやってきた。
「ここか・・・ケルベロス、かぁ。」
正直嫌な思い出である。ここのケルベロスにどれだけの仲間が殺され、食われたことか・・・。
「ま、それでも、ケルベロスの血を引く男と行動を共にしているわけだし。そういえば、あいつなんでケルベロスの血なんか・・・?」
昔聞いたときには『以前奴の血を体内に入れる機会があってなその時に奴の血を手に入れた』といっていたが、基本的にここから動かないはずなので何があったのか知る術が無い。
ケルベロスにでも聞いてみるかー。と思い門を開けて外へ出る。
そしてそこには―――

―天地界 地獄門前―
そこには―――何やら見覚えのある親父と変態が居た。
「おやおや、刹騎君じゃないか――いや、貴輝君だったか。」
「おぉ!我が愛しい息子よ!」
変態は言わずもがな、我が父上なのだが、もう一人がなんと華月の父親だった。
「・・・何で華月の父上がここに?それに何で刹騎呼ばわり・・・。」
「んー?まぁ仕事でなぁー。むしろ君こそ何で中から出てきた?君が最後に入ってったのあの戦争の時じゃなかったっけ?」
確かに最後に入ったのは天魔戦争のあの作戦の時だ。
・・・むしろあの時以外入ったことはない。
「まぁ、確かにそうですけど・・・何で?」
知っているのか?という疑問。
「あと人の質問をさらりと無視しないでください。」
名前のことを言ったことは流されている。何故だ。
「はっはっは。どちらかいというと母親似のようだな。」
やはりはぐらかされる。
「・・・まぁたしかにそこの変態に似なくて心の底からよかったと思ってますけどね。とにかく質問に答えてください。」
ひどい!デモそれが快感などとほざいている輩なんて拙者の目には映ってません。えぇ、映ってませんとも。
「まぁ、名前を間違えたことは謝ろう。君の母君に最初に聞かされていた名前があっちの名前だった、って言うのが一応言い訳かな?」
何か人型をした物体を殴って黙らせつつ返答してくれる。
「もう一個の方は・・・んー、言って良いものか・・・。」
もう一つの質問・・・つまり何故ここに来たことがあるか知っているのか。又その後来たかどうかを何故知っているか。という物だ。名前よりもそちらの方が気にはなる。
「まぁ、あれだ。うちのどら息子に聞くと良いよ。」
黙らない人型の何かに業を煮やしたのか、得意の魔法で焼き払っていた。・・・いい気味だ。
「・・・何故に華月に?まぁいいや。それじゃ失礼しますよ。」
「ん。気をつけてね。」
この華月から毒気を抜いてもう少し大人びた感じにした男に別れを告げる。
華月もこんな感じなら良いのになぁ。なんて思いつつ立ち去ろうとして、ひとつ思い出す。
「そういえば・・・ここの魔王ってどうなったか知ってます?」
あの少年のことが気にならない訳ではないから聞いてみる。
「魔王?・・・君らが倒してから復活したという話は聞かないが?」
やはり気のせいだったかと思い
「そうですか。ちょっと気になっただけなんで気にしないでください。」
まぁ、そりゃ目の前でバラバラにされた挙句念のためにと身体のパーツを別々に封印までされたんだ。生きていてもどうにも出来ないだろう。
そう思い今度こそ背中を向ける。
が、
「ただ、その息子・・・と言っても人間との間に生まれたハーフで、尚且魔王の力はほとんど受け継いでないという話だが・・・魔王には息子がいてな。そいつは今も生きているはずだから、何か心当たりがるならそれかもしれん。といっても本当に人間並みの力しかないそうだだがな。」
それは・・・本当の話なんだろうか?
なにせあの作戦に参加、若しくは指揮を執っていた者達はそのような事実を知らなかった。
もし、知っていたら・・・恐らく作戦内容にその子供の抹殺も含まれることになっていただろう。
辛くも戦争とはそう言った物だ・・・といってもあの作戦以外はたいしたことはやっていないので、あくまでも想像なんだが。
「・・・何故?」
再び同じ質問。
だが先程とは質問の重さが違う。
「それもうちのどら息子に聞けばおおむね理解出来るさ・・・きっとね。君はそんなに馬鹿じゃないだろうからね。・・・これと違って。」
苦笑気味に指さすは人型。
エ?アレハ父親ダッテ?ハハハ、ソンナコトナイヨ。
「ま、教えてくれなかったらだめですけどね?」
そういってその場を後にした。

―天地界 ガテ乗り場―
この天地界のガテ乗り場は少々他の界とは違った様相を見せる。
まぁ、ようは他の界の人々が監視をしているのだ。
あんなことを又引き起こされたらかなわない。ってことでこの界の争いが外に出ないように見張る・・・それがここの通称『管理人』と呼ばれる人達の役割。
実は天地界の人々、つまり魔族(又は地族)と神族(又は天族)はしょっちゅうというか、常に戦争状態なのだ。
まぁ、そんな話はどうでもいい。
問題は出界の際、面倒なことがあるのが嫌なのだ。
「・・・お前、出身は?」
刺々しい言葉を発するは管理人の方。
汚れ仕事をずっとやっているから心がすさんでいるんだろうなぁ。とかどうでもいいことを考える。
面倒なことというのは今受けているこの出界検査だ。
トラブルの種を出さないためとは言え・・・やり過ぎだろう。
「で、種族はなんだ?」
この質問が又嫌いなんだよなぁ・・・。
「ぇー、狼の獣人と吸血鬼のハーフです。」
あとでどうせ検査とかされるのは知っているし、嘘ついて狼だけですって言うのはやめておく。
・・・そっちの方が後々面倒なのは知っているから。
「・・・吸血鬼だと?」
あぁ、やっぱり食いついて来ますか。
「そんな奴がどうしてこの界を出る必要がある?」
「いや、故郷に帰りたいだけなんですけど・・・。」
言っても分かってもらえないんだろうなぁー。と思いつつも言うだけ言ってみる。
「そうか。ならいいぞ。」
なんて言ってくれる訳もなく
「ふざけるなよ?どうせさっきの出身地も嘘なんだろう?」
と若干喧嘩腰。
何でみんなこう頭堅いかなぁー。
言っても始まらないがぼやきたくはなる。
「本当ですって。なんなら親を連れて来ても良いですよ?」
そういえば向こうに自称父親がいたな。と思い言ってみる。
「はっ!連れて来れる物なら連れて来てみろ!」
はいはい、少し待ってて下さいね?と言い残して来た道を戻り始める。

―天地界 地獄門 入り口―
「・・・おや?」
戻って来てみると一人と一匹の姿はどこにもなかった。
「ぐるるるる・・・。」
その代わり馬鹿でかい三首の猛犬が鎮座なさっていた。
「ぇー、何それー。」
お前には嫌な思いでしかないんヨー。なんて思うが言葉が通じるとは思えない。
「どーしよー。」
正直一人で何とかなる相手ではない。
魔王討伐よりもこいつの突破の方が遥かに難しかったからだ。多分強さだけなら魔界一なんじゃないだろうか。
ただ見た目とその言動を見て察することが出来るように、頭の方はそうでもないらしい。
あまりにも戦闘特化すぎるもんで魔王にはなり得ないという話だ。難儀なもんだなぁ。
とりあえずおとなしく取っ捕まった方が死なずに済むかなぁ?それともそのままヤラレチャウかなぁ?
じりじりと後ずさりで距離を取りながら思考する。
「・・・誰かと思えば貴輝君じゃないですか。」
そうしていたら何故か猛犬から聞き覚えのある声が。
「何で戻って来たか知りませんが、引き返した方が身のためですよ?」
「ぇー、華月の父上の声が聞こえる気がするんですが?」
空耳かなぁーなんて思って言ってみる。
「あなたの前に・・・これじゃ分からないのも無理ありませんか。」
と言って目の前のケルベロスは伏せの体勢に。
その身体から光が発生し、華月の父上になった。
「・・・何故。」
「まぁ、みたまんまですかねぇ。私がケルベロスと呼ばれてる者です。こっちの人型の方がもともとの私の姿なのですがね。」
話を聞いてみるとあの姿は魔術で幻覚を見せているだけで実際は人型のままなのだそうだ。
幻覚なので切られようが焼かれようが平気・・・最強の魔物のできあがりという訳だ。
「なるほどなぁ。でもあの戦争の時、最終的に消滅しませんでしたっけ?」
「あぁ、あれは純粋に私の魔力が尽きて幻覚を維持出来なくなっただけです。魔界と言えど、魔力が無尽蔵にある訳ではないので。」
だから最後は消滅したという訳か。
「なら、どうやってこちらを攻撃したんですか?幻覚じゃ傷は付けられないはずですよね?」
「それは幻覚の動きに合わせて魔法でね。火を吐いたらこちらも炎の魔法で、爪で裂いたら風の魔法、と言った具合ですね。」
なるほど、そうすれば切れるし焼ける。
しかもあちらの攻撃が魔法だとは思ってないからその対策をしない。
つまり魔法攻撃はもろに食らってしまうからそこまで威力なくても十分殺傷出来る訳だ。
「・・・策士だなぁ。」
「まぁ、華月には負けるけどね。」
そう言って苦笑する。
しかし今はそんなことを話している場合ではない。
「ぁー。うちの変態はどこに行ったか知りませんか?ちょっと用事があるんですが・・・。」
あれを連れて行かないとこの界から出れない。
「先程帰られましたよ?」
なんだってー。
まぁ、そんな気はしてたが・・・。
「ああああああ!!!どうせいっちゅーねん!」
とりあえず叫んだ。
「あぁ。出れなくて困ってるんですか。それなら言ってくれれば良いのに。」
「へ?どういうことです?」
これはこの人が説明してくれるということか!?
「別の転送装置があるんですよ。そちらを使っても構いませんよ。」
ここで嫌な予感発動!
「それ大丈夫なんですか?」
もちろんいろいろな意味で。
「いいえ。」
にっこりと笑顔で否定された。
予感は的中した!
やったね!
「じゃない!えーと、どう大丈夫じゃないんですか?」
「とにかく転送にひどい苦痛を伴います。あと一応大戦終結直後に作られた物なので、ちゃんと動く保証がありません。」
最低ですね!
心の中で思っても口には出さない。
「丁重にお断りします。」
「そうですか。それは残念です。」
本当に残念そうな口調で言う。
・・・そんなことで残念がって欲しくない。
「何か他に手はないんですか?」
最悪強行突破もありかななんて考えつつ聞いてみる。
「ないこともないんですが・・・。あまりお勧め出来ません。」
「どんな方法ですか?」
「強行突破ですかねぇ。」
出て欲しくない案が出てしまった。
「それは拙者も思いましたけど・・・。あまり使いたくない手段ですよねぇ。」
「まぁそうでしょうね。しかし私が思いつくことなんて所詮この程度ですよ?」
なんでそんな地味に自虐的なんだ。
口には出さないがそんな疑問が浮かぶ。
「んー・・・。そんな界間を移動出来るような便利な魔法ないでしょうしね。」
とりあえず疑問は放置して話を進める。
「あるにはありますが私は使えません。」
「え?そんな便利な魔法あるんですか!?」
初耳だ。
しかし、かなり高等な魔法なんだろうな。
「えぇ。消費する魔力量が半端じゃないのと、禁術に指定されていなければ術式自体は難しくないので私でも行使出来るんですが・・・。あぁ、あと術式を組むのに時間がかかることも欠点ですかね。」
「・・・以外と初級の魔法なんですか?というか消費する魔力量が半端じゃないって・・・。」
「魔界であっても界に存在する魔力を全て使ってしまうくらいですかね。まぁ、界間の距離にもよるんですが・・・。一応初級魔法ではありますよ。禁術指定されているせいで誰も教えませんから、廃れてきてますがね。」
・・・華月は知っているのだろうか。
いや知っていたらどこかでこっそり使っている可能性があるはずだ。
きっと知らないのだろう。
魔法は目の前にいるこの父親に教えてもらったらしいし。
多分、この人が教えていないだろう。
「でも、それじゃぁ使えないんですよねぇ・・・。華月に連絡付けて飛ばしてもらうって事も出来ないか・・・。」
「・・・まぁ、華月なら普通に使いそうですがね。術式も知ってますし。ただ、親としては使わせたくないので・・・。」
とりあえず教えてしまったらしいということは分かった。
「まぁ、犯罪者にしないためにもなしの方向で。犯罪者の相棒って嫌ですしね。」
「まぁ、私が飛ばしても良いんですが・・・さすがにばれますしね。」
まぁ、魔界の監視が一番厳重だろうしなぁ・・・。
何せ喧嘩売ってあの泥沼の戦争引き起こした張本人(?)だからな。
「そういえばうちの変態はどうやって帰ったんです?途中ですれ違った覚えはないのですが・・・。」
「あぁ、アギトは自力で帰りましたよ?あいつは生物の範疇から外れていますからねぇ・・・。」
ここで疑問がいくつか。
1、自力で帰った方法。
2、もし、先程言っていた術なら使って良いのか。
3それじゃないならどうやって。
ということで聞いてみた。
「んー、とりえあえずあの術を使った訳ではないですね。私は分からないのですが気術だと思いますよ?」
気術なら拙者も使えるはずなんだが・・・。
しかし、まだ全てを知っている訳ではないのでまだ知らないそう言う術があるのだろう、と判断する。
「むぅ。気力をどう働かせれば界間を渡るなんて芸当ができるんだろう・・・。自分一人だけだからできるのか・・・?」
ぶつぶつと自分の考えを取り留めもなく呟いていく。
まぁ、独り言を言っているだけなんだが、こうしている方が考えがまとまるような気がするからだ。
・・・はたから見たら変な人なんだろうが。
「とりあえず何か予備動作のようなことをしてませんでしたか?こう、印を切るとかそんなようなことを。」
「んー、しゃがんで地面に手をついてましたけど・・・。」
とりあえず言われた通りに手をついてみる。
「・・・何か分かりますか?」
「いや、分かりませんでした。」
まぁ、真似るだけでできたら苦労しないしなぁ。と思いつつ返答する。
・・・あ。
と思いついたことをそのまま実行してみる。
「んー、なんとなく分かった気がします。一回試してみます。」
「おぉ、そうですか。頑張って下さい。」
応援されつつ実行してみる。
・・・気術の基本を思い返すと原理は簡単。
気術とは、対象の物質と同調すること。
自分の気と相手の気を合わせる、ということは初歩の初歩。気術を扱う者ならば誰でも知っていることだ。
ただ、それの対象を複数の界に対してやろうなどとは誰も考えないだろう。
一つの界だけでも十分難しいのに。
まず常人じゃ精神が焼き切れてしまいかねない。まぁ、いわゆる廃人にされてしまうということだ。
気術とはその名の通り気を用いる術だ。
気とは己の精神、そして、相手の精神のこと。
つまり気術とは、自分の精神を相手の精神に潜り込ませ、通常ではあり得ない事象を起こす物だ。
当然、界と人の間にある精神力の差など考えるまでもない。
そこをねじ曲げて二つの界に対して気術を行使する・・・。
「・・・やるだけやってみるか。」
自分を奮い立たせるためにもそう呟いてしゃがんで地面に手を付く。
世界の心と自分の心を繋げ、そこに綻びがないか見渡してみる。
「・・・あった。でも・・・何だこれ。」
綻びはおかしな形をしていた。
「まぁ、あの変態が通った後なんだったら仕方ないか。」
何故もろに人の形をしているのかは深く考えずに綻びに近づいて行く。
まぁ心だから近づくというのも少しおかしいか。
ちなみに何故人の形でおかしいかというと、心とは不定形だからだ。
わざわざ人の形にする意味はあまりない。
「さて、拙者の心は耐えられるかな?」
界の心は強い。
全てを見聞きし、それでも動じない心とはいかなる物か。
・・・なんて気取った言い方をしつつ穴を通過。
そして、界の心に触れる。
「・・・ん?何で何も感じないんだ?」
すぐに思い至る。
そうか、界は本当に何が起きても動じないのか。
つまり、拙者が触れても動じない・・・。
ならば以外と楽に通れるか?
界に働きかけるために自分の心と繋ぐ。
そして界を移動しようと思い、
「移動のし方を知らねえええええ!!!」
今気づいたあああ!
どうせいっちゅーねん。
ってことで、一旦戻って情報収集。
「・・・ぇー。」
しかしそこには誰もいなかった。
何か大丈夫だとでも思われたんだろうか・・・。
とにかく、場所と場所を移動させることを考えながら適当にやっていれば何とかなるかなー、と思い実行する。

―???―
・・・成功した!?
しかし、ここはどこだ?
「当たりが真っ暗で・・・何やら息苦しい・・・。」
よくよく見たら明かりがところどころ漏れている・・・って
「埋まってるー。何か少し前にも埋まっていた記憶があるんだが・・・。しかも転移直後に。」
とりあえずあの時と同じように力業で脱出する。
「きゃー!」
・・・野太い悲鳴が上がった。
「あ、すいません・・・て、なんじゃこりゃあああああああ!?」
目の前にいたのはいかにもオカマ。だけならよかったが、何やら不可解な格好をしていた。
「・・・仮装大会でもあるんですか?」
と思わず聞きたくなるくらいにおかしな格好。
というか、聞いてみた。
「まぁ!失礼ね!」
と言われ強烈すぎるビンタをもらった。
ゴスッ!
ビンタの音じゃない!?
と思いながら、フラフラしながら観察してみる。
とりあえず腕が七本、足が一本という身体で、顔は妙に濃い化粧に覆われている。しかも口が蛸の口・・・ってこの人蛸か!?
「ぬおっ!?蛸だ!蛸がいる!!!」
ゴッ!
思わず叫んだらさっきよりも重いビンタをもらった。
「あんまり失礼なことを連発していると地獄にたたき込むわよ?」
笑顔で言われた。
「ぇーっと、ここは一体どこなんです?」
何事もなかったかのように会話を始めようとしてみる。
「コロス。」
「何故!?」
別に今失礼なこと言ってないよね!?
そして地獄の鬼ごっこが開始した。

―三十分後―
な、なんとかまいたか・・・。
一体あいつは何だったんだ・・・?
なにか八本の手足を巧みに使って気持ち悪く追いかけてきたし・・・。
息を整えつつ少し歩くとそこには見覚えのある光景が・・・。
―獣牙界―
おぉ!我が故郷だ!
と変なことを考えつつ当たりを見渡すが見覚えのない場所だ。
しかし、匂いは獣牙界だ。
とりあえずこの界に帰ってくることはできたか・・・。
あとはなんとかして里に帰るだけだ。
しかし、ここはどこなんだろう?
とにかく、歩き回ってみるほか手段もないのでふらふらしてみる。

―獣牙界 どこかの森―
「ふんふふーぐはっ。」
暇だからと鼻歌を歌いながらふらついてたら上から何かが降ってきた。
幸い頭には当たらなかったが右肩が非常にいたい。
「くっ・・・!敵襲か!?」
意味不明なことを叫びつつ降ってきた物をみる。
「そうじゃ!」
なんとあのなぞの空間に居た爺だった。
「そうか、敵襲なら迎撃しなければなあああああ!?」
「いや、ワシは味方じゃぞ!」
簡単に手を返すなああ!
言っても仕方ないことなので無視することにした。
「ひょっひょっひょ。お主の後をつけていたらあの空間から出られたわい。」
「急に不気味な笑い方をするなクソジジイ。」
ひょっひょっひょってなんだよ。
「俺様は死神様なんだぜえええええ!」
「叫ぶなあ!」
ぼぐぅ!
「おうふ!貴様、何をする!」
華月と同じノリで殴ってしまった!
「てか、そのノリは続けるか。そういえばあんたの名前とか聞いてなかった気がするから、聞いて置こうか。」
「死神様だ!ふははー!」
ぼきっ!
今度は割りとマジでつっこんでみた。
ぼきっ!っていったけど・・・大丈夫だろうか?
「おうふ!貴様、何をする!」
「同じ台詞吐いてるんじゃねぇ!」
とりあえず大丈夫そうだ。
死神様だ!ふははー!とかほざいてる爺はとりあえず放置することにした。

―一時間後―
「死神だもーん。」
「はいはいそうですねー。」
死神と言い張る爺を引き連れて・・・正確には勝手についてきているから違うが、まぁ、引き連れて歩き続けたらどこかの集落に着いた。
そこで気づいたこと。
「何でクソジジイは他の人達に反応されない?あと、何で浮いている?」
爺はあろうことか歩いていなかった。
そして、ずっと死神発言しているのに他人からは全くの無反応だ。
「いや、だからー、俺ー、死神だしー。」
「喋り方がどんどんウザくなっていくな。」
もしやこいつ霊体なんじゃないかと思い始めてきたところで初めて話しかけられた。
「お兄さん、よくない物に憑かれてるね。今ならこの坪で」
無視しよう。
「待て待て、話は最後まで聞くもんじゃ。」
「ならもう少し話し方を選んでください。」
まぁ、どうせ暇だし、話を聞くだけならただだからいいか。
「とりあえずこの坪は絶対に売らないよ。ひっひっひ。」
殺意が沸いた。
ていうか、この人見た目若い女性なのに喋りかたがなんか残念な喋り方だな。
「帰ります。」
「まぁ、待ちなさい。若いの。」
見た目だけならとりあえずあなたの方が若いですよね。
そんなことを思いつつ振り返る。
「べろべろばー。」
爺が変な顔をしていた。
「いや、面白くないから。」
「あっひゃっひゃっぐっ!げほっ!げほっ!」そして占い師っぽい人は爆笑したあげくむせていた。
「ぁー、見えてるんだ。これ。」
と爺を指さしながら聞く。
「何だってええええ!?」
そこでなぜか爺が叫び出した。
うっとうしいのでとりあえず殴ったらDVじゃ!DVじゃ!とかわめき出したが放っておくことにした。
「まぁ、それが何かあまり分かってないようだね。教えてやろう、そいつは、」
とそこで区切った瞬間爺が死神コールをし始めた。
「死神ではなくてただの亡霊じゃ。まぁ、生き霊の可能性もあるがの。」
「何だってええええ!?」
爺はきょうも元気です。
えぇ、それはもうウザいくらいに元気です。
「それくらい分かってるよ。なんとかして昇天させられないの?」
「満足させてやると良いというのは一般的じゃな。」
満足・・・。
爺を見てみるがどうにも無理そうだ。
「ひゃっほう!若い女子じゃ!女子じゃ!」
と言いながら突如爺が占い師の周りをぐるぐる周り始めた。
「きゃー。せくはらよー。」
占い師も棒読みで何かほざいているが無視することにした。
確かに見た目若い女子ですけどねぇー。
というか今になって反応するのかよ。
「斬ったら昇天しないかな?」
半ば本気で聞いてみる。
「私を斬るだって!?」
何故占い師が反応する。
誰もあんたには言ってない。
「殴るよ?」
笑顔で言ったら黙ってくれた。よかったよかった。
「まぁ、そんな簡単な事で成仏せんじゃろうな。やはり満足させるのが一番じゃ。」
ふむ、ということはつまり。
「おい爺。」
「黙れコワッパ!」
何故だ。
「この娘がお前の好きになるって言ってるから拙者のところから居なくなってくれ。」
「だが、断る。」
無視して続けたがなぜか断られた。
というかなにが『だが』なんだろうか。
「ふほほー。」
今度は拙者の周りを回り始めた。
「若い男子じゃ!男子じゃ!」
「貴様・・・そういう趣味か・・・。」
寒気を感じつつ聞いてみると
「わしは女じゃ!」
驚愕の事実を言い渡された。
「嘘だー。」
「いや、まじ!まじだって!」
確かに声は男にしては高い気がしないでもないが、男でも通じる高さだしなー。
「なるほど!おかまか!」
「そうそう、俺、おカマなんだよねって、違あああう!」
ノリツッコミされた。
「信じられないというなら脱いでやる!」
と言ったが霊体なので脱げないらしい。よかったよかった。
「まぁ、とにかくそういうことだから頑張りな若いの。」
明らかにほっとした顔でそんなことを言われた。
「ひゃっほーい!ふひゃひょひぇへへへ!」
爺・・・正確には婆らしいがめんどくさいので爺と呼ぶことにした。
爺が変な鳴き声をあげたが無視することにした。

―獣牙界 辺境の町 ブレア―
ここはブレアと言う町らしい。
目的地は一応隠れ里なので直接聞かず風解都市の場所を聞く。
「あぁ、それならここを南に下って行けば風解都市の上に出るはずだよ。まぁ、徒歩だと一日もあれば着くかな。」
と言われた。
もう日も暮れるようなのでここで一泊することにして宿を探すが見つからない。
「んー・・・。野宿かなーこれは。」
「ひゃっほーい!」
しかし、この爺マジ悪霊だな。
会話中はひたすら邪魔をしてくるし。
とりあえず厄介なので人目のない場所でぶった切ってみた。
「ぐああああ!!やるな勇者よ!」
「勇者じゃないし。頼むから消えてくれ。」
その後もいろいろ試したが消えてくれなかった。
「俺は死神だあ!」
「またか。そうだねー死神だねー。」
とりあえずてきとーに流しておく。
「もっと感情を込めて言え!」
そして駄目だしされた。
「おぉ、そうだな!あんたは死神だよ!うん。」
暇だからと付き合ってみた。
「ひゃっほーう!」
そしたら叫びながら爺は東の空になぜか飛び去って行った。
・・・あれについて深く考えるのはよそう。
そう思った。
「む、またお主か。今度は何の用じゃ。」
「・・・宿を探してたんだが、見つからなくてな。野宿しようかと思って居たところだ。」
そうしていたら占い師に遭遇した。
「なんならうちにくるかい?ふぇっふぇっふぇ。」
「いいのか?」
こんなところで宿を発見できるとは。
「駄目じゃボケェ。」
世の中甘くなかったようだ。
「腹立つなぁ。殴るよ?」
笑顔で拳を握り締める。
「そんなに私と一緒に寝たいって言うのね!もう、エッチなんだから!」
「いいきなりそんな話し方にされても戸惑うだけなんだが。」
占い師の実年齢がどんどん分からなくなって行く。
「まぁ、いいさ、風呂覗かなければ泊めてやるよ。」
「了解。覗くつもりもないから安心しろ。」
ばきぃっ!
何故か殴られた。

―ブレア 占い師の館―
爺はいまだにどっか行ったままなので放置して占い師の館に到着した。
まぁ、この人が占い師かどうかも定かではないのだが。
それに館というか普通の家・・・というか、小屋だし。
「小屋とか思ってるんだったら殴るよ?」
そんなことを考えて居たらあちょーとか言いながら占い師が殴り掛かってきた。
「はいはいよかったねー。疲れたから寝かせてくれ。」
「なんじゃつまらん奴じゃのう。」
つまらんとか言われたが無視してさっさと小屋の中に入って行く。
がちゃり。
「お帰りなさい!」
ばたん。
いやー行方不明の爺(年齢不詳)が居たような気がするなーあっはっは。
がちゃ。
「私とは遊びだったのね!」
「くたばれ。」
やっぱり居るね、うん。
「もっとおお、もっと言ってえええ!」
こいつの対処法をそろそろまじめに考えないといけないようだ。
「今日は千客万来だねぇ。ひっひっひ。」
相変わらず怪しい笑い方をしている占い師は、以外と真人間のようだからまだましか。・・・と言っても比較的だが。
んああああとか言ってる屑は放置で眠るための場所聞く。
「で、何処で寝れば良い?最悪床でもかまわんが。」
あまりきれいではないがまぁ、野宿よりは格段にましだ。
「屋根の上?」
何故屋外なんだろう。
「疑問形ということは拒否権があると見た。絶対いやだ。」
「それ以外なら私のベッドしかないぞ?」
さっき床でも良いと言ったことは完全に無視されて居るようだ。
というか、屋根か占い師のベッドの二択っておかしいだろ。
「ならあきらめてけぇりな!」
いきなり江戸っ子口調になった。しかも爺が。
「貴様にとやかく言われる筋合いはない。よって消え去れ。」
罵ってみたが案の定向こうでんあああとかほざいて居るので無視して占い師との会話に戻る。
「まぁ、そういうことなら床で眠らしてもらうよ。」
「死ぬ気か?」
何故床で眠ることが死活問題になるのだろう。
「いや・・・、流石に死なないと思うが・・・。」
「何だ死なないのか。」
何故か落胆の表情を見せる。
まぁ、そんなこんなで占い師の館にて眠ることになった。

―翌朝 ブレア―
「ふははー俺様が死神様だー。」
爺のうるさい声で目が覚めた。
「うわー、最悪の目覚めだわ。」
いやな気分になりつつ周りを見渡して見ると何故か森の中に居た。
あれ?占い師の館は?
気にはなったが考えないことにして一路風解都市に向かって歩くことにした。

―風解都市―
丸まる一日かけて風解都市に到着。
爺は朝日が!朝日があああ!!!と夕日に向かって叫びながら何故か北に飛び去った。
ここから里に向かわなければ。
そんな時、風解都市ではちょっとした事件が起きていた。
門からいわゆる魔物やら未分化生物やらがうごうご突入してきたというよくある事件だが、どうやら数で圧倒されているようだ。
「・・・未分化生物って久しぶりに見たな。というか、これは加勢した方がいいだろうか?」
遠くで助けてくれー!なんて言う声も聞こえる。
加勢するかーと思って門の方へと駆けて行く。

―風解都市 門前広場―
広場と言っても名前だけの広場に到着した時酷いことになっていた。
未分化生物――分かりやすく言うと外界とか、亜空間とか色々と呼ばれている界の外からたまにやってくる未確認生物のようなもの――の中でも特にデカイ上に拙者でも見たことないような形、色をしていた。
未分化生物は基本的に不定形のものが多いが、デカイ輩や半端に知識なんかもってる奴は何かの形を持つ事がある。
まぁ、不定形でも色で大体の区別はされているから、未分化生物の研究のような物もそこそこには進んでいるようだ。
だが、この未分化生物は今までとは違うようだ。
というか、体色も体型もうにょうにょと蠢いていて一定しない。
正直なところ、すごく気色が悪い。
・・・あ、今見覚えのある色形になったぞ。
「あいつ・・・未分化生物の中でも特に未分化された物か?」
「ぐ・・・、こいつ、攻撃が効いたと思ったら効かなくなって、あげく自己修復までしやがる・・・!どうやったらこんな奴に勝てるんだ!?」
すぐ近くで声が聞こえたのでそちらを見ると兵士の方々が物陰に隠れて未分化生物の様子を伺っていた。
まぁ、拙者も今は様子見の状態なんですが。
「一度消し飛ばして見るか。刀・・・は風凜さんに持ってかれたままだったか。」
武器ないかなぁーなんて思って周りを見ていると瀕死の兵士やら既に息絶えている兵士、一般人が死屍累々の様相を呈していた。
つまり剣はいっぱい落ちている。
ならばそれを使って切り崩すまでか。
未分化生物の様子を見て行けると思った瞬間に踏み込む。
具体的には見知った形になった瞬間に攻撃できるように勘を頼りに、踏み込む。
落ちている剣を駆け寄りつつ拾い、すぐに気術を発動。
「紅蓮剣。」
気づかれないように小さめの声での詠唱、そして発動。
後ろで兵士たちが驚き、息を飲む気配を感じつつ炎を纏った剣でタイミングを計って斬りつける。
紅蓮剣による三連撃。
そして全神経を集中して変化したところを見切って、納刀する。
「残影!」
赤い剣戟が瞬時に三つ、生成され敵を切り裂く。
「ごあっ?」
という鳴き声のような物を発して燃え上がる未分化生物。
そのまま灰になれと抜刀からの斬撃を放ち、連続で斬り続ける。そのうち、というかすぐに斬撃が効かなくなるが気にせずに炎による斬撃を放ち続ける。
「斬撃による攻撃を弾いたところで炎までは防げまい!?」
と、あてずっぽうで思いついたことを実行して見る。
案の定炎は効くようで、今度は炎を弾き始めた。
しかし今度は斬撃が、と言った具合で攻撃を続ける。
そうこうしているうちに自己修復とやらが追いつかなくなったか崩れ落ちた。
終わった後に気づいたことだが、どうやら身体の質を変えている間は身動きがとれないらしい。
だから一方的に斬っていられたのかーと納得しつつ後ろを見ると兵士たちに感謝された。
「これで、死んで行った者たちも浮かばれます。被害を増やさないため、と散って行ったにも関わらず、あいつを止めることができなかったら同胞たちに顔向けができないところでした。ご協力、感謝します。」
そんな感じで兵士たちの中でも多分偉いんだろうなーと言った風情の人に感謝を述べられた。
その指揮官風の人はそれだけ言うと失礼します。と敬礼してから事件の後始末をしている兵士たちのもとに戻って行った。
兵隊さんは大変だな、なんて思いつつ宿に泊まることにした。

―翌日―
朝目が覚めると爺が戻ってきていた。
帰ってこなければ良いのに。
「とにかく、里に帰ろう。それより先にこいつを徐霊したいんだけどなぁ・・・。」
ぎゃーぎゃー騒いでいる爺は放置で徐霊師でも探すかあ。などと考えつつ食事をとる。
わしにも何か食わせろ!」霊体だから無理に決まっているので無視して食事を続行。
このあと、どうしようかなぁ・・・。



―後書き会話―
貴輝「皆!久しぶりだね!」
華月「全然更新してなかったからな。このくそやろう。」
貴輝「正直すまんかった。なんかやる気出なくってさぁー。」
華月「まぁ、そんなことよりも、今回は少し異色な感じになっているな。」
貴輝「あぁ。メインキャラは僕しか出てないしね。本当はもう少しとっとと帰ってくるつもりだったんだけど・・・まぁ、変なのに取り憑かれてしまったからね。」
華月「あぁ、あの婆さんか。おまえは爺呼ばわりだけどな。」
貴輝「なんかね。ババアというより、ジジイな感じなんですよ。」
名美「何で私出さなかったのよ!」
貴輝「出てないのはお前だけじゃない上に話の流れ的にどう頑張っても出せなかったんだが。」
名美「ぶーぶー。部屋の壁に落書きしてやる!」
貴輝「何だその地味な嫌がらせ!?」
華月「収まりつかなくなりそうだからここらで一旦のお別れです。えーと、メモがあるな。皆さん、長らくお待たせしてすいませんでした。これ、本当なら貴輝が言うべき台詞のはずなんだがな。えーっと、今度はそれなりに早く出せるように頑張ります。とのことだ。それじゃぁ、また。」
貴輝「ギブっ!ギブッ!」
名美「許さないよー!」
華月「おぉ、良い感じに極まってるな。」

To Be Continue...

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