2007年7月25日水曜日

―Sky―【SITS.Story.】 第伍話 ~帰郷~

この物語は全てフィクションです。(念のため)

Skyの世界のパラレルワールドであるもう一つの世界でのお話・・・。

―Sky―【SITS.Story.】 第伍話 ~帰郷~

中学生到来から三日後。
「電報が来てるぞー。」
といってなぜか矢文風に部屋に手紙が打ち込まれた。
「誰だ!?矢文とか微妙な真似するのは!?」
と叫ぶと遠くからあいつの忍び笑いが聞こえてきた。

とりあえず手紙を読んでみることに。

―――チチ キトク スグカエレ チチヨリ―――

「・・・っく!またこの手紙か!?」
この数年で何通同じ手紙が来たことか!?
「ん?でも今回は続きがあるな。・・・どれどれ?」

―――冗談はさておき、最近色々とあれなので一回帰って来いコンチクショー。
あと、もう一つ。
ハハ ゲキド タスケテクレ チチヨリ
P.S. 一回ぐらい手紙返してくれても良いんじゃないか?―――

「・・・何故重要な部分だけ電報調なのだ?というか、そんな冗談の手紙しか送ってこないから返事がないということに気が付かないのかこのクソ親父は・・・!?」
悪態をつきつつ母さんが怒ってんのかぁ・・・。と考える。
「お父さんがキトクってやばいんじゃないの!?早く帰ってあげなきゃ!!」
と耳元で突然名美の叫び声が。
「五月蝿いよ!こっちの電報(?)は冗談だから無視しとくの!っていうか、文をよく読んでみろ!なんで危篤のやつが電報を出せるんだ!?」
と叫び返すと
「あ、それもそうか。」
とあっさり沈静化。
「あ、でもでも、母激怒ってあるよ?」
「うん、だから帰ってみるかなぁ・・・。と少しばかり悩んでいるんだ。どうしよう・・・・・。」
とりあえず、いつもどおり処分しとくか、刀技の練習にもなるし。
「ぅおーい、腐れ外道ー。」
「何だこの豚野郎ー。」
といって現れるはご存知澄夜華月君。
「いつも通り処分対象。」
「了解。」
いつものことなのですぐに返答が来る。
だいたい拙者に手紙・・・それも電報とまでなると親父からしかないのだ。
で、内容はいつもあれだからすでに心得たものだ。
「いくぞー。」
いつでも来いといわんばかりにあっちも戦闘体勢に入る。
そして、手紙を上に放る。
ふわりと舞う手紙を見つつ刀を出し、
ひらりと舞う手紙の位置を見極めて、
「―――ふッ!」
と気合を入れて刀による三撃を繰り出す。
「―――斬影(ざんえい)。」
手紙がちょうど『刀が辿った軌跡』を通った瞬間に完全に納刀する。
チンッ、と納刀した瞬間、
キンキンキン!
と音がして手紙が六等分される。
そこにすかさず
「マグマボール・コンプレッション。」
と華月がつぶやくと縮小された炎が手紙を中心にして起こる。
ごおぉぉ!
それは炎というより光の玉というほうが正しいかもしれない。
限界まで圧縮された炎はその球のような範囲の中で燃え尽き、中のものを蒸発させた。
「おぉぉぉぉぉ・・・。」
名美が嘆息する。
「腕を上げたな?」
と華月に聞く。
「おう。前に憑依合体の試し打ちしたときあまり成功とはいえた状況ではなかったのでな。すこし改良してみた。」
「お前あのとき成功とか言ってたような気がするが?」
たしかにそんなことをいわれた記憶がある。
「キノセイダ。」
「片言で言われてもなぁ・・・。」
もう突っ込む気力もないのでスルーしておく。

―一時間後―
女性陣三名に猛攻を受けた結果一度故郷に帰ることになった。
「いや~、久しぶりだねぇ。帰るの。」
「だな。追い出されてからもう・・・、何万年経ったかなぁ・・・?」
と雑談をしつつ歩く。
「って、万!?」
「ん?あぁ、万というかそろそろ億の単位に入っててもおかしくないんじゃないか?」
と相棒に聞いてみる。
「さぁ、な。俺は数えてないから知らん。まぁ、少なくとも数千万年は帰ってないだろうな。」
「な、何でそんな長いこと生きてるの!?」
名美が驚いた様子で聞いてくる。
「ぁ~、もともと獣人は長寿だってのは知ってるだろ?それが拙者たちは幻想獣の獣が混じってるっていう要因で不老の体になってるんだ。ま、あくまで不老なだけで不死ではないからね。殺されれば死ぬよ。その代わり寿命で死ぬことはないのさ。色々と便利だよ~。この年で成長止まってくれたし。」
「良いなぁ~。」
と羨ましそうに言うのは風凛だった。
そんな会話を微妙な顔で眺める不老不死といわれる紅月さん。
「・・・そういえば、いまので思ったんだけど。紅月さんって不老不死なんだよね?」
「え?あ、はい。まぁ、不死、といっても不完全なものですけどね。弱点はありますし。」
「へぇ~、そうなんだ。意外だなぁ。んまぁ、それが聞きたいんじゃないから置いとくとして。紅月さんたち人魚ってのは最初からある程度成長して生まれてくるの?それとも拙者たちみたいにある程度まで成長するの?そこんとこお兄さんは聞いてみたい。」
と聞いてみる。
これは少し前から思ってたことで拙者たちは『後天的に不老の体になった』身で『先天的に不老の体である』人魚とは少し事情が違う。だから人魚とかそういういわゆる幻想獣と呼ばれる者たちがどういう風に不老になるのかというのを知らないのだ。
「私たち人魚ですか?ん~・・・そうですねぇ。そのどちらの答えでもなくて、ある儀式を終えるまでは成長を続けます。その儀式を終えたときから不老不死になるのです。その儀式については秘密ですけどね。まぁ、人魚として一人前になるための儀式・・・といったところですかね。」
「・・・ふ~ん。ちょっと複雑な感じですね。拙者にゃよ~分からん。」
と雑談がいったん途切れたところで目的地に到着。
目的地というのは勿論『フレイア』だ。

―フレイア ガテ乗り場―
「ふぅ~。やっと着いた~!」
フレイアは天幻―――正確には幻界というのだが―――にある街の中でもっとも大きな主要都市だ。
街は大きな城壁で囲まれている。そしてその城壁は外よりも中のほうが頑丈に出来ている。
その理由が言うまでもない忌々しき『天魔戦争』だ。
ここはこの世界で一番大きな町であるのと同時にもっとも一般市民の住んでいる割合、人数が少ない街でもある。それはこの街が最終防壁であるからだ。ゲートから魔物が入ってくるなど日常茶飯事・・・とまでは行かなくともそこそこ頻繁に起こる。故に住人の数は次第に減っていく。そして、その穴を埋めるように兵士などが増えていくのだ。
「ま、この街には用ないし。とっととガテで獣牙界に行くか。」
「だな、長居していいことあるような街でもないし。」
ということでとっととガテに乗り込む。
「おぉ~。おっきい町だねー。おっきいー水溜りだねー。」
とずっと驚きっぱなしなのは風凛だった。

―獣牙界行きガテ内部―
「さて、今後の方針だが、まず向こうに着いたら何がしたい?」
「いや、まず拙者らの村に帰らにゃならんだろ。・・・あまり帰りたくないが。」
と二人して微妙な顔をする。
正直半分追い出されるようにして村を出た身としてはあまりひょいひょい帰れるものではないのだ。
「おぉ~。窓の外に変な光景が広がってる~。」
とここでも驚きっぱなしの風凛。彼女に意見を求めるのはやめとくことにしようと思う。
で、名美のほうを見るとなぜかにやついた顔をしてこちらを見ていた。
「何だ?」
と問いかけてみると、
「別に~。にしし。」
と笑いながら言った。
で、紅月さんは紅月さんでニコニコ笑顔で華月のことを眺めている。
華月は思考に没頭中で全然気づいた様子がないが。
・・・話しかけないほうが良いかな。
「ふむ。それじゃぁ、とりあえずいったん村に戻ってゆっくりするか。出来たらだけどな。」
「やっぱ、そうなるか。」
「「はぁ・・・。」」
二人同時にため息をはく。
そんなこんなでガテは獣牙界へと向かっていくのだった。

―2時間後 獣牙界―
「あぁー、着いた着いた。我が故郷よこんにちは・・・っと。」
獣牙界で唯一の近代都市『風解都市』。
これで街の名前だというのだから驚きである。
読み方は「ふうかいとし」何故こんな名が付いているかというとこの『門』がある山が元々文字通り『風』を『解く』地だったからだと言われている。
風を解くというのは、風を空気に戻す。つまり、風をなくす。もしくは風を消してしまうという意味だ。
そして、それだけではなく。この地は風の生まれる場所でもある。
風にとって見れば、この地は母なるものでもあり、死神のようなものでもある・・・らしい。
少し分からないかもしれんが。
さてはて、何故、この都市だけ近代的かというと、理由は簡単。
一度他の界に占拠されたことがあったのだ。
そのときになにやら近代的にされ、取り返したはいいが処分の仕方が分からない、とか、めんどくさいとかいろいろな理由で放置され他の界域の人々が移り住み、近代的になったといわれている。
他の地は昔ながらの風景を残していたり、荒廃した荒地になっていたり・・・。さまざまだ。
「俺らの神獣の村までどうやっていく?」
「まて、どこが神獣の村だって?」
と、相棒が突然わけ分からないことを言い出したのでとりあえず突っ込んでおく。
「いや、俺たち神獣だし。」
と、さらに爆弾発言。
「待てぇぇぇぇぇい!誰が神獣だと!?お前も拙者も神獣には程遠いだろ!?」
力いっぱい突っ込むが、彼が聞いてくれるはずも・・・
「そうだなぁ・・・。」
なにいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!???
心の中で激しく絶叫!
「何変な顔してんだ?」
と、表情を隠すことも出来ない驚愕を見て相棒が聞く。
「お、おま、なん、そんな、すな・・・!?」
すでに言葉になってませんが気にしない方面で。
「いや、帰るにあたって少し緊張してな。」
・・・あぁ、なるほど。
こいつも思ったよりまと・・・
「どうやってあいつから逃げようか・・・むしろコロシテやろうか・・・?」
・・・。
なるほど!納得!理解理解!
「・・・大変だな。お前も。」
「お前もだろ。輝(あきら)が来たらどうするつもりだ!?」
めずらしく常時において絶叫。・・・それほど切羽詰っているらしい。
「大丈夫!対策は考えてある!」
「何!?」
ちらりと名美を見て、
「あいつをだしに・・・」
「無理だな。」
最後まで言う前に返答が返ってくる。
「・・・やっぱり?ぅわ~!どうしよう!!!」
悩みぬく阿呆がふたり。
それを不審気に見つめている・・・もとい、見つめて囁きあっている女性陣たち。
しかしそんなことにかまってられないといった風の二人。
鳥狼の里に向かい始めたのはそれから三十分ほど経ってからだった。

―鳥狼の里 入り口―
「さぁ、着いたぞ~。」
「あいつをまずはあしらって・・・いや、あしらえるような相手では・・・!」
ぶつぶつとつぶやき続けるは華月君。
「・・・何もないよ?どうなってるの?」
「みていなさいお譲ちゃん。」
「お譲ちゃぁん?」
すごく不気味なものを見るような目で拙者を見る名美。
「それどころではない。ここで時間を稼ぐか?いや、しかし・・・」
「ゎ~い!華月!お帰り~!!!」
と思考の途中で乱入アンド華月に猛烈タックル・・・もとい、飛びついたのは拙者も知ってる自他共に認める(華月は否定・・・というよりむしろ怖がっている)華月ファンこと『白梟 古都(しらふくろう こと)』。
「くっ・・・!は、離れろ!このバカ!」
といつも無敵な華月君も彼女に対しては弱い。これは昔の古傷というかなんと言うか。拙者らにはトラウマ気味の連中なのである。
連中というからにはもう一人。
「・・・ぅお!?こいつがいるということはすぐ近くに・・・!?あああああ!それらしき気配というか匂いがああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
この場から全力で逃げたいのを必死に我慢。
その代わり完全武装で待機します!!
「うわ!華月君が女の子に抱きつかれてる!?というか、たじたじになってる!?面白~い♪」
といいますは風凛さん。というか面白いか!?
そしてぇ!
「貴~輝~!・・・死にさらせええええぇぇぇぇ!」
と前半猫なで声、後半は地獄の亡者のごとき叫びを上げつつ突撃してきますは『群狼 輝(ぐんろう あきら)』さん。自称花も恥らう乙女です。
「ぐぼぐぁずふぁあ!?」
と飛びつかれたまま何故かチョークスイーパー&関節技でがんじがらめにされる拙者。
「~~っ!~~~~~~っ!~~~~~っ!?!?」
喋れなくて地面をだんだんとたたいて目で訴えます。死ぬ!死ぬ!窒息死する!?
「ぅゎー・・・。」
と言葉もなくしてその惨状を眺めるはやっぱり女性陣三名でした。

―銀狼の里 王宮 自室―
「・・・ん?」
とりあえず今の現状をぐるりと確認。
目を覚ましたということはあのまま気絶もしくは絶命したということだろう。
なら、ここは黄泉の国か!?まだ現世か!?
――がちゃり。
と入ってくるは
「あ、輝ああぁぁぁ!!!???」
驚き跳ね上がり窓から逃走しようとする。
が、しかし、
「うおおおおぉぉぉぉぉ!?何で竹やりがこんなに一杯生えてるの!?危なっ!?」
「ふふふ・・・。」
とすぐ後ろからの含み笑い。
「あはは・・・。ココハドコデスカ?」
「何言ってるのよ。ここはあなたの部屋でしょう?貴輝。」
と、少し呆れた風に言う輝。
「いやいや、ここは地獄かと聞いているのだよ私は。」
つい変な口調になるのはこいつと話すときの癖みたいなものだ。
「いや~ねぇ、もう。あれしきで貴輝が死ぬわけないでしょう?ちょっと三分ほど首を締め上げただけじゃない♪」
「いえいえ、お嬢さん、普通の方なら二分も締め上げれば十分死ぬのだよ?あなたのようなイキモノに締め上げられたら死んでしまうのよ~!あーっはっはっは!」
生きてるって素晴らしい~!
心の中でそう叫びながら笑っていると急に首を
ごきゅっ!
とやられました。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁ!?!?!?!?」
とりあえず叫ぶことが出来るということは逝ってはいないということだろう。
「おおげさねぇ~。」
とからからと笑いながら言う目の前の輝こと悪魔。
「もう、ずっと待ってたんだからね。それはもう死んでしまうかと思うくらいにさ。ね?貴輝・・・。」
出来ればそのままくたばっててくれれば・・・!
心の中ではそんな黒い感情がほとばしってます!
「あ、ところで他の連中は?」
「ん?華月君は黒梟の里へ連行されていって、その付き添いで赤い髪の子が一人向こうに行ったな。こっちには黒髪の鳥人が来たよ。」
「・・・あれ?もう一人いたでしょ?」
少し待っても風凛のことが聞けないので問うてみる。
「あぁ、猫の子?あの子は向こうとこっちといったりきたりしながらしきりに「おぉ~」って言ってたわよ~。面白い子よね~。」
好奇心旺盛なことで・・・。
とりあえず、家に帰ってくることは出来たようだ。
・・・兎にも角にも、母の現状を少しでも知っておきたい。
まぁ、親父で駄目だったのなら拙者でなんとか出来るとも思ってないのだが。
「拙者の母上は?凄いことになってるって聞いたから帰ってきたんだが・・・。」
「それを言いに来たのよ。うん。凄いわよ~。何か邪神みたいになってるからねぇ。まぁ、良いのは人の血を吸わないってところかな。あとはとりあえず死者は出てないって事。」
「ふむ。ようはまだ最悪の事態ってのは起きてないか・・・。」
でも、最悪の事態一歩手前でとまってるだけのこと。
何をそんなに怒っているんだ・・・?
「・・・とりあえず、一回会ってみるか。」

―銀狼の里 王宮裏の訓練場―
「うおぉぉぉぉ!!!」
と裂ぱくの気合ともに狼の獣人の剣士が走りより上段から剣を
「なめるなぁ!」
振り下ろすことも出来ずに吹き飛ばされる!
どごっしゃああぁぁぁ!!
と盛大な音を立てて拙者の横に瞬時に飛んでくる剣士の体。
「ぐぅ・・・!!」
まだ生きてるな。まぁ鎧は死んだみたいだけど。
「・・・いや、また暴れてるなぁ。鎧を一撃で打ち砕くってどんなパワーだよ。さすが純血のバンパイア、神祖の鬼神、銃牙の姫神などと呼ばれていただけある。お~い!母上~!」
とりあえず呼びかけてみる。
「き、貴輝様!?」
何故傍らでうずくまっている兵士が反応する!?
「お、お願いです!あの方を止めてください!我々ではもう無理です!」
「ん。まぁ、そのつもりで帰ってきたわけだし・・・っと、そういえば、ここでは別に変化してる必要はないのか。気兼ねなく獣姿で歩けるんだよなぁ~。便利便利~。」
と、人化を解く。正確には吸血鬼化なのだが。
「ふぅ~。んじゃ、いっちょやりますか。」
と、ここに来る途中で拾ってきた木刀を体の斜め後ろに片手で持って構える。切っ先は自分の斜め右後ろ。拙者にはこの構えが一番戦いやすいからこの構えを取っている。その代わり、この構えは防御に徹するときにはとても役に立たない。防御のときは正眼の構えが一番だと思う。
「お~い。母上や~い。息子が帰ってきたぞ~。」
と、声をかけながら歩み寄っていく。
「あぁ!?」
不良のような声を出し、睨み付けてくる母親。
その瞳には自分に立ち向かってくるものしか映ってないようだ。
「ふむ・・・。完全に狂化状態になってるみたいだなぁ・・・。まったく、誰だ母の『狂』ここまで覚醒させたのは・・・!」
「俺だ!あーっはっはっはっは!」
と文句に答えるは我が家の屋根の上にぶぁさぁぁ!とマントを翻して立つ上半身裸の変体男!
「あんたぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「親父ぃぃぃぃぃぃ!!!!」
母親と仲良く絶叫。
拙者は我を忘れて足元の小石を自らの技で放ち、母はどこから取り出したか杭のような棒を投擲!
「ぬおぉ!?あ、危ないだろうが!このドラ息子!!」
「うっさい!ボケェ!お前が最前線に立たないで何でそんなところに立ってる!?この腹筋マント変態!!」
と親父を罵倒する。
親父はいつものことと流して聞いているようだ。
あの野郎は最低なことに街中をあの格好で歩く。
故に毎日が罵倒と野次と女性の悲鳴であふれているのだ。
・・なんともバカバカしい事この上ない。
「俺も最初は前線で戦ってたよ!?全力で!!」
「それがあかんのやろがぁぁぁぁぁぁ!!!自分の妻に全力で攻撃しかける夫がどこに要るってんだお前以外に!!!!!!」
母はしきりに杭を投げ続けている。
よっぽど腹立たしいようだ。あの糞野郎が。
「ぇー。だってー。俺、怖かったしぃ。」
「気色悪いは!?何でいきなりコギャルっぽくなる!?全然似合ってなくて気持ち悪いは!全然似合ってなくて気持ち悪いは!!!」
「二回も言わなくても分かるよー!?」
拙者も謎の男に目標を変更して、
「母よ!あの野郎を二人で殺ろう!」
と持ちかける。
母はこくんとうなずき猛攻開始。

―黒梟の里 王宮 華月の部屋―
「・・・。」
「えへへぇ~。華月くぅ~ん。」
「・・・うぅ。」
とへばる人約一名。
その一名は右腕に古都が、左腕に何故か紅月さんが抱きついていて身動きが取れない状態にあった。
しかも、その両脇の二人が牽制しあっているのか腕をぎりぎりと締め上げるはお互い黒い笑顔を浮かべて含み笑いをもらしつつ表面上は楽しげに会話しているのだ。
・・・俺、死ぬかも。
と、少し本気で思っていた。

―三十分後 銀狼の里 王宮 元訓練場―
あれからの攻防で訓練場は二目と見れない状態になり、親父は拙者と母の二人で成敗され、なおかつ清掃員のおばちゃん軍団にこっぴどくしかられてから解放された。
が、
「ぐるるるるるるるぅ・・・。」
腹の虫が収まらないか、野生に戻りつつある母が一匹。
「くそぅ!?あれだけやってまだ戻りませんか!?えぇ~い!こうなったら動かなくなるまでハッタオス!」
こうして、乱戦が開始される。
まずは貴輝が木刀を一閃!先制攻撃を仕掛ける!
それをすばやくかわして貴輝の左側に駆け込む神祖の吸血鬼。
駆け込む勢いそのままで鋭い爪をたててわき腹を切り裂こうとする。
それを刀を振りぬいた勢いを殺さずくるりと左回転する貴輝の体。
その回転のおかげで爪に当たらずにすむ。
「ふぅ!やっぱ、強いなぁ!しゃぁねぇ!秘術!獄炎刀!」
叫ぶと同時に刀がもう一回り大きくなる。その増えた部分が炎のきらめきをたたえているのだ。
「一度くたばれええぇえぇぇぇぇぇぇ!!!」
と大きく振りかぶって
後方に跳躍!
一瞬後に今さっき立っていた場所を神祖の爪が通る。
「よく、避けたわね。この『六星 血姫(ろくせい けっき)』の攻撃を!」
怒り心頭のご様子。
「んー・・・やばいか!?仕方ないか・・・。まだ実験段階にあるから使いたくはなかったんだが・・・。」
そういって詠唱に入る。
拙者の技・術の中で唯一詠唱が必要な秘術・・・いや、秘奥技術。
「戦いの道は武士の道、武士の道とは剣の道、我が剣とはすなわち刀!刀に憑かすは清浄な力なり、今ここに集結し、終結させよ。」
神祖こと我が母親の血姫の攻撃を避けつつ一小節ごと正確に、かつ素早く言っていく。
そして詠唱が終わり十分な気力が集った時
「―――秘奥技術!銀炎刀!」
叫ぶ、そして刀に纏いしは赤くもなく青くもない炎。
その姿を見て・・・いや、その熱量に血姫も立ち止まる。
「知ってるか?行き過ぎた炎ってこうやって水みたいになるんだってさ。」
と喋りつつ木刀を血払いし一気に踏み込む!

―銀狼の里 王宮 自室―
一糸纏わぬ姿の焼け焦げた我が母親を救護班に明け渡し、重症の傷で寝ている親父に「ごめんな」といいながら踵落しをかまして追い出されてから数分。
「やっほ~。貴輝、大丈夫?何か色々と血とか出てるけど・・・。」
「お?名美か。んー。まぁ、大丈夫だろう。血が出るのも定期的に摂取する輸血パックで補給できてるし。」
と名美にテキトーに答えて布団に寝転ぶ。
「あぁ~眠い。お休み名美~。」
と言って寝ようと目を瞑ると、
ゴソゴソ・・・
「・・・お前は何を人の布団に・・・!」
「だ、だって、何か怖くって・・・。」
何故かしおらしい名美。
「・・・あ、あれ?マジでなんかへこんでる?ぅ、ぅわ、泣くな泣くな。」
「じゃぁ、良い?一緒に寝ても・・・。」
・・・くそっ!前々から変なやつだとは思ってたけどこういうときに限ってまともなやつになるか!?
「・・・やっぱ、だめ?」
と残念そうに肩を落とす名美。
「・・・ぅー・・・・・・・。分かった。分かったけど引っ付くなよ。」
一応そう断ってから許可。凄く不本意だけど許可。
「ゎーい!やったー!」
と布団にもぐりこんですぐ傍らですぐに寝てしまう。
「ったく!なんでこんなときだけ・・・!」
小声でつぶやく声は誰も聞いてなかった。

―そのころの華月君―
―自室にて―
「私が一緒に寝るの!」
「いえ、私が!」
って感じで紅月さんと古都がけんかを始めて早一時間。
いつになったら終わるのかとうんざりした顔で、しかし騒がしくて眠れないというひどい惨状で困っていた。

~あとがき会話~
貴輝「耳が痒い!!」
名美「むぎゅう~。」
貴輝「て、くっ付くなぁぁ!」
名美「むぎゅぎゅうぅぅぅぅぅぅ!!!」
輝 「あぁぁぁぁ!!!僕の貴輝がぁぁぁぁ!!!」
貴輝「誰が貴様のかぁぁぁぁ!!!!」
華月「それより助けてくれ、というか助けろ!」
貴輝「こっちこそ助けてもらいたわがうわとぅるあぱら!?」←顔面にドロップキックをかまされK.O.
紅月「私は華月さんとずっと一緒に暮らしているんです!あなたが知らな
古都「あなたなんかでは分からないほどながーーーーい間一緒にこの村で
華月「眠れねぇーーーー!!!!」
輝 「寝るなぁ!おきろ貴輝ぃ!!!」
貴輝:がっくんがっくん!「はっ!?いま、川の向こうのほうで名美に似た天使っぽいのが手招きしながら納豆にはやっぱりソースですよね~とか良く分からないことを・・・!?」
輝 「いっとる意味が分からん!」
貴輝「ということで、大伍話どうでしたかぁー!?私的には書いてて楽しかったのは血姫と貴輝の戦闘場面。頭の中ではシルフ○イド見聞録のテストの妖精のテーマ(?)が流れっぱなしです!誰か止めてー!!!」
名美「むにゃ・・・貴輝~・・・・・うるさい~・・・・・・・・・・。」

To Be Continued...

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